米CMS 初の価格交渉対象品と日程を提示 PhRMAは政治介入に反発
公開日時 2023/09/07 04:48
米メディケア・メディケードサービス庁(CMS)は8月29日、メディケアパートD(公的高齢者保険薬剤給付プラン)で初めての薬価交渉の対象となる品目および価格交渉に関する具体的な今後の日程を公表した。
8月にバイデン大統領が署名し発効した「インフレ抑制法2022」(the Inflation Reduction Act of 2022)に基づく措置である。パートDにおいて薬剤費が過剰に大きな薬剤が価格交渉の対象となった。
対象品目および各品目の1年間の薬剤費(2022年6月-2023年5月)は以下の通り。
Eliquis(アピキサバン)164億8262万1000ドル
Jardiance(エンパグリフロジン)70億5770万7000ドル
Xarelto(リバーロキサバン)60億3139万3000ドル
Januvia(シタグリプチン)40億8708万1000ドル
Farxiga(ダパグリフロジン)32億6832万9000ドル
Entresto(サクトビトリル/バルサルタン)28億8487万7000ドル
Enbrel(エタネルセプト)27億9110万5000ドル
Imbruvica(イブルチニブ)26億6356万ドル
Stelara(ウステキヌマブ)26億3892万9000ドル
Flasp/Flasp FlexTouch/Flasp PenFill/NovoLog/NovoLogFlexPen/NovoLog PenFill(インスリンアスパルト)25億7658万6000ドル
CMSは、新薬価による取引実施を26年1月からの開始を予定。23年および24年は当該製薬企業とCMSの薬価交渉の期間とし、24年8月1日を交渉終了時と決め、9月1日に交渉薬価の合意結果としての対象製品の薬価の発表を行う計画だ。
CMSのChiquita Brooks-LaSure管理官は、「本日は、メディケアプログラムにとって、メディケア薬価交渉のための初めて選ばれた薬剤の発表により意義あるかつ歴史的な瞬間を記録した」と述べたうえで、「これら交渉における我々のゴールは、競争とイノベーションを促進する一方で、メディケア加入の数百万という人々に最も費用が高い薬剤へのアクセスを改善することである」とコメントした。
PhRMA(米国研究製薬工業協会)は、CMSの発表を受け、同日直ちにStephen Ubl理事長兼CEOによる同価格交渉への反論を展開した。同理事長兼CEOは、CMSの発表は患者のためではなく短期的な政治的利益のために急いだ結果であり、選択された薬剤の薬価はメディケアパートDにおいてすでに自由市場での活発な取引でリベートの支払い、値引きなどを行っていると実態を指摘した。さらに、政府が薬価交渉に介入することについて、「政治は、どの治療法や治癒法が、開発する価値があるか、誰がそれにアクセスすべきかを指示すべきではない。がんムーンショット計画(米政府のがん撲滅計画)は、バイデン政権が、我々が目的地に行くために必要とするイノベーションロケットを取り除き(イノベーションを阻害する諸政策を)続けるなら成功裏に行かないだろう」と批判した。