医療科学研究所が報告書 日本版クローバック制度の導入などを提案 薬局の薬価差を問題視
公開日時 2023/04/26 04:51
医療科学研究所は4月25日、医薬品卸売業の目指すべき方向と政策のあり方についての提言を盛り込んだ「医薬品流通問題研究プロジェクト報告書」を公表した。「医薬品流通の問題は多くが制度由来の問題であり、ある意味制度によって歪められてきた市場」と指摘。特に、調剤薬局での薬価差などに問題意識を示した。そのうえで、調整幅拡大を一つの選択肢にあげながらも、「医療保険制度の不要な支出の増大との見方は避けられない」と指摘。根本的な解決策として、日本版クローバック制度の導入などを提案した。
◎調整幅の拡大「医療保険制度の不要な支出の増大との見方は避けられない」 抜本的解決を
薬価制度については、新薬創出等加算の拡大のほか、一定の新薬についての購入価償還、単品単価交渉の義務付け、仕入れ価格にコストを上乗せした価格での価格提示の標準化、新薬についての調整幅の拡大(5〜6%など)などを提案した。調整幅については、現在2%とされる「合理的説明はない」としたうえで、「医薬品流通のコストの 医薬品 卸間差・地域差は、3%〜5%の水準との報告がある」などと説明し、こうした状況で医薬品卸の赤字受注が膨らんでいるとした。
ただ、「医療保険財政からは、調整幅の拡大は医療保険制度の不要な支出の増大という見方は避けられない」としたうえで、購入価償還か、日本版クローバック制度の導入を提案。クローバック制度については、「全国一律価格ではあるものの購入価(仕入れ価)が低い特定の保険医療機関等においては低い償還レートを採用するという方式」とした。こうした抜本策の実施までは、「やはり調整幅の引き上げも検討課題とすべき」とした。
◎コスト割合高い品目は「一定の算定式で自動的に価格を調整するルールの導入を」
薬価制度をめぐっては、「基礎的医薬品とは別にコスト割合が必然的に高い医薬品」について、「コスト連動型医薬品をあらたにカテゴリー化し、一定の算定式で自動的に価格を調整するルールの導入が必要」と指摘。血液製剤や輸液類、生物由来原料の医薬品などを例示し、価格交渉において総価交渉から除外して交渉すべきとした。このほか、基礎的医薬品の対象範囲拡大や不採算品再算定のルール見直しなども盛り込んだ。
後発品については、「参入企業数を思い切って絞り込み、品質確保能力、製造管理能力を厳格に審査した上で保険収載するルールを設けるべき」と提案した。
◎調剤薬局の薬価差追及「好ましいとは言えない」 調剤料の中にすでに含まれる
特に、薬価差と”医の倫理”として、「調剤薬局の薬価差」について問題意識を示した。特に株式会社での経営などにより、バイイングパワーが異なるなどと指摘した。また、調剤薬局に処方権がないことから、利潤最大化のためには、納入価格を引き下げるしかない。さらに、薬価差は薬局の経営原資の一部という認識の下では、調剤料が低いほど、納入価格をめぐる交渉は厳しさを増す傾向にある」などとた。そのうえで、こうした調剤薬局の価格交渉を「好ましいとは言えない」との意見を示し、「調剤薬局には調剤技術料という収益源があり、診療報酬制度上、これは薬剤師の人件費などの経費をカバーするものであるからだ。薬剤師が果たす機能に対しては、 本来 その価値に見合う対価が調剤料の中にすでに含まれているはず」などとの意見を示した。
諸外国のクローバックなどを参考に、「病院診療所とは分離して調剤報酬の仕組みを議論すべき」などと提案した。また、薬価には流通経費が含まれているとしたうえで、例として、「医薬品卸は配送費を医療機関や調剤薬局から徴収しないのが特徴であるが、本体価格と物流コスト(配送条件に連動)を区分して交渉することなどもあり得よう」と提案した。
プロジェクトは、冨田健司氏(同志社大商学部教授)がリーダーを務め、元厚労省医政局長の武田俊彦氏らがメンバー。三村優美子氏(青山学院大名誉教授)が特別アドバイザーを務めている。