ダイト松森CEO 新・コンソーシアム構想6社参画に手応え、日本ケミファも 「Forecast Accuracy改善に期待」
公開日時 2025/07/18 04:51
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ダイトの松森浩士代表取締役社長兼CEOは7月17日に開いた決算説明会で、“新・コンソーシアム構想”について、「現在、我々を含めて6社が参加している。複数の会社が興味を示していて、着々とこの枠組みが進むと考えている」と手応えを語った。この枠組みには、辰巳化学がすでに参画を表明しているが、日本ケミファが参画したことも明らかにした。新・コンソーシアム構想ではまずは品目統合を目指すが、「製品の需要予測についての精度を上げる、“Forecast Accuracy”の改善についても、この枠組みで話し合うことも副次的効果として期待している」と将来展望も語った。
◎「品目統合を加速させる川の流れを作るのがコンセプト」 ウィンウィンの品目で
“新・コンソーシアム構想”はMeiji Seikaファルマとダイトが中心になり、「品目統合を加速させる川の流れを作るのがコンセプト」と松森CEOは話す。新・コンソーシアム構想を「品目統合アライアンスと置き換えていただいても構わない。すごく強い縛りがあるわけではなくて、品目統合に関して皆さんと話し合っていくという仕組みで、工場の統廃合を話しているということではない」と説明する。まずは、品目ごとに製造所を集約する考えで、「品目ごとにどこの工場で請け負うか、うちの工場でこれをやめるけれども、お宅で作ってくださいというようなことの話し合いを効率よく回すという仕組み」と続けた。
品目については、Meiji Seikaファルマとダイト、さらにもう1社が加わり、製品を突合して製造所の集約を検討した結果、「ある程度の数が出てきた」と説明。「この流れに則って、ウィンウィンの品目だけ、まず合意をしていく。少し様子を見る製品は、もう議論しないで残しておく」形をとるといい、あくまで各社の合意形成の重要性を強調する。この枠組みに参加する企業が増えるにつれ、「選択肢が増え、川の流れを加速していくという手法」と強調した。
◎後発品の企業指標公表などで「お尻に火がついている」も相対の話し合いでは進まず
新・コンソーシアム構想にダイトが賛同した背景には、毎年薬価改定や長期収載品の選定療養の導入、OTC類似薬の保険給付の見直しなど、ジェネリックをめぐる環境変化がある。さらには、医薬品の供給不安が長引くなかで政府はジェネリックの“少量多品目構造”の改善に向けた施策を打つなかで、薬価削除プロセスの簡素化や、後発医薬品製造基盤整備基金の新設など、様々な施策を打っている。一方で、少量多品目構造を指標の一つとする後発品の企業指標が薬価改定に反映され、26年度から各社の企業区分が公表されることとなっている。松森CEOは、「かなり厳しい施策がアナウンスされている。各社どんどんこれに向けて品目の整理、統合していかなければいけないとう、お尻に火がついている状況」と説明する。
こうしたなかで、少量多品目構造を抱えるダイトも、「相対で色々な会社と話をしてきた」というが、「なかなか相対では進まないと実感している。独禁法がクリアになっても10社、15社集まって品目のやり取りをするといってもまとまらない。そのジレンマで皆さんが相対でやっているという流れの中で、Meiji Seikaとダイトで品目統合を加速させる川の流れを作るというのが新・コンソーシアム構想」と説明した。
◎今秋に中間報告へ「品目集約による生産の効率化発表したい」 体制整備に後発品基金活用も
松森CEOは、秋口には新・コンソーシアム構想の成果について中間報告する考えも表明した。「全体の会社の中でどれだけの品目が集約されるか、それがもたらす効率性について、いくつかメトリクスを引いて、10社なら15社で、これだけのあの生産の効率が上がりましたということを発表したいと考えている」と意欲をみせた。発表を秋口とした背景には、新・コンソーシアム構想に参画する企業が体制整備に際し、後発医薬品製造基盤整備基金など政府の支援を活用することも視野に入れているため。「設備投資に対する補助金の準備のタイミングからして、秋口に実行したい」と強調した。
◎委託側の需要予測精度向上で安定供給実現へ
品目統合の先には、屋号の統一による効率化向上に加え、「その先には話し合いの中で化学変化が起きて、様々なM&Aに近いような話も起きるかもしれない、ということも想定している」と見通した。品目統合を進めるなかで、それぞれの工場に監査に入るケースも増え、「将来的には、信頼性保証の基準をスタンダライゼーション(標準化)しながら、皆さんと協力して効率を上げることができないか、ということも視野に入れている」と述べた。
さらに、新・コンソーシアム構想を通じた“Forecast Accuracy”改善にも期待を寄せる。各社の営業部門が行う製品の需要予測が外れ、大量に製品を製造してしまい、使用期限内に消費できずに廃棄することも少なからずあるという。特に、CMOでは「委託側の数字をそのまま信じて、予測に基づいて原薬を買い、生産をする。この精度が落ち、急に生産量を減らしたり、たくさん作ったりということがしょっちゅうある。その度に工場の生産計画をシフトしながら多くの場合、無理をして原薬を捨てたり、製剤を捨てたりということも起きている。ダイトで起きているということは日本中で起きている」と指摘。「特に委受託の関係において、委託する方のセールスマーケティングの需要予測の精度を上げるということも、日本の安定供給においては極めて重要だ。限られた今の生産の設備を日本の中で最大限に効率化するためには、工場をどんどん建て増しするという案もあるが、(需要予測の)精度を上げるということは、重要だと訴えている」と述べた。「国を挙げて需要予測を向上させることを今年、訴えていきたい」とも話した。
◎25年5月期は増収減益 26年度は下方修正も2桁増益「選定療養の影響は期待外れ」
同社の2025年5月期(24年度)決算は売上高が前期比8.0%増の506億4000万円、売上総利益が前期比12.2%減の86億3000万円、営業利益が32.7 %減の26億1900万円と、増収減益だった。26年5月期(25年度)業績は売上高3.7%増の525億円、営業利益は14.5%増の30億円の増収増益と見込む。
25年5月期の売上高を4月に下方修正し、これにあわせて26年度、27年度の計画も下方修正した。松森CEOは、「選定療養は、我々ジェネリックにすごくプラスに出ると思ったが、長期収載品の受託や原薬も減り、かなり期待外れの部分があった。また、中国での計画の遅れ、第一製剤棟での一部遅れ、国内での新製品の上市中断などもあり、色々加味して数字を変更した」と説明した。