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アレクシオン・笠茂社長 薬の価値を患者に届ける”革命の時“ Ubie Pharma Summit 2023 Summer

公開日時 2023/10/10 04:50
アレクシオンファーマ合同会社の笠茂公弘社長は「Ubie Pharma Summit 2023 Summer」(Ubie主催・7月4日開催)の基調講演で、「科学技術・プラットフォームテクノロジー・ITなどが進化し、新たな治療が生まれ、政府の骨太方針などの後押しがある今こそ、新たな価値を患者さんに届ける革命の時だ」と語った。笠茂社長はさらに、「医薬品は患者さんのために存在するものであり、その価値は患者に届いてこそ発揮される」とも強調した。これまでの企業活動は、どちらかというと直接相対する医師を優先して動いてしまうことがあったと自戒を込める。コロナ禍を経て社会活動にデジタルが根付く中で、改めて患者中心の医療を実現するための企業活動の在り方に一石を投じた。ミクスOnlineがメディアスポンサーを務めた”Ubie Pharma Summit 2023 Summer”の模様を報告する。

今回のイベントは、東京・大阪あわせて500名超が参加した製薬企業向けカンファレンスで、”Patient-Centric Innovation”をテーマに、改めて患者中心の価値観の必要性、現状、理想像を再確認する場となった。

◎Patient Centricityを社内の共通言語にしなければならない

アレクシオンファーマ合同会社の星野洋メディカルアフェアーズ本部長、ギリアド・サイエンシズ常務執行役員の地主将久メディカルアフェアーズ本部長、ブリストル・マイヤーズ スクイブ執行役員の杉田真研究開発本部長の3氏が登壇したパネルディスカッションでは、「医薬品パイプラインにおけるスペシャリティ領域の伸長」、「新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う開発の迅速化やデジタルの進展」、「治療選択肢が増えたことによる高い効果と高い安全性へのニーズ拡大」が主にPatient Centricityの必要性が増している背景だと語られた。

「Patient Centricityは製薬企業にとってのDNAであることは間違いない」と語るのはアレクシオンファーマ合同会社の星野洋本部長だ。今後のイノベーション推進・課題解決において鍵となるのはPatient Centricityの実現であるというのが本イベントを通して語られたメッセージでもあった。

◎「本当に患者さんのためになっているかを考える」アステラス製薬・東山浩之室長

「製薬企業の人たちの自己満足ではなく、本当に患者さんのためになっているかを考えながらPatient Centricityを実現すべき」と唱えるのはアステラス製薬の東山浩之ペイシェント・セントリシティ室室長だ。データサイエンス、RWDによるデータの利活用は今後急激に増大するだろう。一方で、「それらがどのようなコンテキスト(文脈)で生まれたデータであるのか、患者の課題とニーズは何か、ということに対して高い解像度を持たなければ活用は意味をなさない」と語る。東山室長は、「みなさんは最近患者さんに会っただろうか。会ってないなら間違いなく会った方がいい」と参加者に呼び掛け、何が患者にとっての価値で、スペックの高い医薬品を開発する以外に製薬企業が必要とされている役割は何なのかを「患者視点で捉えることが重要な時代になっている」とのメッセージを発した。

◎創薬と同じくらい、それが「届く」ことが重要

2008年に乳がんを経験した認定NPO法人マギーズ東京共同代表理事の鈴木美穂氏が自身の経験をもとに、「手に入る医療情報が正しいかを見極めるのはとても難しい、医療の進歩に社会がまだ追いついていない」と基調講演の中で語った。

報道記者という立場だった鈴木氏。自身の病と闘うために自ら情報収集を行い、結果的に7つの医療機関から最適な治療を選択できた。ただ、「誰でも同じ情報を集め意思決定できたかというと難しい」と振り返る。

医師資格を有するアレクシオンファーマの笠茂社長も、「医師は何でも知っているという印象を持ちがちだが、症状からあらゆる疾患を疑うには限界がある」と言う。特に希少疾患の患者は確定診断を受けるまでに平均4.8年を要するように、医薬品を開発すれば自然と患者に届くわけではない。

Ubieが行った調査(2022年2月実施、n=4462)では、「直近3か月に何らかの症状があった」人のうち、実際に医師による診断を受けた患者は全体の38%にとどまる。新たな治療薬が生まれ、さまざまな情報にアプローチできるようになった現代だからこそ、今一度それが適切な患者に届くことの重要性を認識すべきである。

ブラックストーン・グループ・ジャパン代表取締役会長で、Ubie社外取締役でもある重富隆介氏は、「革新的技術に裏打ちされた”Patient-Centric Innovation”こそ、マイナス成長となっている日本の製薬市場を再度活気づける鍵だ」と指摘する。グローバルの医薬品市場は1.9兆ドルまで拡大が予測されているが、日本を含む先進諸国を高齢化が遅い、医療を含むヘルスケアコストの増加は各国政府にとっても深刻な問題だ。一方で、新薬開発も近年はバイオ創薬が中心となり、比較的資本力の弱い米国系のバイオベンチャー(振興バイオファーマ)が創出した新規モダリティを日本に導入するまでの時間を要する“ドラッグ・ラグ”の増加に警戒感も示されている。

◎中長期視点のイノベーション推進を

バイエル薬品の岩井敦史スペシャリティケア事業部 婦人科領域・エスタブリッシュプロダクツマーケティング&営業 統括部長デジタルトランスフォーメーションリードは、「企業としては疾患の認識からアドヒアランスまで一気通貫したモデルを作っていきたい。それは自社だけではできないので、Ubieなどのサービスプロバイダーとコラボしていきたい」と語る。

ファイザー執行役員の岡田ホルヘデジタル部門長が「規制当局や医療機関、Ubieのような企業を含めて、エコシステムが形成される必要がある」と語るように、Patient Centricityを共通の価値観とした大きなイノベーションを、製薬企業1社の力だけで推進するのはなかなか難しい。

「イノベーションはどうしても失敗が先行する。感覚値で打率は1割以下。この合意形成が経営層とできていなかったら”短期のROIは?” と求められて動けないし、イノベーションの担当者は腹を括らないと心が折れてしまう」と強調するのはアストラゼネカの劉雷イノベーション パートナシップ & i2.JP ダイレクター。ノボ ノルディスク ファーマの北山由和肥満症事業本部 肥満症コマーシャライゼーション部シニア肥満症コマーシャライゼーションマネジャーも、「協業してトライアンドエラーを積まないといけない。結局はPoCをどれだけ作れるかが成否をわける」と話すように、イノベーションは中長期視点に立ち、外部パートナーを巻き込みながら進めていくことが必要だ。

イノベーションを実現するためには、例えばフェーズに応じてKPIを変えながら経営層とコミュニケーションを取ったり、Patient Centricityを共通の価値観として他部門・パートナー企業と連携したり、Patient Journeyの解像度を高め患者にとっての真の価値を捉え、「本来的にどうあるべきか」を見失ってはいけないなど、具体的なTipsが語られた。



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