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日医・松本会長 薬剤一部負担に「必要な医療の給付除外は決して認めるべきでない」 財政審建議を牽制

公開日時 2023/06/08 04:52
日本医師会の松本吉郎会長は6月7日の定例会見で、財務省の財政制度等審議会(財政審)の建議で薬剤の一部自己負担の導入などが提案されたことに対し、「必要かつ適切な医療を給付範囲から除外するような見直しは決して認めるべきではない」と牽制した。長期収載品については選択療養の活用なども議論になっているが、「中医協などで、これからの議論だ」とも述べた。このほか、リフィル処方箋について強力に推進するスタンスが盛り込まれたことにも反発。「拙速な普及促進は、医療の安心安全、および質を脅かすことになる」と指摘した。

◎医薬品の保険給付範囲見直し 「単なるコストシフトは政策手段としても不適切」

財政審の建議では、高額医薬品の登場を視野に、「基本的には、公的医療保険の役割は大きなリスクをシェアするということであり、それを前提に考えるべき」とのスタンスを表明。諸外国の例を引き合いに、「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲について、「早急な対応が必要」と提言している。

松本会長は、「保険給付範囲は、“必要かつ適切な医療は、保険診療により確保する”という国民皆保険制度の基本的理念に照らして考える必要がある。必要かつ適切な医療を給付範囲から除外するような見直しは決して認めるべきではない」と強調。日本の3割負担について、「国際的にみても高い水準」として、「国によって、患者負担の基本的な構造や水準は異なっており、その中の一部だけを見てそのまま導入しようとすることは適切ではない。給付から患者負担に移し替えるだけの単なるコストシフトは政策手段としても不適切だと考える」と強調した。

松本会長は、医療は国民生活を支える“大切なセーフティーネット”と強調。「財政上の理由から保険給付範囲を縮小していけば、たとえ全ての国民が公的医療保険に加入していたとしても、必要とする医療をきちんと給付できなくなる」と指摘。「低所得者層の貧困化も社会問題となる中、所得などによって必要な医療を利用できる患者さんと利用できない患者さんとの間の分断を生み出してしまう危険性を感じている」と危機感を示し、国民皆保険制度の理念を堅持する必要性を強調した。

◎リフィル処方箋「処方権は医師のみ」と反発 拙速な普及促進を牽制

建議では、リフィル処方箋を強力に推進するスタンスを示している。松本会長は、「(リフィル処方箋の対象となる)症状が安定している慢性疾患の患者でも、定期的にしっかりと診察を行い、疾病管理の質を保つことが安心・安全で質の高い医療であると考えている。リフィル処方箋の拙速な普及促進は、医療の安心安全、および質を脅かすことになる」と強調した。

建議に、「OTC類似薬については、薬剤師の判断でリフィルに切り替えることを認めることなどを検討しなければならない」と強い表現で盛り込まれていることにも反発。「日本では医師法により医師のみに処方権が認められている。リフィル処方箋の利用を判断するにあたり、患者さんの症状をあくまで医学の観点から個別かつ総合的に考慮することが不可欠だ。引き続き定期的な医学管理を通じて、リフィル処方箋利用の可否を判断することが、国民の生命と健康を守るためにも大切であると考えている」と牽制した。

建議ではさらに、2022年度改定でリフィル処方箋による医療費適正化効果を見込んだ経緯に触れ、「リフィル処方箋による適正化効果が未達成であるのであれば、年末の診療報酬改定において、その分を差し引くことも検討すべき」とも提案している。松本会長は、根拠となっているのが日本保険薬局協会(NPhA)の調査であることから、「任意の団体の資料であり、算定根拠がはっきりしないというのが現状だと思っている。これを持って進んでいるとかいないとかいう議論をするのは拙速ではないか」と指摘した。

◎物価高騰・賃上げは診療報酬で 「一時的ではなく構造的な対応が必要」

24年度にトリプル改定を控える中で、建議では、医療機関経営が好転し、「多額の純資産が積み上がっており、賃金・物価高への対応においては、こうした資産を活用していくべき」と主張している。松本会長は、病院団体の調査結果を引き合いに、「2022年度の医療機関の経常利益は、コロナや物価高騰関連の補助金を除くと、72.2%が赤字、補助金を含めても51.6%が赤字になるとされている」と説明。「コロナ補助金はあくまでも不眠不休で、未知のウイルスに立ち向かった医療従事者への一時的な支援」としたうえで、「昨今の物価高騰や賃上げについては、一時的ものではなく、構造的に対応する必要があることから診療報酬で対応すべき」と強調した。

このほか、看護配置10対1を要件とする急性期一般入院料の廃止の検討が提言されたことについては、「地域医療構想の病床機能報告は、地域ごとに最適な機能分化を進めるためのものであり、診療報酬とは直接関係しない。入院料の要件については中医協で扱う問題であり、中医協の場でしっかり議論されることを望む」と述べた。

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