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レカネマブ 介護費用軽減、費用対効果評価で価格調整範囲の見直し議論へ 中医協

公開日時 2023/10/05 06:00
アルツハイマー病治療薬・レカネマブの承認をきっかけに、介護費用軽減をいかに評価するかが焦点となっている。10月4日に開かれた中医協薬価専門部会、費用対効果評価専門部会では、「介護費用の軽減」の評価のあり方が議論となった。承認から90日以内に薬価収載されることが決まっているなかで、薬価算定ルールでの評価は困難との声が診療・支払各側からあがるなかで、費用対効果評価での評価が注目される。この日の費用対効果評価専門部会では、レカネマブについて費用対効果の価格調整範囲の見直しや、介護費用の軽減についてのデータの取り扱いについて検討することを了承した。この日の部会では、レカネマブに限らないが、費用対効果評価による価格調整の「価格引き上げの際の条件」についても論点となったが、診療・支払各側ともに慎重な姿勢を示した。

薬価算定ルールでは、介護費用の削減効果については評価が困難であることが指摘されている。このため、同剤に限った特例的な取り扱いを決めない限りは、既存ルールに基づいて評価可能な範囲で評価されることになる。一方で、承認から90日以内に収載することが了承されている中で、結論を得ることの難しさを指摘する声が診療・支払各側からあがった。

◎支払側・松本委員「収載時は既存の評価軸で判断、費用対効果評価で介護費用について引き続き研究」

薬価専門部会で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「議論の時間が非常に限られている。これまでの薬価の議論において取り扱ったことのない介護費用の軽減を収載時の薬価に反映させるかどうかについて十分な議論もできないまま、介護負担軽減分を医療保険で評価することには限界がある」と指摘。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「この重要な問題について、薬価収載の期限である90日間で結論を出すことは非常に難しいのではないか。その一方で、議論に時間をかけることで、この薬を待ち望む患者の期待に沿えなくなりますし、最長90日以内に薬価収載するという予見性も損なわれてしまう。したがって、薬価収載時には既存の評価軸で有用性等を判断した上で、費用対効果評価の中で介護費用について引き続き研究を続けていただきたい」と述べた。

◎診療側・長島委員「まずは技術的な課題整理を」

一方で、費用対効果評価では、現行ガイドラインでも分析はできるものの、これまでに介護費用を含めた分析は行われていない実態がある。厚労省はこの日の費用対効果評価専門部会に、英国など介護の費用への影響を分析に組み込むこととしている国が複数あると説明。英国では、多発性硬化症治療薬で論文や民間の調査結果を踏まえ、介護費用の軽減を検討された事例があることも紹介した。そのうえで、日本では、公的介護に係る統一的なデータベースとして、「介護保険総合データベース(介護DB)」が整備されていることも紹介された。

これに対し、診療側の長島委員は、英国での事例について、「確率的感度分析の結果、70%の確率で費用対効果良好とあったり、調査実態を反映していない可能性を指摘しているのみにとどまるなど、日本における価格調整の仕組みとはかなり異なっていることがうかがわれる。背景や技術的課題の整理を踏まえて対応を検討する必要がある」と指摘。「これまでの我が国の費用対効果評価の品目において、対象となる事例がなかったことを踏まえれば、個別品目に当てはめた議論を行うその前に、まずは技術的な課題を整理していただき、議論を深める必要がある」と表明。「介護費用に係るデータの評価に関しては、改めて研究を進めるべき」と強調した。

◎診療側・江澤委員「薬剤のみの評価、極めて難しい」 池端委員「レカネマブは試金石に」

診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「レカネマブのごとく認知症が完治する薬剤でない場合に、介護費用の分析において例えば生涯介護費用が変化するのかどうか。あるいは分析評価期間をどう設定するのかなど様々な課題がある」との見解を表明。認知症は、社会的な関わり人との関わりや環境要因など、様々な因子が影響し、かつ適切な認知症ケアも存在する中で、「薬剤のみの評価は、現時点では極めて難しいのではないか」と指摘した。

診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「レカネマブは、まさにこれから費用対効果がどう反映できるかという、まさに試金石になるものではないか」との見解を表明。介護DBの活用について長期間になる可能性に加え、「少し実験的な評価になる可能性もあるかもしれないが、ぜひ積極的に取り組んでいただきたい」と述べた。

これに対し、診療側の長島委員は、「介護DBに入っている情報は今のところそれほど多くはないので、それを持ってして介護費用というところまでできるかというと、まだまだ難しい。ただ、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)と連携することで、一定程度の可能性はあると考えられている」と介護DBの限界についても触れた。

◎支払側・松本委員 レカネマブの例が「一般ルールになるかはさらに慎重な議論、判断を」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「介護費用の軽減を医療保険の財源を使って評価することについて研究をする進めること自体は否定しない。仮に今回、レカネマブについて介護費用の分析を試行的にやってみたとしても、それはあくまでも個別のものに対してのものであって、他の薬に対しても一般的なルールとして適用するかどうかはさらに慎重な議論、判断が必要だと考えている」と述べた。

◎費用対効果評価での引上げ 支払側・松本委員「製薬業界のヒアリングもそこまででない」

一方で、この日の議論では、レカネマブには限らないが、価格調整に際しての「価格引き上げの際等の条件」も論点に上がった。診療側の長島委員は、「まず事務局において具体的な資料を整理してそれをご提示いただくというのが前提。例えば薬価制度、材料価格制度の補完というこれまでの説明との整合性を図る観点や、比較対照技術の選定プロセスに関する正当性の観点、あるいはシミュレーションなど、そういうようなものを少し具体的にどのようなものかなど、具体的な資料が必要ではないか」と述べた。

支払側の松本委員は、これまでの例では価格引上げの条件の一つである、「比較対照品目(技術)と比べて、全く異なる品目であること、又は基本構造や作用原理が異なるなど一般的な改良の範囲を超えた品目であること」を満たさないケースが多いことを指摘。「結構妥当な基準ではないかと思う。これを覆すほどの何か条件が出てくるということがあるのか」と述べた。製薬団体の意見陳述を引き合いに、「そこまでは、という印象を受けた。そういうものがあればということで検討するということではないか」と述べた。

今後は、薬価専門部会と費用対効果評価専門部会の合同部会を開催し、議論を深める方針。




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