外資製薬企業の2022年医療用医薬品売上高上位16社の決算概況を紹介する第2回目は、5位~8位のロシュ、ノバルティス、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)、アストラゼネカ(AZ)を取り上げる。
(全4回連載、1回目はこちら)
【5位 ロシュ】最主力品の多発性硬化症治療薬オクレバスは売上63億ドル、19%増
ロシュの総売上高は1%増(為替の影響を除くと2%増)の664.26億スイスフラン(CHF、697.47億ドル)となり、このうち医療用医薬品の売上高は1%増(同2%増)の486.28億CHF(510.59億ドル)で5位だった。また、純利益は9%減の135.31億CHF(142.08億ドル)となり、5位となった。
最主力品の多発性硬化症治療薬オクレバスは19%増の60.36億CHF(63.38億ドル)となった。また、主力品の血友病A治療薬ヘムライブラが27%増、がん免疫療法薬テセントリクが12%増となる一方、21年に新型コロナ肺炎の効能追加で売上を伸ばしたアクテムラ/ロアクテムラは一転して24%減となった。
新型コロナ治療薬ロナプリーブ 売上の9割は日本政府の購入
経口SMA治療薬エブリスディが86%増と順調に売上を伸ばしたほか、22年に日米欧で上市した加齢黄斑変性などの治療薬バビースモが5.91億CHF(6.21億ドル)寄与した。新型コロナ治療薬ロナプリーブは3%増の16.79億CHF(17.63億ドル)で、売上の9割を日本(政府納入)が占めている。なお、為替レートは22年の年間平均で1CHF=1.05ドルだった。
23年の総売上高は1桁台前半の減少率(うち新型コロナ製品は50億CHFの減少)を見込んでいる。
【6位 ノバルティス】売上505億ドル コセンティクスやエンレスト好調もジレニアは28%減収
ノバルティスの総売上高(医療用医薬品売上高)は2%減(為替の影響を除くと4%増)の505.45億ドルとなり、全体で6位だった。純利益は、減損費用や事業再編費の増加、さらに21年第4四半期にロシュ社株式の売却益(146億ドル)を計上した反動もあり、71%減の69.55億ドルとなり、10位だった。
イノベーティブメディスンの売上高は2%減の412.96億ドル。最主力品の乾癬治療薬コセンティクスは1%増の47.88億ドルと横ばいだったが、慢性心不全治療薬エンレストが31%増の46.44億ドルを売り上げた。また、多発性硬化症治療薬ケシンプタが194%増、乳がん治療薬「Kisqali」が31%増と大きく売り上げを伸ばした。一方、後発品の影響を受けたジレニアは28%減となった。後発医薬品事業部門のサンドの売上高は4%減の92.49億ドルだった。
サンド分離 23年下半期の完了を予定
23年の総売上高は1桁台前半~半ばの成長率を見込んでいる。イノベーティブメディスンは1桁台前半~半ばの成長率を見込む。サンドを分離し、独立した上場企業とする計画で、23年下半期に完了を予定している。
【7位 BMS】売上横ばい エリキュースは117億ドル、10%増 後発品参入のレブラミドは22%減収
ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)の総売上高(医療用医薬品売上高)は横ばい(0.4%減、為替の影響を除くと3%増)の461.59億ドルとなり、7位だった。純利益は10%減の63.27億ドルで12位だった。
最主力品の抗凝固薬エリキュースは10%増の117.89億ドル、それに続くがん免疫療法薬オプジーボは10%増の82.49億ドルと堅調だった。後発品が参入した影響で、多発性骨髄腫治療薬レブラミドが22%減の99.78億ドルとなったが、22年に米欧で承認を取得したがん免疫療法薬「Opdualag」(ニボルマブ/レラトリマブ)が2.52億ドル寄与したほか、CAR-T細胞療法(多発性骨髄腫)アベクマが137%増、βサラセミア治療薬「Reblozyl」(ラスパテルセプト)が30%増となるなど新製品群が順調に売上を伸ばした。
23年の総売上高は2%増を見込み、レブラミドは65億ドルを見込んでいる。
【8位 AZ】21年7月買収完了のアレクシオンが通年で寄与 売上19%増の443億ドルに
アストラゼネカ(AZ)の総売上高(医療用医薬品売上高)は19%増(為替の影響を除くと25%増)の443.51億ドルとなり、全体で8位だった。21年7月に米アレクシオン社の買収を完了。これに伴い21年の純利益は1.15億ドルだったが、22年は28.6倍増の32.93億ドルとなり、16位となった。
肺がん治療薬タグリッソが9%増、がん免疫療法薬イミフィンジが15%増、PARP阻害剤リムパーザが12%増、慢性リンパ性白血病治療薬カルケンスが66%増といずれも堅調だった。慢性心不全に続き、慢性腎臓病の効能が追加されたSGLT2阻害剤フォシーガは46%増の43.81億ドルを売り上げた。アレクシオン社買収により発作性夜間ヘモグロビン尿症などの治療薬ソリリスおよびユルトミリスなどが通年で寄与した。
23年の総売上高は1桁台前半~半ばの増加率を、ワクチンのバキスゼブリアや中和抗体薬のエバシェルドなど新型コロナ関連製品を除くと2桁台前半の増加率を見込んでいる。
外資製薬企業の22年純利益ランキング
1 |
ファイザー(米) |
31,372 |
43 |
2 |
グラクソ・スミスクライン(英)* |
19,370 |
207 |
3 |
ジョンソン&ジョンソン(米) |
17,941 |
-14 |
4 |
メルク(米) |
14,519 |
11 |
5 |
ロシュ(スイス)* |
14,208 |
-9 |
6 |
アッヴィ(米) |
11,836 |
3 |
7 |
モデルナ(米) |
8,362 |
-31 |
8 |
ノボ ノルディスク(デンマーク)* |
7,774 |
16 |
9 |
サノフィ(仏)* |
7,056 |
8 |
10 |
ノバルティス(スイス) |
6,955 |
-71 |
11 |
アムジェン(米) |
6,552 |
11 |
12 |
ブリストル・マイヤーズ(米) |
6,327 |
-10 |
13 |
イーライリリー(米) |
6,245 |
12 |
14 |
ギリアド・サイエンシズ(米) |
4,592 |
-26 |
15 |
バイエル(独)* |
4,358 |
351 |
16 |
アストラゼネカ(英) |
3,293 |
2,763 |
・医療用医薬品売上高上位16社を集計。
・1ユーロ=1.05ドル、1ポンド=1.24ドル、1CHF=1.05ドル、1DKK=0.14ドルで計算。
ミクス 春の増刊号
「主要データで見る外資製薬企業ファイル」
株式会社ミクスでは、上位16社の22年業績および21~22年の2年間の「主な承認新薬」「M&A」「ライセンス・提携」「事業再構築」など事業活動を網羅した「主要データで見る外資製薬企業ファイル」を3月25日に発行します。
※Monthlyミクス定期購読(雑誌版)をご契約の場合は年間購読の中に含まれております。ミクスOnlineプレミアご契約の場合は電子ブック及びexcel資料のダウンロードがご利用可能です。