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財務省主計局 財政審に「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲の早急な見直しを正式に提案

公開日時 2023/05/12 04:52
財務省主計局は5月11日、財政制度等審議会に、「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲の早急な見直しを提案した。少子高齢化が進み、全世代型社会保障に向けた改革の必要性が高まり、さらには高額薬剤の登場も見込まれる。こうしたなかで、「保険給付がいまのままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない」として早急な対応の必要性を指摘した。先発、後発ともに医薬品産業の抱える構造的課題も指摘し、「産業構造まで含めて医薬品をめぐる課題を考えていくべきではないか」と踏み込んだ。

◎薬剤費「薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載で薬剤費総額は拡大傾向」

財務省は、先進諸国とのデータ比較を示しながら、我が国の医薬品費などのGDP比や1人当たり医薬品費等は「先進国の中で極めて高い」と指摘した。薬剤費については、既存薬価の改定率(薬剤費ベース)で年平均▲2.9%と例年マイナスとなっているものの、「薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載により、薬剤費総額は拡大傾向にある」と指摘。実際の薬剤費総額(国民医療費ベース)の平均伸び率は+2.2%で、名目GDPの伸び(年平均伸び率+1.1%)を上回っている。さらに、後期高齢者では1人当たり薬剤料が高い傾向にあることから、今後の高齢化の進展に伴い、さらなる薬剤費の増加も見込まれるとした。

◎「公的医療保険の役割は大きなリスクをシェアするということ」

そのうえで、単価が高額な、いわゆる高額薬剤の登場が増え、保険医療財政への影響も懸念されるなかで、「保険給付がいまのままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない。基本的には、公的医療保険の役割は大きなリスクをシェアするということであり、それを前提に考えるべき」と主張。薬剤の種類に応じた患者負担割合の設定をするフランスや、薬剤費の一定額までの全額患者負担とするスウェーデンの例を示したうえで、「諸外国の動向をみると、高額な医薬品について費用対効果を見て保険対象とするか判断する、医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担とする方向性が考えられ、早急な対応が必要」とした。

◎医薬品産業構造にも踏み込む 先発メーカーの「企業規模」を指摘

医薬品の産業構造にも踏み込んだ。新薬メーカーについては、創薬力強化に向けて、「企業規模」の課題を指摘した。日本は医薬品が輸入超過に陥っているが、この背景に内資系企業と、グローバル上位企業の企業規模の違いがあるとした。一桁以上、売上高に差があるとのデータも示した。開発に一定の費用や期間が必要なワクチンでは、グローバル売上上位企業の寡占状態にあることを引き合いに、「グローバル市場における企業規模の問題を考えていく必要」、「グローバル市場への輸出によって稼げるよう、産業競争力を獲得する必要」と指摘した。

◎後発品 降圧薬・アムロジピンに60品目が参入する“多品目”状況を指摘

後発品については、降圧薬・アムロジピンに60品目が参入する、“多品目”の状況にあると指摘。薬価収載医薬品を取り扱う企業(329社)のうち、後発品を扱う企業が約6割(196社、21年9月時点)と多くの企業が参入している実態も示した。

薬剤費総額と経済成長率との関係についても触れた。「当面、コロナの影響や物価上昇率の推移を見極める必要があるが、中長期的に薬剤費を持続可能、負担可能なものにしていくには、総額自体をわが国の経済規模の推移と整合的なものにしていくことについては一定の合理性がある」とした。新時代戦略研究所(INES)の薬剤費マクロ経済スライドを引き合いに、「関係者において建設的な議論が進展することを期待したい」としている。

◎リフィル処方箋 OTC類似薬は「薬剤師の判断」でリフィル切り替えを認めることを検討すべき

このほか、22年度診療報酬で導入されたリフィル処方箋についても言及。大臣合意では、リフィル導入・活用促進による医療費効率化効果を医療費で470億円程度(改定率で▲0.1%)を見込んでいたが、日本保険薬局協会(NPhA)の調査に基づく効果試算では年間▲50億円程度(▲0.01%程度)にとどまっているとした。そのうえで、「まずは、リフィル処方箋の普及促進に向けて周知・広報を図るべき。あわせて、積極的な取組を行う保険者を各種インセンティブ措置により評価していくべき」と指摘した。

そのうえで、「薬剤師がリフィル処方箋への切替を処方医に提案することを評価する仕組み」を提案。「例えばOTC類似薬については、薬剤師の判断でリフィルに切り替えることを認めることなど検討すべき」と提案した。

◎医療・介護改革の議論を「加速」 後期高齢者 医療費負担「原則2割」も今後の課題 

医療・介護をめぐっては、「給付費用は経済成長率以上に伸びており、現役世代の負担能力を考えれば、持続可能な状況とは言い難い」と指摘。診療報酬・介護報酬1%の引上げで保険料負担が約3000億円増加することも示しながら、「今後、さらに給費費用自体の抑制に取り組む必要がある」とした。これまでの制度改革は団塊世代が後期高齢者となる2025年をメルクマルに進められてきたことから、「社会保障の“2025年モデルは実現したか?」と問いかけ、「25年までに改革を実現するには、事実上本園が最後のチャンス。少子化対策だけでなく、”全世代型“の制度を実現するため、医療・介護の改革議論を加速する必要がある」とした。

医療費をめぐっては、22年10月に一定の所得以上の後期高齢者に2割負担が導入されたが、「これをさらに進め、原則2割負担とすることも今後の課題ではないか」と問題提起した。

◎看護配置10対1の急性期入院基本料「廃止を検討すべき」 より実績ベースでの評価に転換を

効率的な医療提供体制の必要性を強調。新型コロナの経験を今後の対応につなげるために、医療機関や病床の役割分担の必要性を強調。看護配置が比較的小さい急性期病院も多いことから、「10対1といった看護配置を要件とする急性期入院料は廃止を検討すべきではないか」と提案。急性期入院基本料は看護配置のほか、重症度・医療看護必要度、平均在院日数、在宅復帰率などが要件となっているが、看護配置に“過度に依存”と指摘し、「患者の重症度、救急受入、手術といった“実績”をより反映した体系に転換していくべきではないか」と提案した。

このほか、医療機関経営情報の「見える化」を進める観点から、医療機関の経営情報データベースに、「職種別の給与・人数の提出は義務化すべき」とも提案した。新型コロナが5類に変更されたことを踏まえ、「病床確保料」など、特例を早急に解消する必要性も指摘した。



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