ヴィアトリス製薬、ファイザーUPJ、マイラン製薬、マイランEPDの4社で構成する日本のヴィアトリスグループは、2023年中に4社を再編・統合し、「ヴィアトリス製薬」と「ヴィアトリス・ヘルスケア」の2社体制で事業展開することを決めた。現在のヴィアトリス製薬以外の3社のほとんどの社員が7月1日付でヴィアトリス製薬に転籍。同一の給与・人事制度のもと、ヴィアトリス製薬の社員として新薬、長期収載品、AGを含むジェネリック、バイオシミラーのプロモーション活動を始めた。グループの取扱製品の製造販売承認の承継や販売権の移管は、年内に完了させる予定。
ヴィアトリス製薬では事業部制をとり、新薬、長期収載品、バイオシミラーを扱う「ブランドビジネス」と、AGを含むジェネリックを扱う「ポートフォリオビジネス」の2事業部で活動する。ヴィアトリス製薬の従業員数やMR数は非開示。ヴィアトリス・ヘルスケアは、ヴィアトリスグループの主にジェネリックの製造販売承認を保有する会社との位置づけとなる。
◎「より効率的で簡素なオペレーションを実現」
ヴィアトリスグループ日本代表で4社の社長でもあるソナ・キム氏(写真)が本誌取材に応じ、4社の年内の再編・統合計画を明らかにした。4社をヴィアトリス製薬に集約する理由は、「より効率的で簡素なオペレーションを実現するため」(キム氏)。また、4社体制よりも1社で事業展開した方が、「『ヴィアトリス製薬』との社名の認知が向上し、当社の事業活動への理解もより深まると判断した」と語った。
グローバルのヴィアトリス(VIATRIS)は20年11月に、米マイランと米ファイザーアップジョン事業部門が統合した新会社として誕生した。このグローバルの動きに合わせる形で日本では4社体制でスタート。4社それぞれの取扱製品は、▽ヴィアトリス製薬(旧ファイザーアップジョン事業部門)はリリカ、イフェクサー、リピトール、ノルバスクなど、▽ファイザーUPJは主にAGの製造販売元、▽マイラン製薬は幅広い疾患領域をカバーする300種類のジェネリック、▽マイランEPDはアミティーザ、エピペン、ホクナリンテープなど――となっていた。いずれも知名度の高い製品ばかりだが、“ヴィアトリスグループの製品”という観点では必ずしも認知度は高くなかった。
キム氏は、「一般的な製薬企業はイノベイティブな製品を手掛ける会社かジェネリックに特化する会社に大きく分かれるが、当社は両方に強みを持つ業界の中でも独特な存在だと自負している」とし、今後、ヴィアトリス製薬として新薬、長期収載品、AGを含むジェネリック、バイオシミラーを取り扱うと述べた。グローバルのミッションとして掲げる「世界中の誰もが人生のあらゆるステージでより健康に生きられるよう貢献します」を引き合いに、「ヴィアトリス製薬は、人生のあらゆるステージで、全ての患者さんに必要な製品を提供し支えていく、ユニークな製薬企業として活動していく」と強調した。
◎長期収載品やジェネリック 「社会貢献の側面が大きい」
キム氏は、直近の業績や、新薬やジェネリックなど製品カテゴリー別に基本的な事業戦略も語った。
具体的な売上収益などは非開示だが、日本のヴィアトリスグループのビジネス構成比は新薬、長期収載品、ジェネリックで概ね3分の1ずつだとし、「コミットした数字は達成し、堅調な業績で推移している」と述べた。毎年改定で収益確保が厳しくなっている長期収載品やジェネリックについては、「社会貢献の側面が大きい。安定して質の高い製品を供給するセクターだと考えている」と言い、「新薬、長期収載品、ジェネリックの3つのセクターでバランスを取り、ビジネスを維持している」と語った。
◎新薬事業 消化器、中枢神経、眼科領域に注力
製品カテゴリー別の事業戦略に関しては、新薬事業は特に消化器領域、中枢神経領域、眼科領域に注力していく考え。製品導入も積極的に行う方針で、最近では潰瘍性大腸炎治療薬・Cobitolimodの国内権利を獲得するなどした。
眼科領域については、グローバル本社が23年第1四半期に買収した眼科領域のバイオ医薬品企業オイスター・ポイント社の製品・開発品から国内導入する意向で、「日本にフィットした製品を見極めた上で、国内導入したい」と意欲を語った。導入を検討している具体的な製品・開発品には触れなかったが、オイスター・ポイントはドライアイ治療薬・Tyrvayaなどを手掛けている。
長期収載品事業は、「ファイザーから移管した製品や、マイランEPDに良い長期収載品が多くあるため、現時点では積極的に長期収載品を追加する活動はしない」と話した。
◎ジェネリック事業 「10社も20社も参入する市場に、当社があえて参加する必要はない」
ジェネリック事業に関しては、「安定供給を担保することと、供給状況を顧客に伝えることが極めて重要だと考えている」との認識を示し、「この一環として、供給問題のためのコールセンターを設けた。顧客が必要な情報をすぐ入手できる環境を整えた」と紹介した。
その上でジェネリックの今後の事業戦略について、「10社も20社もジェネリックが参入する大型市場に、当社があえて参加する必要はない」と表明し、「単にコピー製品を出すのではなく、いかに付加価値をつけて安定的にベネフィットを提供できるのかが重要だと考えている」と述べた。大型市場への参入に慎重な理由としては、「競争が激しく、薬価の下落も大変早い」ことを挙げ、「皆がそれほど利益を得られない市場ではないか」と指摘した。
◎製造が難しいジェネリック 後追いを含むAG製品で「意義ある貢献をしたい」
今後、積極的に手掛ける“付加価値のあるジェネリック”のイメージは、「意義のある貢献をしたいということ」だとし、例えば他社では製造が難しい複雑なジェネリックを手掛けることや、1社や2社のジェネリックしかない市場に参入して治療選択肢を増やすこと、後追いを含むAG製品を増やすこと――を具体的に挙げて存在感を示したいと述べた。
ジェネリック事業の収益確保策に関しては、「グローバルプラットフォームが活用できればコスト効率も上がるが、日本独自の規制や規格に対応するため、実は日本向けの特別な仕様の製品を生産し供給している」と明かしてくれた。包装単位の見直しなど常に収益確保に向けた改善策を検討していると言い、今回の「ヴィアトリス製薬」への事業の集約も収益確保策の一つだと語った。
バイオシミラー事業は22年に、グローバルでインドのバイオコン社に33億3500万ドルで売却する最終合意がなされている。キム氏によると、グローバル本社が現在バイオコンと国別にバイオシミラー製品の取り扱いを協議しており、日本での取扱いは「未定」だという。このため、「現在手掛けているアダリムマブBSやダルベポエチンアルファBSの価値をしっかり顧客に届けることが我々の使命であり、引き続き取り組んでいく」と述べた。
キム氏へのインタビューの詳細は、ミクス23年9月号に掲載する予定です。