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中医協・薬価専門部会 先駆加算・小児医薬品のインセンティブで診療・支払各側「薬事制度と整合性を」

公開日時 2023/10/23 04:50
中医協薬価専門部会は10月20日、ドラッグ・ラグ/ロス解消に向けて、日本に早期導入した際の評価としての先駆加算や、小児用医薬品開発の薬価上のインセンティブについて議論した。いずれの加算も薬事制度と関連した制度設計となっており、診療・支払各側から、「薬事制度と整合性が取れていることが不可欠」との声があがった。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「加算の対象になりにくい、あるいは価格が低いという理由で、即、要件の見直し、あるいは緩和などにつながるものではない」としたうえで、「一方で技術革新などによって状況が変わってきたのであれば、時代に合わせた評価のあり方を見直すということは、イノベーションを適切に評価する観点から必要なことだ」との認識を示した。

◎先駆加算 診療・支払各側「薬事承認のあり方含めた検討を」

日本への早期導入した場合の評価としては、世界に先駆けて開発した先駆的医薬品として指定されたものについて、収載時の評価として“先駆加算”がある。ただ、先駆的医薬品の指定要件が、“世界に先駆けて”日本での開発・申請となっていることから、製薬業界は指定要件が厳しいと指摘。欧米に遅れることなく上市される品目に対して先駆加算に準じた補正加算を新設することなどを要望している。

診療・支払各側から、「先駆加算については、薬事承認のあり方も含めた検討が必要」(診療側・長島公之委員/日本医師会常任理事)、「薬事における先駆的医薬品の指定が条件となっており、引き続き薬事制度と整合性が取れていることが不可欠」(支払側・松本真人委員/健康保険組合連合会理事)と薬事制度との整合性を求める声があがった。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「インセンティブとして機能するように新たな加算を設けるなどの見直しはあり得る」としたうえで、「単に早ければどのような新薬でも評価する価値があるのかは疑問。一定の要件を課すことが必要」との見解を示した。

◎外国平均価格調整による収載後の薬価引上げ 診療・支払各側 患者負担の観点から慎重論

製薬業界は日本での収載時の薬価が欧米よりも低いとして、日本で先に上市された場合に収載後に外国平均価格調整による引上げの適用を要望している。

これに対しては、診療・支払各側から、患者負担の観点から慎重論があがった。診療側の長島委員は、「現行の算定ルールにおいて、収載後の引き上げ調整は、患者負担が急激に増加する恐れがあること、外国と比べて低い価格であっても、既に国内での販売が実施できているものについて価格を調整する必要性に乏しいことなどを踏まえ、“行わない”とされている(現行制度の)趣旨を逸脱してしまう懸念もある」と指摘。支払側の松本委員は、「すでに使われて医薬品の価格が外国の方が高いという理由だけで途中から値が上がるということにつきましては患者の理解は得られにくい」と指摘した。

診療側の森委員は、「国内の上市を優先して行った企業が、結果として不利とならないような対応の一つと考えられる」と理解を示したうえで、「薬価が大きく引き上がると、臨床現場への影響も大きいことから、もし引き上げを適用する場合は、まずは限定的な範囲に適用して様子を見るなど、慎重に検討すべき」と述べた。

◎小児加算 診療・支払各側「薬事と連動した評価を」

小児用医薬品については、開発の難易度が高く、採算性が低いことが指摘されている。厚労省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」で、薬事制度において成人と同時に小児用の開発計画を促す仕組みの導入や、小児用の開発での優先度を明確化して公表する方向性について了承されている。一方で、インセンティブのあり方についても議論となっていた。薬価上では薬価収載時、改定時の加算で評価されているが、大半の品目で下限の5%が適用されているほか、小児用の医薬品というだけでは新薬創出等加算の品目要件の対象となっていない状況にある。

診療側の長島委員は、「薬事の検討中である小児用医薬品の開発促進策と歩調を合わせることの必要性には賛同する」と表明。小児用医薬品については適応拡大で承認を取得するケースが多いと指摘し、「新薬創出等加算とは別に、現行の小児加算とともに、全体的に考える方が望ましいのではないか」と述べた。支払側の松本委員は、「単に加算が小さいから要件を見直すということには少し理解に苦しむ」としたうえで、「ただし、評価の視点が欠けているのであれば、新たな考え方を議論する余地は十分にあると考える。薬事制度と連動した評価をすることも考えられると思う」と述べた。

◎診療側・森委員「評価充実が開発促進につながると業界もしっかり主張を」

一方、診療側の森委員は、「実際に評価されている範囲が限られていることから、もう少し広い範囲で評価できるように見直していくべき」、「新薬創出等加算の品目要件に小児用の医薬品を対象として加えても良いと思う」など、小児用医薬品開発のインセンティブを強調した。「薬価における評価を充実しても採算が合わないことがある分野だと思うが、このような評価を充実させることが開発促進につながるということを業界としてもしっかり主張していただけるのであれば、検討の余地があるものと考える」と指摘。「小児の薬を持つ患者、家族の方も多い。このような方が今後適切な治療が受けられるよう、業界としての姿勢を示していただきたい」と製薬業界に対して、意見を求める場面もあった。

◎石牟禮専門委員 薬価上の評価で「企業の意思決定」後押しを

業界代表の石牟禮武専門委員は、「企業にとっては、特許期間中の新薬から得られる収益を早期に次の開発へ投資したい。このサイクルを早く回さなければならないという状況において、どうしても開発優先度が低くなる傾向にある」と説明。薬事制度の見直しに加え、「薬価の方につきましても、評価の拡充で後押ししていただけると、企業の意思決定につながるものと期待し、またそのようになると確信している」と述べた。

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