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日医・松本会長 財政審・建議に「医療の削減ありきの主張は納得できない」 技術革新含めた財源確保を

公開日時 2025/05/29 05:30
日本医師会の松本吉郎会長は5月28日の定例会見で、財務省財政制度等審議会が取りまとめた建議について、「必要な医療は、保険料あるいは税収も含めて全世代できちんと負担していくという観点に立てば、医療の削減ありきということでスタートした財政審の主張には納得できない」と断じた。松本会長は石破首相と面談し、骨太方針を念頭に「高齢化の伸びに加え、賃金上昇と物価高騰、さらには技術革新等への対応が必要だ」と訴えるなど、政府与党への働きかけを強めている。来週には、国民医療推進協議会を開催し、医療・介護業界が一致団結した“総意”として決議を取りまとめ、政府与党等にさらに要望を強く訴える姿勢を示した。

◎財政審建議に「正直に言って非常に腹立たしい内容ばかり」

松本会長は建議に盛り込まれた社会保障関連の項目について、「正直に言って非常に腹立たしい内容ばかりで、何度も反論したいという思いは非常に強く思っている」と批判した。

建議では財政健全化の必要性に言及。道路などのインフラ管理や医療などのサービス提供が滞り、国民生活に支障を来すなどの例をあげ、「財政の健全化とは、そうしたリスクを回避し、持続可能で豊かな社会を実現するための努力にほかならない」としている。松本会長は、「近年の税収増を必要な社会保障の十分にしっかりと当ててこなかったために、今般の高額療養費制度の見直しや地域医療支援病院の診療休診に象徴されるように、既に国民生活に支障を来しているし、医療の提供が滞ってきている」と危機感を示した。

◎建議で示された医療の“理想像” 「全く納得感の得られていない机上の空論」

建議では医療・介護分野の理想像も示している。医療については、「、リフィル処方や長期処方・オンライン診療の普及により患者の通院負担の軽減や利便性向上につながっていること、さらには、軽度な症状であれば自身で対応するなどセルフケア・セルフメディケーションが浸透していることなどが望ましい」、「医師に代わり薬の処方を行うなど薬剤師の活躍の場が広がっていることなどが理想」など理想像を描いている。松本会長は、「医療・介護関係者から見ますと全く持って納得感が得られていない机上の空論」と断じた。

生活習慣病患者の疾病管理についても建議では言及。病状が安定してきた患者に対するフォローアップは、「一般的な診療ガイドラインに沿う形で報酬の算定要件を厳格化するべき」と指摘。「例えば、血圧がコントロールされている場合の生活習慣病管理料の算定について、1か月に1回よりも長くする等の対応を検討すべき」と提案している。松本会長は、「医師は患者の状態を見ながら対応を行っており、医師が判断することが基本。ここが非常に重要な点だ。こうした内容は中医協で議論されるべき内容であり、財政審が言及すべき内容ではない」と強調した。

◎自公維の3党協議の“11万床削減” 「各医療機関が判断できる枠組み必要」

自民・公明・維新の3党協議のなかで、11万病床削減する方向性が示されていることについても言及した。

松本会長は、「まだ最終的な合意には至っておらず、具体的な枠組みなどの細かいところやスケジュールもまだ決まってないものと理解している」と断ったうえで、「確かに人口変動、医療の需給や受診行動の変化に医療機能も対応していかなければない。そのための政策手段も大切だ」と述べた。そのうえで、「“11万床削減”という数字が一人歩きするなど、患者さんや医療現場に不安や混乱があってはいけない」と釘を刺した。「病床の削減は方法論を間違えると、全国津々浦々の地域住民、そして患者さん、ご家族、そして医療現場で懸命に命や健康を守っている医療従事者、さらには医療にかかわる業種の皆様に大変な不安や混乱を与えかねない」として方法論を慎重に検討することも求めた。

地域医療構想の基本的な考え方について、「地域医療構想は将来の入院ニーズの変化を見据え、各病院や有床診療所が様々なデータ等に基づいて、自分たちの地域での立ち位置を考え、地域の関係者間で協議することを通して、病床機能の転換や収れんがなされていくというもの」としたうえで、「仮に削減について3党の合意が最終的になされたとしても、各医療機関において、現在や今後の医療ニーズを踏まえてきちんと検討した上で判断できるような枠組みが必要」との考えを示した。

さらに、「病床の削減ありきではなく、地域で必要な入院医療がなくなるように勘案することも求められる」と指摘。病床機能の転換や収れん、ダウンサイジングなど病院経営に大きな影響を伴う判断が必要になることから、「財政面でしっかりと支える手当てが不可欠」とも指摘した。24年度補正予算による「医療施設等経営強化緊急支援事業(病床数適正化支援事業)」では申請した5万4000床のうち、補助の対象となったのは7170床(4月内示)で、多くが補助の対象から外れている。松本会長は、「財政的な手当てにあたっては、対象外となった医療機関に配慮していただく必要がある」と述べた。また、病床削減にあたっては、「地域医療構想や地域での協議も必要」との見解も示した。コロナ禍での教訓をもとに「感染症パンデミックや大規模災害などに備えて、地域での医療機関同士の役割分担のもとで、平時から病床確保に余裕を持っていることが肝要」との考えも示した。
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