日本ケミファ・山口社長 「30億錠体制が視野に入った」 業界再編に「踏み込んだ連携や提携したい」
公開日時 2025/05/30 04:51

日本ケミファの山口一城代表取締役社長は5月29日、専門誌・紙を対象とした記者懇談会で、つくば工場3号棟(茨城県筑西市)などで進める安定供給体制の強化について、「(国内外3工場で)将来的に30億錠近くの増産体制が視野に入ってきた」と期待感を示した。後発品の安定供給体制の確保が求められる中、改正薬機法で後発医薬品製造基盤整備基金が盛り込まれるなど、業界再編に向けた環境整備が進む。山口社長は「既に連携している企業と製造の委受託などを行ってきたが、もう少し踏み込んだ連携や提携を今後はしていきたい」と述べた。
同社では、ジェネリック医薬品の製造や既存の1号棟の製造品目移管などを目的に、子会社の日本薬品工業つくば工場3号棟の新設備実装工事を進めていた。24年8月に工事は完了し、バリデーションや試作などを経て、25年度第3四半期から順次製品出荷を始める予定。加えてベトナム工場でも増産に向けた対応を進めており、現状3工場で約24億錠の生産能力について、将来的に約30億錠を目指す方針。
また、つくば工場3号棟は全面免震構造を有しており、「生産数量の増量だけでなく、災害対応や安定供給における責務も果たすことができる」と述べた。
◎AG開発 「今後も競争優位性のある品目の継続上市目指す」
ジェネリック医薬品事業では、同社初のオーソライズド・ジェネリック(AG)として、2型糖尿病治療薬・アマリール錠のAGであるグリメピリド錠「NC」の製造販売承認を取得した。山口社長は「今後も競争優位性のある品目の継続的な上市を目指していく」と強調。先発品の動向や選定療養の影響を注視しつつ「AGは市場認知がかなりある。マーケット変化を留意した上で取り扱いを考えていきたい」と述べた。
海外へも積極的に展開しており、25年3月末現在でベトナム、香港を含む中国、韓国、タイの4か国で6品目を販売中。さらに27年度までに5カ国14品目の販売を目標に掲げる。工場もあるベトナムでは特に力を入れる考えで、「特にベトナムマーケットを開拓していきたい。すでに2品目を販売しており、30年度までに10品目ほどの承認を取り、販売していきたい」と述べた。
◎順調なドロップスクリーン展開 対抗品なく「かなりの事業スケール」に期待
臨床検査薬事業の主力であるアレルギースクリーニング機器・試薬「ドロップスクリーン」は、国内設置台数が累計1400台を超え、25年度には2000台を目指す方針を掲げる。耳鼻咽喉科や小児科、眼科などの開業医を対象に順調な展開を進めており、「対抗品がなく、どこがマックスなのかも推し測れない。5000軒くらいは手応えとしてある印象を持っており、今後はかなりの事業スケールになっていく」と自信をのぞかせた。
ドロップスクリーンは測定時間を短縮する次世代機について、来年度の展開を目指して開発が進められている。また、海外での発売を見据えて、欧州での事業展開に向けたマーケティング調査に着手していると明らかにした。
◎3つの事業ドメイン 「今後は臨床検査薬や新薬へのウエイト増をイメージ」
同社では経営戦略として、ジェネリック医薬品事業、臨床検査薬事業、新薬事業の3つの事業ドメインを掲げている。新薬事業では、抗うつ・抗不安薬として開発中のオピオイドδ受容体作動薬・NC-2800(開発コード)がフェーズ2a試験に向けた準備を進めており、「結果としてフェーズ2aが終了する28年度以降に新薬事業の収益貢献がスタートしていく想定」と説明。その上で、今後の事業戦略について「ジェネリック医薬品事業をしっかりと運営していく前提で、臨床検査薬事業や新薬事業にウエイトが少しずつ高まっていくイメージを描いている」との見通しを示した。