沢井製薬 ニトロソアミン類に特化「神戸分析研究センター」公開 リスク評価や生成抑制の独自技術も
公開日時 2025/08/01 04:50

沢井製薬は7月31日、発がん性物質であるニトロソアミン類の分析研究に特化した「神戸分析研究センター」(神戸市中央区)をメディアに公開した。説明会では、ニトロソアミン分析に関連して、リスク評価や生成抑制などの独自技術も紹介。横田祥士取締役専務執行役員研究開発本部長は、「800品目の既存製品や多く開発品で課題解決しなくてはならない中で、ニトロソアミンの研究に特化した施設を開設できたことには非常に意義がある」と強調した。
ニトロソアミンはアミン窒素にニトロソ基が付加した構造を持つ化合物の総称。ICH M7ガイドラインでは、極めて強い発がん性を示す可能性のあるグループに分類されている。国内外での医薬品からの検出を受けて、厚生労働省は2021年10月、医薬品へのニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検を製薬各社に要請し、リスク低減措置の実施を求めた。また、厚労省は7月24日にも新たな通知を発出し、8月1日の期限までに対応が完了しない場合の報告要請や、自主点検後の対応方針を示していた。
◎分析研究拠点の開設で測定技術を活用・蓄積 フレキシブル対応や委託費削減にも寄与
沢井製薬では厚労省の自主点検通知を受けて対応を本格化させ、24年12月には、神戸分析研究センターを開設した。複数台のニトロソアミン分析用装置を導入したセンターの開設により、これまでの開発や品質設計で培われてきた測定技術の活用や蓄積、社内リソースの集約・効率化を図った。さらに、社内に専門部署を設けたことで、フレキシブルなスケジュール対応や外部委託費の削減にもつながっているという。物性研究部の三村尚志部長は「自社で技術を蓄積していくことでより正確なデータ解析につなげていきたい」と述べた。
◎リスク評価技術「NOXANA」と生成抑制の添加物「SUPRENA」 2つの独自技術も紹介
ニトロソアミンに関わる2つの技術も独自に開発した。このうち、製剤のリスク評価をする技術「NOXANA(ノクサナ)」は、原料中のニトロソ化に関与するNOx(窒素酸化物)を定量化し、製剤中のニトロソアミンの生成量を推定する。推定値を基に添加物の選定や製造法の変更を行うことで、生成量を低減した製剤設計につなげる。ニトロソアミンの生成を抑える添加剤やその選定技術である「SUPRENA(サプレナ)」は、約60種類の性質の異なる添加物をスクリーニングし、抑制効果を示す添加剤を約10種類見出した。飲みやすさなどの品質を保ちながら、ニトロソアミンの生成を抑えた製剤設計が期待されているという。
◎自主点検の進捗状況は非開示 「当局と連携して進める」
沢井製薬は厚労省通知に基づく自主点検について、現段階での進捗状況は非開示とし、「通知に従い、当局と連携をとって進めていく」とした。同社は、原薬や原材料、包材メーカーへのアンケート調査と、製品の実測の2段階でニトロソアミンの混入リスク評価を実施している。