エスエス製薬 企業向けメンタリングプログラムの提供開始 女性のマインドセットに訴え
公開日時 2025/09/19 04:52

エスエス製薬は企業向けメンタリングプログラム「BeliEVE Mentoring Program」の提供を開始した。プログラムはメンタリング専用マニュアルや研修、効果測定などがセット。活用により、女性が自らのキャリアや可能性を考える機会としてもらいたい考え。マーケティング統括本部長の元島陽子氏は8月28日に都内で開いたカンファレンスで、「女性たちのマインドセットに大きく影響するのがロールモデル。少ない場合は、相談できる人を見つけることがとても大変だ」とプログラムのメリットを強調した。同社は、OTC医薬品・EVEの事業を通じて培った経験を活かし、働く女性が直面する課題解決を目指す。
プログラムは、メンタリング支援を手がけるMentor Forの監修により開発された。社会人10年目以下の女性をメインターゲットとし、メンター・メンティーそれぞれにマニュアルを用意。女性社員が抱えやすい課題をテーマにした全6回構成となっており、「段階を踏んで核心に迫ることができるようなステップ」(元島氏)で設計されている。すでにウエルシア薬局で「女性店長比率向上プロジェクト」として導入され、89.5%という高い満足度を得たという。
◎入社年次が上がるにつれロールモデル少ない傾向
背景には、女性がキャリアを築く上での課題がある。同社の調査では、家事や育児の負担が女性に偏っているほか、生理休暇などの制度利用に後ろめたさを抱くケースも少なくないことが分かった。さらに、入社年次が上がるにつれ、ロールモデルとなる上司や先輩が少なくなる傾向も明らかになった。
元島本部長は、海外と比較してメンタリング文化が浸透していない点にも触れ、「女性個人の自分自身の思いにきっかけを与えたい。たくさんの他の企業の皆様、一般の生活者、最終的には行政の力も借りながら、女性を含めた全ての方が過ごしやすい場所にしていきたい」と社会を変えていくことへの意欲を示した。
◎女性専用メンター制度の効果指摘する声も 経営陣の空気醸成

この日のカンファレンスは、女性活躍推進法の成立から10年となるのに合わせて実施された。企業の取り組みなどをテーマにしたトークセッションでは、女性管理職比率が96.9%という東横インの人財開発部の新井小百合部長が登壇。新人支配人へのフォローアップ体制について言及し、「24時間、何かあったら自分が聞きやすい人に相談してくださいと話している。孤独にさせないことが、続けられる大きな要因になっていると思う」と明かした。
一方、総合職・一般職という区分を2012年に撤廃して以降、女性社員の育成に継続して取り組んでいるという損害保険ジャパン執行役員の小坂佳世子氏は、「女性専用で当社オリジナルのメンター制度というのを展開している」と明かし、「メンターのうち95%に気づきがあったという結果が出ている。互いの理解が進み、それが女性のキャリアの後押しになっていると感じている」と述べた。
こうした話を受け、エスエス製薬の元島氏は、「言うだけではなく、会社の経営陣が身をもって示し、これが当たり前だと本質的に分かるような空気やベースを作っていくのは本当に大事なことだと思う」と、トップダウンからの企業づくりの重要性について強調した。
◎一般生活者向けサービスも展開 「BeliEVE Mentoring Door」
同社は、こうしたサービスをEVEになぞらえ、「BeliEVE PROJECT」として展開する。企業向けメンタリングプログラムのほか、一般生活者向けのメンタリングサービス「BeliEVE Mentoring Door」を同日から開始した。インターネット上で悩みを投稿し、後日専門の知識に基づくアドバイスがメールで送られてくるもの。匿名かつ無料で利用できる。