「MR」のDTLインパクト “医師の働き方改革”の影響みられず 「ネット」は増加傾向
公開日時 2024/10/02 04:52
「MR」によるディテールインパクトに、医師の働き方改革の影響はほとんど出ていない模様だ。働き方改革が施行された4月以降の医薬品情報のチャネル別ディテールインパクト(以下、DTL数)を前年同月と比較したところ、「MR」のDTL数は前年割れする月がある一方、増加した月もあり、懸念されていたMRのDTL数の落ち込みという状況は明確にはみられなかった。ただ、「インターネット」(以下、ネット)や「Web講演会」のDTL数は病院、開業医の両市場とも増加。特に病院市場では「ネット」のDTL数は「MR」に肉薄し、「ネット」が「MR」を上回る月もあった。コロナ禍を経て医師の情報収集手段としてのデジタル利用が定着する中、働き方改革によってデジタル利用がより増えている可能性がありそうだ。
ミクス編集部は、医師の働き方改革に伴う情報活動とそのインパクトを探るため、インテージヘルスケアの調査データ「Impact Track」を用いて分析した。同データは医師約4000人(病院勤務医約2500人、開業医約1500人)に毎日、印象に残った製品と、その情報源をチェックしてもらい、医師の印象に残ったチャネル別の企業活動を集計するもの。例えばMRからの情報が印象に残った場合、“MRチャネルで1DTL”として積み上げ拡大推計する。
◎「MR」のDTL 4月は前年同月比107% 5月は97% 6月は92% 7月は105%
4月以降の医師の働き方改革の影響をみるため、「MR」「ネット」「Web講演会」の主要3チャネルについて、各チャネルの月別のDTL数を前年同月と比較した。
「MR」のDTL数を見てみる。前年同月を100%とすると、24年1月は104%(病院:107%、開業医101%)、2月は104%(105%、102%)、3月は93%(94%、92%)、4月は107%(109%、104%)、5月は97%(96%、98%)、6月は92%(95%、90%)、7月は105%(105%、106%)、8月は86%(87%、85%)――と前年同月と比べて増減を繰り返し、必ずしも4月以降にDTL数が落ちたとはいえなさそうだ。
なお、8月の大幅な落ち込みは、お盆休みの曜日の関係で前年よりも長い休みとなり、企業側のMR活動なども少なかったためとみられる。
◎4月以降の「ネット」DTL 前年同月比で毎月伸長
一方、「ネット」のDTL数は4月以降、前年同月比で毎月伸長し、「Web講演会」は8月を除く4~7月の各月で5%以上伸びたことが確認できた。
「ネット」では、4月が117%(117%、116%)、5月は104%(105%、101%)、6月は107%(107%、107%)、7月は115%(115%、113%)、8月は101%(102%、100%)――で、病院市場、開業医市場ともにネット利用が伸長した。「Web講演会」は特に開業医市場で伸びが大きく、同市場のDTL数は4月が111%、5月は110%、6月は109%、7月は113%、8月は97%――だった。
新型コロナが5類感染症に移行し、社会経済活動が回復した23年5月から24年3月までの間は、「ネット」や「Web講演会」のDTL数が前年割れする月もあるなか、24年4月以降の「ネット」や「Web講演会」のDTL数の伸び方は、働き方改革を背景としたデジタル利用の増加を示唆するものといえそうで、今後注視していく必要がありそうだ。
◎病院市場の「ネット」DTL 24年1月、4月、8月は「MR」超える
最後に、アフターコロナにおける医師の情報収集スタイルのニューノーマルを確認するため、コロナ前の20年1月を100%(基準)に、チャネル別DTL数を見てみる。「MR」のDTL数は23年5月の5類移行後も、病院市場は概ね60%台、開業医市場は概ね80%台で固定しており、コロナ前に戻る様子はみられなかった。
これに対して「ネット」や「Web講演会」は変わらず活況で、特に病院市場の「ネット」のDTL数は、24年に入ってから「MR」とほぼ並び、1月、5月、8月は「MR」のDTL数を僅差ながら超えた。MRにはデジタルチャネルによる医師への情報インプットの状況を確認しつつ、よりきめ細かく顧客ニーズを把握して情報提供する活動がこれまで以上に求められそうだ。
文末の「関連ファイル」に、全市場、病院市場、開業医市場の主要チャネル別の医師の印象に残ったDTL数(前年同月との比較)と、病院市場のDTL数の月次推移の資料を掲載しました(会員のみダウンロードできます。無料トライアルはこちら)。なお、ミクス10月号(10月1日発売予定)では、これら以外のデータも掲載しています(ミクスOnlineの掲載ページはこちら)。