岸田首相 「幸齢社会」実現会議でレカネマブ承認を報告 新薬開発の推進と薬価対応を武見厚労相に指示
公開日時 2023/09/28 04:51
岸田首相は9月27日、認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議の初会合を首相官邸で開いた。会議冒頭で岸田首相は、エーザイのアルツハイマー病治療薬・レケンビ点滴静注(レカネマブ)が薬事承認されたことを報告。引き続き治療薬の開発を推進するとし、日本がこの分野の国際競争で「リードを広げる」ための具体策の検討を健康・医療戦略担当相に要請した。さらに、レカネマブの薬価算定に絡めながら、「国民皆保険の持続性とイノベーション推進を両立させる観点から薬価制度の改革を含めた対応」を同席した武見厚労相に指示した。
◎「レカネマブが薬事承認されました。認知症の治療は新たな時代を迎えました」岸田首相
「レカネマブが薬事承認されました。これは画期的な新薬であり、認知症の治療は新たな時代を迎えました」-。岸田首相は初会合の冒頭で、参加した認知症の当事者や家族を前にこう語り、胸を張った。続けて、「まずは、新薬へのアクセスや投与後のモニタリング等が適切に確保されるよう、必要な検査体制、医療提供体制の整備について、厚生労働大臣に検討を進めてもらいたい」と述べ、首相の真隣に座った武見厚労相に直接指示を出した。
◎「国際競争が激化する中、我が国のリードを広げるべく具体的な検討を」
岸田首相は、「治療薬の開発、これは引き続き推進する必要がある」とも指摘。「国際競争が激化する中、我が国のリードを広げるべく、認知症、脳神経疾患、研究開発イニシアティブについて健康・医療戦略担当大臣において具体的な検討を進めていただきたい」と期待感を滲ませた。さらに、焦点となるアルツハイマー病治療薬の薬価が高額になることに含みをもたせながら、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進が両立する薬価制度の改革についての検討を武見厚労相に指示した。
このほか、「身寄りのない方を含め、認知症になったとしても安心できる、身元保証等の課題などを解決していかなければならない」と指摘。厚労省に対して実態把握と課題の整理を進めるよう求めた。さらに、官房長官を中心に、課題解決に向けた省庁横断の体制を構築するよう要請した。
◎国際社会が達成していない認知症対策で世界のリーダーを目指す意気込み
岸田首相と武見厚労相は前日26日に会談し、年末をめどに認知症の対応強化策について打ち出す方向を確認した。2025年には5人に1人が認知症に罹るとの推計もあるなかで、政府は今年6月に「認知症基本法」を成立させ、医療的側面だけでなく共生社会の実現を目指す姿勢を明示した。今秋から国、自治体による取り組みの具体像の検討に入る。その矢先に、エーザイのアルツハイマー病治療薬が薬事承認された。冒頭の岸田首相の発言にあるように、国際社会の中でどの国も達成していない認知症対策のリーダーを目指す意気込みを滲ませたとも映る。「幸齢社会」実現会議の議論は、10月にも岸田内閣が取りまとめる経済対策に盛り込む方針だ。