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中医協 ゾコーバ錠の薬価収載を了承 留意事項通知に3000億超で最大66.7%薬価引下げの特例も

公開日時 2023/03/09 06:00
中医協総会は3月8日、新型コロナ治療薬ゾコーバ錠の薬価収載を了承した。あわせて、保険上の留意事項通知として、併用薬や妊娠の可能性の有無など禁忌事項について確認し、患者に文書による説明を行い、同意を取得することなどを盛り込んだ。適切な患者への投与に処方を絞るとともに、短期間で市場が急拡大した際に、医療保険に影響が及ばないよう、市場拡大再算定の特例に、“同剤に限った特例”を新たに導入。推計データに基づき再算定を行うケースを「市場規模が3000億円超かつ、予想販売額の10倍以上」とし、従来の市場拡大再算定の下止めの上限値を同剤に限り、「50%」から「2/3(66.7%)」に引き上げる。収載は3月15日付。留意事項通知は14日付で発出し、15日から適用する。

◎類似薬はラゲブリオとゾフルーザの2剤を平均


ゾコーバ錠の薬価は、125mg1錠 7407.40円(一治療薬価:5万1851.80円)。中医協での議論を踏まえ、類似薬効比較方式Ⅰで算定した。比較薬は対象疾患の類似性から新型コロナ治療薬・ラゲブリオカプセル200mg、投与対象患者の類似性から抗インフルエンザ薬・ゾフルーザ錠20mgの2剤を選択。比較薬としての類似性4項目(イロハニ)のうち、いずれも3項目が該当しており、類似性が同等とみなして、2剤の1治療薬価の平均値を同剤の薬価とした。

薬価算定組織の前田愼委員長は、「比較薬2剤の類似性を同等とみなすことがどこに根拠があるのかという意見や、比較薬2剤の患者数の比率を考慮するなどの意見があった。一方で、類似性に関しては、同等とみなさない場合どのように設定するのがするか非常に難しいという意見や、患者数そのものを確定できるものではないというご意見があった。また、今回緊急承認であることから本承認されて、ある程度数字で議論ができるようになった状態で見直す方が良いのでは、という意見もあった」と議論の内容を紹介。最終的に、「現時点では比較薬2剤の類性を同等とみなす考え方を否定できるものではなく一定の合理性があるという結論になりまして今回の薬価とをお示しするということになった」と説明した。

◎ピーク時予測は192億円 陽性者数と投与割合から推計

新型コロナの患者数予測も難しいなかで、ピーク時予測は37万人、192億円と推計した。これについては、第7波までの新型コロナ陽性者数をもとに1つの波当たりの期間を5か月間と設定し、第8波の陽性者数推計(約1200万人)を踏まえ、第9波以降も同数の陽性者数が発生すると推計。現在の投与割合(0.2%)を踏まえ一般流通になることを考慮し、全陽性者の1.2%に同剤が投与されると推計して市場規模を予測した。

◎特例拡大再算定の特例ルール「3000億超が万が一生じた際の措置

同剤については、2月15日に開かれた中医協総会で、薬価算定とあわせて、保険上の留意事項と薬価収載後の価格調整(市場拡大再算定)について決めることが了承されていた。留意事項通知では、最新ガイドラインを踏まえ、「高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討すること」および、「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべきということに留意して使用すること」とされているとして、「使用に当たっては十分留意し、本製剤の投与が必要な患者に限り投与すること」と明記。催奇形性のリスクがあることから、「併用薬剤の投与の有無、妊娠の可能性の有無等の禁忌事項について確認を行い、本製剤の投与が適切な患者に限り投与すること」とし、使用に当たっては患者に文書による説明と同意を取得することを明記。安全性に配慮し、投与対象を明確化した。

あわせて、推計データに基づき再算定を行う場合の市場拡大再算定の特例について、同剤だけの“特別なルール”も決めた。「市場規模が3000億円超かつ、予想販売額の10倍以上」の場合、薬価引き下げ率は「10%~ 2/3(66.7%)」とする。実施した際には、「本剤における特例的な対応として設けた取扱いであることから、対応後の状況も含めた価格調整について検証を行う」ことも盛り込んだ。

中医協の場では診療・支払両側から「引下げ率の上限幅を厳しくすべき」との意見が出ていたが、製薬業界は意見陳述で「現行ルールより厳しくすべきではない」と主張していた。厚労省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「基本的には現行のルールの中で取り扱うべきもの」としたうえで、「短期間で一気に3000億円を超えるようなことが、“万が一生じた場合の措置”ということでこの引下げ率の上限値を引き上げるということを考慮した方が適当と考えた」と説明した。

◎診療側・長島委員 特例による”前例”で「皆保険維持への懸念は残る」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「過去に年間販売額が3000億円を超えた品目はないと理解している。それだけ大きなインパクトを保険財政に与えた前例はないが、今回3000億円という高いハードルを超えた場合に限り、薬価を3分の1に引き下げる前例を作ることになる」と指摘。「今後も高額医薬品が薬価基準に収載される可能性もあるなかで、今回のような対応でさえ、皆保険制度は維持できるのかといった懸念は残る。今回の提案はあくまでも本剤に限った扱いとしていただくこととし、高額薬剤の薬価のあり方については、今後もタイミングを逃すことなく、該当する医薬品の特徴なども踏まえて、中医協において議論がなされるよう要望する」と述べた。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、中医協の議論では1000億円超という意見しかなかったことを指摘。「1500億円超になる可能性が否定できず、保険財政への影響を考慮して特別な対応をするというのが今回の趣旨であり、下げ止めを厳しくするとしても3000億円超という基準はやはり甘いと言わざるを得ない」と指摘した。

◎支払側・間宮委員 追加の安全対策の必要性指摘 安全管理システムや残薬など

このほか、同剤の安全対策をめぐり、支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、安全管理システムの必要性や残薬の取り扱い、妊娠の可能性がある場合には医師だけでなく薬剤師など複数の窓口の必要があるなど、安全対策の課題を指摘。「厚生労働省、国としては悲惨な薬害を1例も出さないという想いで対策を取っていただきたい」と訴えた。支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)も、ゾコーバ錠を服用した妊婦が流産したことを踏まえ、「薬価収載後、感染拡大時にゾコーバ上の使用が増加すれば、この間の痛ましい事例と同様の事例が生じる可能性も否定できない。患者の安全性が最優先であり、何かあってからでは遅い。医療機関等への周知徹底、適切なタイミングでの国民への周知など、さらなる取り組みの徹底をお願いしたい」と訴えた。

厚労省医薬・生活衛生局の中井清人医薬安全対策課長は、「できる限り対応させていただきたい。いまいくつか対策を行っているが、それだけではなく、追加して何らかの対策も考えたい」と応じた。

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