21価肺炎球菌ワクチン・キャップバックスなど新薬3製品が承認へ 薬事審第二部会が了承
公開日時 2025/07/25 04:50
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は7月24日、MSDの21価肺炎球菌結合型ワクチン・キャップバックス筋注など新薬3製品の承認の可否を審議し、承認することを了承した。このほかの2製品は、MSI-Highを有する結腸・直腸がんに対するオプジーボとヤーボイで、これまでのオプジーボ単剤療法あるいは併用療法での2次治療以降での使用に加え、今回、併用療法について1次治療でも使えるようにすることが了承された。
報告品目は3製品で、この中にエンハーツのHR陽性かつHER2低発現又は超低発現乳がんの適応追加がある。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg、同点滴静注120mg、同点滴静注240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
▽ヤーボイ点滴静注液20mg、同点滴静注液50mg(イピリムマブ(遺伝子組換え)、ブリストル・マイヤーズスクイブ):「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体。MSI-Highを有する結腸・直腸がんに対するオプジーボとヤーボイ併用療法について、現在は、がん化学療法後に増悪した患者(2次治療以降)に限定されている。今回、国際共同第3相CheckMate-8HW試験結果に基づき、併用療法による1次治療の適応を追加することが了承された。
海外では25年4月時点で、MSI-Highを有する結腸・直腸がんの1次治療に対するオプジーボとヤーボイ併用療法は6の国又は地域で承認されている。
▽キャップバックス筋注シリンジ(21価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)、MSD):「高齢者又は肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる成人における肺炎球菌による感染症の予防」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
21種類の肺炎球菌血清型に対応し、成人に特化して設計された21価肺炎球菌結合型ワクチン。成人の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の原因として多くみられる21種類(3、6A、7F、8、9N、10A、11A、12F、15A、15C、16F、17F、19A、20A、22F、23A、23B、24F、31、33F及び35B)の肺炎球菌血清型に対応しており、そのうち8種類(15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35B)は、これまでに承認されている肺炎球菌ワクチンが対応していない、本剤固有の血清型となる。
用法・用量は「1回0.5mLを筋肉内に注射する」。
海外では24年6月に米国で、25年3月に欧州で承認されている。
米国疾病予防管理センター(CDC)がまとめた2018~2021年のデータによると、本剤固有の8種類の血清型は、50歳以上の成人におけるIPDの約27%、65歳以上の成人におけるIPDの約30%の原因になっており、本剤は従来に比べてさらに広くIPDを予防することが期待できる。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽エンハーツ点滴静注用100mg(トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共):「ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は超低発現の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余期間(令和10年3月24日まで)。
抗HER2抗体薬物複合体(ADC)。承認申請は、HR陽性かつHER2低発現(HER2超低発現を含む)の化学療法未治療の転移再発乳がん患者を対象としたグローバル第3相DESTINY-Breast06試験の結果に基づくもの。今回追加する適応の用法・用量は、既承認の▽化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん、▽化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳がん――と同様となる。
海外では、HER2低発現又は超低発現の手術不能又は再発乳がんに係る適応について、米国で25年1月、欧州で同年4月に承認されている。
▽シルガード9水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)、MSD):「ヒトパピローマウイルス6、11、16、18、31、33、45、52及び58型の感染に起因する以下の疾患の予防・肛門がん(扁平上皮がん)及びその前駆病変(肛門上皮内腫瘍(AIN)1、2及び3)」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は4年。
9価HPVワクチン。今回、肛門がんと尖圭コンジローマの予防のための男性への接種を可能にすること(以下、男性適応)、女性について新たに肛門がんの適応を追加すること――が了承された。
用法・用量は、男性適応及び女性の肛門がんの新適応ともに、既承認の尖圭コンジローマや子宮頸がんと同じ。ただし、用法・用量の「9歳以上の女性」や「9歳以上15歳未満の女性」との現在の記載は、男性適応の追加により、「9歳以上の者」、「9歳以上15歳未満の者」に変更される。
今回の男性適応及び肛門がんの適応追加により、同社の4価HPVワクチンのガーダシルと適応が一致することになる。
海外でシルガード9の男性適応は25年4月時点で、99の国又は地域で承認されている。
▽カルケンス錠100mg(アカラブルチニブマレイン酸塩水和物、アストラゼネカ):「マントル細胞リンパ腫」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余期間(令和11年1月21日まで)
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤。今回追加するマントル細胞リンパ腫(MCL)に対する用法・用量は、▽未治療の場合はベンダムスチン及びリツキシマブとの3剤併用、▽再発・難治性の場合は単剤――で使用し、未治療、再発・難治性ともに「通常、成人にはアカラブルチニブとして1回100mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。
現在の適応は「慢性リンパ性白血病」。
海外では25年5月時点で、MCLに係る効能・効果で40以上の国又は地域で承認されている。米国で25年1月、欧州で同年5月にMCL1次治療の追加承認を取得している。国内でBTK阻害剤としては、イムブルビカ(イブルチニブ)がMCL1次治療の適応を持っている。