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【中医協薬価専門部会 10月20日 議事要旨 日本への早期導入 小児用医薬品 有用性系加算の論点と質疑】

公開日時 2023/10/23 04:49
中医協薬価専門部会は10月20日、①日本への早期導入、②小児用医薬品、③有用性系加算の論点-が示され、診療・支払各側が意見した。本誌は各側委員の質疑について議事要旨として公開する。

【資料・日本への早期導入に関する論点】(薬-1 16ページ)

<論点>
• 革新的な新薬を日本へ早期に導入することを促すことは、ドラッグ・ラグ/ロスの解消の一つの要素として考えられることから、現行の薬価制度の課題も踏まえ、早期導入に係る評価をどのように考えるか。
• 上記の評価としては、収載時の評価、薬価改定時(新薬創出等加算)の評価、外国価格の取扱いなどの観点が考えられるが、これらの点についてどのように考えるか。

【資料・小児用の医薬品の評価に関する論点】(薬-1 30ページ)

• 小児用の医薬品については、ドラッグロス・ラグの品目の中でも多くを占めており、その解消とともに、小児用の開発を促していく必要性は高いものの、開発の難易度が高く、採算性が低いことが指摘されている。小児用の医薬品開発促進のため、薬事の観点での取組も検討が進められているが、薬価に観点における評価に関して、以下の点について、どのように考えるか。
① 収載時又は改定時における加算について、評価可能な加算の範囲と比較して、実際に評価されている範囲が限られている現状も踏まえ、評価の在り方をどのように考えるか。
② 新薬創出等加算の品目要件では、真に革新性・有用性がある品目に該当するものを対象にしているが、現状では小児用の医薬品であることだけでは対象とならないことについて、どのように考えるか。
③ その他、小児用の医薬品に対する評価のあり方について、どのように考えるか。

【資料・有用性系加算の評価に関する論点】(薬-1 42ページ)

• 補正加算について、現行制度で評価可能な範囲と比較して、実際の加算状況が限られている現状を踏まえると、新薬の革新性・有用性を適切に評価し、イノベーションを推進していく観点から、補正加算のあり方についてどのように考えるか。
• 補正加算は、加算率の定量化のためにポイント算出による評価を行っているが、このような評価の策定時には想定していなかった評価方法等が生じていることも踏まえると、新たな評価の観点の追加や定量的な評価方法の改善など、評価のあり方を見なすことについてどのように考えるか。
• これらを検討するにあたり、研究班(適切な医薬品開発環境・安定供給及び流通環境の維持・向上に関する研究)でとりまとめられる内容も踏まえて議論してはどうか。



安川部会長:ただいまの事務局説明についてご意見ご質問ございましたらお願いいたします。長島委員からお願いいたします。

長島委員:はい、ありがとうございます。各論点についてコメントいたします。まず資料16ページ「日本への早期導入に関する論点」についてです。革新性が高い医薬品について、薬価が原因となり、日本での早期上市が敬遠され、ドラッグ・ラク/ロスが生じているため、早期導入を促進する必要があるということであれば、収載時の評価である先駆加算、あるいは収載後の外国平均価格調整のあり方を検討するのが効果的であるとは思います。ただし、先駆加算については、薬事承認のあり方も含めた検討が必要です。

また、外国平均価格調整については、現行の算定ルールにおいて、収載後の引き上げ調整は、患者負担が急激に増加する恐れがあること、外国と比べて低い価格であっても、既に国内での販売が実施できているものについて価格を調整する必要性に乏しいことなどを踏まえ、行わないとされている趣旨を逸脱してしまう懸念もあります。

そうしたことも踏まえながら、早期導入に関わる課題をどのように捉えるのか。新薬の評価に関する他の論点も踏まえながら、全体的な視点から検討すべきと考えます。

二つ目。資料30ページの「小児用の医薬品の評価に関する論点」についてです。薬価算定組織の意見も踏まえると、薬事の方で検討中である小児用医薬品の開発促進策と歩調を合わせることの必要性には賛同いたします。欧州の制度では、承認後の適応拡大を想定した制度となっており、日本においても、小児の対応は、既承認薬の適応追加、つまり薬事の一変承認を行うケースが相当数あることが見込まれます。したがって、新薬創出等加算とは別に、現行の加算とともに、全体的に考える方が望ましいのではないでしょうか。

最後に、資料42ページの「有用性系加算の評価に関する論点」についてです。有用性加算については、現在のポイント制が最近の創薬モダリティの変化を含めた医薬品の多面的な価値評価に十分に対応できていないとすれば、研究班からの具体的な提案に基づいて、その妥当性を検討する必要があると考えます。

その際には、これまで有用性加算で評価されてきた臨床上有用な新規作用機序を有すること、類似薬または既存治療と比較して高い有効性、安全性を有することが客観的に示されていること、対象となる疾病または負傷の治療方法の改善が客観的に示されていること―といった評価軸と新たな評価軸との整合性に十分配慮しながら、言わずもがなではありますが、有用性の視点を堅持した上で検討すべきであります。

なお、資料41ページの「安定供給に関する検討」につきましては、現在の混乱期の状況で研究し、制度設計すると、本来あるべき安定供給状態と齟齬が生じる恐れがありますので、この点を十分踏まえて、研究成果の応用については慎重に検討するべきと考えます。私からは以上です。

安川部会長:はい、ありがとうございました。他にいかがでしょうか。森委員お願いします。

森委員:はい、ありがとうございます。まずは日本への早期導入に関する論点(資料16ページ)について発言させていただきます。業界団体からの要望にもある通り、先駆的医薬品は指定基準が厳しく、さらに先駆加算の適用実績は、全て加算率が下限の10%と限定的であるため、このあたりはインセンティブとして機能するように新たな加算を設けるなどの見直しはあり得ると考えますが、単に早ければどのような新薬でも評価する価値があるのかは疑問ですので、一定の要件を課すことが必要と思います。

また、収載後の外国平均価格調整における引き上げの適用については、国内の上市を優先して行った企業が、結果として不利とならないような対応の一つと考えられますが、薬価が大きく引き上がると、臨床現場への影響も大きいことから、もし引き上げを適用する場合は、まずは限定的な範囲に適用して様子を見るなど、慎重に検討すべきものと考えます。

このようなケースになる医薬品はどれくらい出てくるのか、相場観がわかれば(事務局から)教えていただきたいというふうに思います。

次に、小児用の医薬品の評価(資料30ページ)についてですが、小児用医薬品の開発は、対象患者数、年齢数に応じた組み入れが必要になること、同意取得等に小児特有の配慮を要するなどの課題があり、なかなか開発が進まないと言われています。小児の治療が安心、安全に行えるように、医薬品の開発を促進、評価するための配慮が必要と考えます。

小児用の医薬品開発促進は、ドラッグ・ラグ/ロスの解消の観点からも非常に重要なもので進めていくべきものと認識しています。その上で、小児用の医薬品の評価に関する論点の「①」(収載時又は改定時における加算について、評価可能な加算の範囲と比較して、実際に評価されている範囲が限られている現状も踏まえ、評価の在り方をどのように考えるか)についてですが、実際に評価されている範囲が限られていることから、もう少し広い範囲で評価できるように見直していくべきと考えます。

その次の「②」(新薬創出等加算の品目要件では、真に革新性・有用性がある品目に該当するものを対象にしているが、現状では小児用の医薬品であることだけでは対象とならないことについて、どのように考えるか)について新薬創出等加算の品目要件に小児用の医薬品を対象として加えても良いと思います。

「③」(その他、小児用の医薬品に対する評価のあり方について、どのように考えるか)についてですが、開発治験の難しさ、採算等から承認の医薬品の評価全般についてインセンティブが機能するよう見直しを検討する必要があると考えます。

小児に関する個別の論点の意見は以上ですが、このような評価の見直しについて、製薬業界としてどのように捉えているのか、専門委員から意見をいただけるとありがたいと思います。

薬価における評価を充実しても採算が合わないことがある分野だと思いますが、このような評価を充実させることが開発促進につながるということを業界としてもしっかり主張していただけるのであれば、検討の余地があるものと考えます。

小児の薬を持つ患者、家族の方も多いと思いますので、このような方が今後適切な治療が受けられるよう、業界としての姿勢を示していただきたいと思います。

次に、有用性系加算の評価に関する論点(資料42ページ)についてですが、補正加算については加算状況が限られている現状も踏まえると、(資料に)示されている通り、新たな評価の観点での追加や、定量的な評価方法の改善なども適切な形で評価できるようポイント制を見直すとともに、ある程度の柔軟性を持たせる形で見直すことも可能と考えますが、具体的には、三つ目の丸(これらを検討するにあたり、研究班“適切な医薬品開発環境・安定供給及び流通環境の維持・向上に関する研究”でとりまとめられる内容も踏まえて議論してはどうか)に書いているように、研究班でまとめている内容をもとに議論を進めていくことが必要と思います。私からは以上です。

安川部会長:ありがとうございます。森委員からの質問で相場観という発言がございましたけれども、これについて事務局で何か応答することがございましたらお願いいたします。いかがでしょうか?

薬剤管理官:薬剤管理官でございます。ご指摘いただいた外国価格の調整に関して実態がどうなるかというところですが、この辺りの観点も研究班の中で分析をしているというふうに承知しておりますので、全体的な報告をする中で、そういった点に関しての情報も含めて報告させていただければと思っております。以上です。

安川部会長:ありがとうございます。森委員よろしいでしょうか?

森委員:了解しました。

安川部会長:はい、ありがとうございます。他にご意見ありますでしょうか?

森委員:すいません業界の方から小児に関してのご意見をいただいていない。

安川部会長:はい、では、ここでご意見ございましたので専門委員の方で小児を含めた評価のあり方について、このタイミングでご意見ございましたらお願いいたします。

石牟禮専門委員:専門委員の石牟禮でございます。ご質問ありがとうございます。小児用医薬品の開発につきまして今資料にもございましたし、森委員からもご説明ありました通り、強く要請されている一方、成人とは異なる開発の難しさ、あるいはそれによるコストがかかるという状況にございます。企業にとりましては特許期間中の新薬から得られる収益を早期に次の開発へ投資したい。このサイクルを早く回さなければならないという状況において、どうしてもこういった品目の開発優先度が低くなる傾向にございます。

資料にありますように、薬事制度においても開発の効率化という観点も含めて検討が進められていると承知しております。

一方、薬価の方につきましても、評価の拡充で後押ししていただけますと、先ほど申し上げたような企業の状況の中で、企業の意思決定につながるものと期待し、またそのようになると確信しております。以上でございます。

安川部会長:はい、ありがとうございました。森委員よろしいでしょうか?

森委員:小児の開発の難しさというのは十分に理解しています。小児の慢性特定疾患の患者さんは12万人、それから医療的ケア児が3万人いると言われています。そうした患者さんが地域の中で療養を受けるようになってきて、成人用の医薬品では小児に関して用法であった用量の設定がないまま錠剤をつぶしたり、カプセルを外したりということを薬学的観点や製剤学的な知見に基づいて慎重に行っています。今後、小児の治療が安全、安心に行えるよう企業での取り組みをぜひ進めていただきたいというふうに思います。以上です。

安川部会長:はい。他にご意見ありますでしょうか。佐保委員よろしくお願いいたします。

佐保委員:はい、ありがとうございます。私から一点申し上げます。患者の利益につながるイノベーションの促進や、ドラッグ・ラグ/ロスの縮小に向けた検討は必要であります。資料30ページに「小児用医薬品の評価に関する論点」が記載されておりますが、小児用医薬品のドラッグ・ロス/ラグの解消と開発促進の必要性についてはその通りだと考えております。あわせて、薬価だけでなく、政府からの開発支援が求められると考えます。私からは以上です。

安川部会長:ありがとうございます。他にご意見はございませんでしょうか。松本委員お願いいたします。

松本委員:ありがとうございます。まず、今回のテーマであります新薬の評価全般に言えることでございますけども、加算であるとか価格調整にはそれぞれ当初考えた趣旨、目的等がございますので、加算の対象になりにくい、あるいは価格が低いという理由で、即、要件の見直し、あるいは緩和などにつながるものではないというふうにまず考えております。

一方で技術革新などによって状況が変わってきたのであれば、時代に合わせた評価のあり方を見直すということは、イノベーションを適切に評価する観点から必要なことだというふうに考えております。

それでは各論点に沿ってコメントいたします。資料16ページ「日本への早期導入に関する論点」にございます新薬の早期導入についてですが、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスを解消するために重要な課題だと認識しております。

そういう観点で資料14ページ「ドラッグ・ラグの試算」を拝見しますと、開発ラグが短縮されており、企業が努力されているということは十分に理解ができます。更なる早期の開発を促すために何が必要かということについては、資料15ページ「厚生労働行政推進調査事業費補助金における研究」にあります研究班の報告を踏まえて検討するということが考えられます。

一方で先駆加算については薬事における先駆的医薬品の指定が条件となっており、引き続き薬事制度と整合性が取れていることが不可欠だというのが率直な感想でございます。また収載後の外国平均価格調整については他の委員からもコメントがございましたけども、既に使われて医薬品の価格が外国の方が高いという理由だけで途中から値が上がるということにつきましては患者の理解は得られにくいものだというふうに考えます。

続きまして資料30ページの「小児用の医薬品の評価に関する論点」についてです。特に開発を促進する必要性が高い分野であると認識しております。資料23ページ(小児用の医薬品に関する加算の実績)を見ますと5%の加算が多いことは事実ですけども、これも先を述べましたけども、単に加算が小さいから要件を見直すということには少し理解に苦しむところでございます。ただし、評価の視点が欠けているのであれば、新たな考え方を議論する余地は十分にあると考えられます。先ほどの先駆加算と同様に、薬事制度と連動した評価をすることも考えられると思います。

最後に42ページ「有用性系加算の評価に関する論点」についてです。範囲が狭いということではなく、当初想定していなかった革新性、有用性を適切に評価できていないということであれば、イノベーションの重要性は十分理解できますので議論すべきだろうと考えます。研究班で取りまとめる内容を踏まえ議論することに異論はございません。ただその場合も一定の前提を置いたシミュレーションなども必要だというふうに申し上げたいと思います。私からは以上です。

安川部会長:はい、ありがとうございました。他にいかがでしょうか。眞田委員お願いします。

眞田委員:はい、ありがとうございます。私の方からも簡単にコメントさせていただきたいと思います。まず、最初の論点にある日本への早期導入についてでありますけれども、ドラッグ・ロス/ラグの解消に向けて企業へのインセンティブを強化する観点からは、早期導入を図る企業であるとか、医薬品の評価について工夫の余地がないか検討すべきだろうというふうに考えます。その際に既存の評価との重複等については十分配慮する必要があろうかというふうに思います。

それから3点目の論点の有用性系加算の評価に関してですが、前回7月の議論の際にも、現在の新薬の状況を踏まえて有用性加算において評価される項目が含まれていない場合には、そのエビデンスやデータを確認して見直すべきというふうに発言させていただいたところであります。

今後の研究班での取りまとめの報告を受けて、必要な見直しについては検討すべきだろうというふうに考えます。私からは以上でございます。

安川部会長:ありがとうございました。他にいかがでしょうか。もし追加の質問、意見がないようでしたら、本件に係る質疑はこのあたりとして、今後事務局において本日いただきましたいくつかのご意見を踏まえて、対応いただくようにお願いしたいと思います。本日の議題は以上でございます。次回の日程につきましては追って事務局より連絡をいたしますので、よろしくお願いいたします。それでは本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたしますどうもありがとうございました。


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