Active-T 「製薬大再編時代のセルフ・イノベーション」でシンポ ベンチャーに転身「必ず活躍できる」
公開日時 2023/09/11 04:51

武田薬品のOBが立ち上げた会員制ビジネスコミュニティー「Active-T」は9月9日、東京都内で「製薬大再編時代のセルフ・イノベーション」をテーマにシンポジウムを行った。製薬企業出身であり、現在は他分野で活躍するパネリストを集めたディスカッションでは、ベンチャー・スピリッツへの挑戦や起業家に求められる人材像、課題克服策などにスポットライトがあたった。ベンチャー企業で成功を収めるためのノウハウでは、「今までの成功体験も全て忘れてイチからやるマインドセットの必要性」や、「製薬企業で培ったカスタマー・セントリシティの実践」、「失敗を恐れない姿勢」などが各パネリストから提言された。
この日のシンポジウムには、武田薬品で消化器スペシャルティビジネスユニットのヘッドを務め、退職後はサージラボ代表を務める中村浩己氏、ファイザーでMRを経験し、現在コーン・フェリーデジタル部門シニアビジネスディベロップメントディレクター営業変革ソシューション日本責任者を務める野見山健一郎氏、バイエル薬品およびドイツBayer AGでCVC投資やベンチャー買収など大型M&Aに従事し、現在は新生キャピタル・パートナーズ パートナー、NLSパートナーズバイオベンチャーキャピタリストの栗原哲也氏の3氏が登壇した。
◎製薬企業の経験者はベンチャーで活躍できるか 「イチからやるマインドセットを」
「製薬企業の経験者はベンチャーで活躍できるか」-をテーマにしたディスカッションで3氏は揃って「活躍できる」との見解を披露した。中村氏は、「ポテンシャルとして製薬企業に従事する社員は優秀な方ばかりなので活躍できるものを持っている」と断言。ただ、「自分が担ってきた仕事とかポジションとかは全部忘れて、今までの成功体験も全て忘れて、イチからやるようなマインドセットは大切なんじゃないか」とアドバイスを送った。
MR経験者の野見山氏は、「MRは患者を治療する医師、医局に対していかに役に立つかといったカスタマーを中心の支援を常に考え、動いている」と強調。「(MRの)キャリアの中でカスタマー・セントリシティという考え方がマインドセットとして定着している。そういったマインドセットを持つ営業担当者が他業界、製造業などで求められている」と述べた。
栗原氏は、「ベンチャー企業のマネジメント担当者は、下から上がってくる情報を吸い上げて、それを正確に理解して伝えられる力が求められる。必ずしも経営陣がバイオを分かっていないから向かないとは私は思わない」と言い切った。一方で、「ベンチャー企業は、大企業ほど福利厚生がないので、しっかりしたところで働きたいというのであれば少し合わないかなと思う。逆にアップダウンがある世界を楽しめる人であれば合っているのではないか」とアドバイスした。
◎「どこを変えれば活躍できるか」 失敗を恐れないこと、社外・業界外とのNW構築を
ディスカッションでは「ベンチャー企業で働くための課題、どこを変えれば活躍できるか」―に議論が及んだ。栗原氏は、「失敗を恐れないこと」と指摘。米国の事例を引き合いに、「アメリカ人でもこれは怖いもの。何故多くの人が挑戦するかと言えば、周りに知識や経験を持つ人が大勢いて、ロールモデルが沢山あるからイメージがつきやすい」と語ってくれた。その上で、「イメージが付きやすい、付きにくいでだいぶ変わる。周りに起業される方がいれば、それを聞いて、体験してみる。そうするとイメージが付くのではないか」と述べ、自身も相談に乗る用意があると語った。
野見山氏は、「製薬企業は(経営的に)安定していて、従業員のサーベイをみても会社に属している感が非常に強い」と分析。「自分のセルフキャリアプラン、セルフケアマネージメントをまずちゃんとやる。本当に自分が何をしたいのかをしっかり考える時間を整理してみることが大切だ」と述べた。そのうえで、「製薬以外のネットワークを作っていくことが重要かと思う。社外、業界外の人とお話する機会を持つことが必要ではないか」と強調した。
中村氏は、「本当に感じるのは(ベンチャーは)1人で何役もこなさなければいけないこと。営業なら営業だけっていうわけにいかない。何役もこなしながら会社全体のことを考え、あたかも経営者のように、考え、行動する人が求められていると思う」と語った。また、「ベンチャーであれば、本当に大変なことが次々と起こる。ローラーコースターのように、これを大変だけど楽しいって思える人が向いているのではないか」とアドバイスした。