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上野賢一郎厚労相と片山さつき財務相は12月24日午前、大臣折衝を行い、2026年度診療報酬改定について本体改定率をプラス3.09%とすることに合意した。“プラス3.09%”の改定率は26年度、27年度の平均値。今後の賃金・物価上昇を見据え、26年度2.41%、27年度3.77%と初めて改定率を「階段状」にした。物価対応については、別枠で予算確保し、初めて「本格的な物価対応を講じる」とのメッセージも打ち出した。データに基づき、病院と診療所で配分を変え、病院により手厚い配分を行う。ただ、病院も一括りではなく、医療機能に応じて“メリハリ”のある配分とすることも明記した。薬価については、市場拡大再算定のいわゆる共連れを「廃止する」一方で、共連れとなった品目は四半期再算定の対象品目に追加する新たなルールを設けることも合意された。(写真提供:財務省)
◎薬価等は▲0.87% 医科歯科調剤の配分は通常改定分で維持
26年度診療報酬の本体改定率は+3.09%(26年度:+2.41%、27年度:+3.77%)。薬価等▲0.87%(国費1063億円程度)で、このうち薬価は▲0.86%(国費1052億円程度)、材料価格は▲0.01%(国費▲11億円程度)。
本体改定率の内訳は、▽賃上げ分+1.70%(26年度:+1.23%、27年度:+2.18%)、▽物価対応分+0.76%(26年度:+0.55%、27年度:+0.97%)、▽食費・光熱水費分+0.09%、▽24年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分+0.44%-。後発医薬品体制加算・後発医薬品調剤体制加算など後発品への置換えの進展を踏まえた処方や調剤についての評価の適正化や、在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取り組み強化などによる効率化で▲0.15%を見込む。
これらを除いた通常改定分は+0.25%。各科の改定率は医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%で、1:1.1:0.3の配分は維持した。
◎賃上げ+3.2%分のベア実現へ 施設類型ごとの職員の規模や構成に応じた配分を
26年度診療報酬改定は、25年度補正予算で盛り込まれた「医療・介護等支援パッケージ」の延長線上にあり、「施設類型ごとの費用構造や経営実態を踏まえて経営の改善や従事者の処遇改善につながる的確な対応を行う」とした。改定率も、25年度補正予算の流れを踏まえた“土台”の上に、賃上げ分、物価対応分を積み重ねる。今後も賃金・物価の上昇が見込まれる中で、1年目よりも2年目に当たる27年度で高い改定率となる階段状となる。
賃上げ分(+1.70%)については、「医療現場での生産性向上の取組み」とあわせ、26年度、27年度でそれぞれ+3.2%分のベースアップ実現を支援する。「施設類型ごとの職員の規模や構成に応じた配分」となるよう措置する。なお、看護補助者や事務職員は介護と足並みを揃え、+5.7%のベースアップ実現を支援する。
◎賃上げ分「+0.28%」を特例措置 実績の迅速な把握で実効性が確保される仕組みに
賃上げ分のうち、「+0.28%」は特例措置として財源を割いた。賃上げをめぐっては24年度診療報酬改定でベースアップ評価料が新設され、看護職員や病院薬剤師などの賃上げを支援した。一方、40歳未満の勤務医や薬局勤務薬剤師、事務職員などは24年度改定で入院基本料や初・再診料を通じて賃上げが措置された。こうした実態も踏まえ、「医療機関等における賃上げの余力の回復・確保を図りつつ幅広い医療関係職種での賃上げ」を確実に行うために特例措置を講じる。
「賃上げ措置の実効性が確保される仕組み」である必要性も指摘。「賃上げ実績の迅速かつ詳細な把握を行うこと」と要件を付けた。現行の診療報酬改定では、ベースアップ評価料が点数としてあり、これも踏まえて今後具体的な制度設計を中医協で進める。
◎物価対応本格導入へ 病院と診療所で異なる配分に 高度機能医療担う病院に手厚く
物価対応分(+0.76%)は、「今回の改定から本格的な物価対応を行う」ことを明記した。データに基づき、配分を“医科”として一本化するのではなく、病院と診療所に分けて明示した。配分は病院+0.49%、医科診療所+0.10%、歯科診療所+0.02%、保険薬局+0.01%。さらに、「高度機能医療を担う病院(大学病院含む)」については、医療が高度化するなかで、高額な医療機器の購入が医療機関経営を圧迫することも指摘される中で、「物価対応本格導入時の特例的な対応」として「+0.14%」を措置する。高度機能医療を担う病院は通常の病院としての配分に特例措置が上乗せされる格好で、手厚い配分がなされる格好だ。措置については、加算の新設などを検討する考えで、詳細な制度設計を今後進める。
さらに物価対応としては、「24年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分」として、+0.44%も措置する。「25年度補正予算の効果を減じることのないよう」と明記し、補正予算と同様に施設類型ごとにメリハリある配分を行う。病院+0.40%、医科診療所+0.02%、歯科診療所+0.01%、保険薬局+0.01%として、病院に手厚い配分を行った。
このほか、食費・光熱水費分(+0.09%)は入院時の食費について患者負担を原則40円/食、光熱水費を原則60円/日引上げる。これに際し、低所得者や指定難病者などについての負担軽減の一部を公費で賄うため、予算措置を行う。
なお、経済・物価動向が見通しから大きく変動した場合には、27年度予算編成において「加減算を含め更なる必要な調整を行う」ことも盛り込んだ。
◎共連れ廃止「製薬企業の予見可能性を高める」 27年度薬価改定は「着実に実施」
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2026年度薬価制度改革については、製薬企業が訴えてきた市場拡大再算定の類似品の薬価引下げ(いわゆる共連れ)を廃止することを盛り込んだ。「製薬企業の予見可能性を高める観点」であることを強調。「創薬イノベーションの推進」のメッセージを打ち出した。一方で、共連れの対象品目は「自品の販売額」を基準に四半期再算定の対象とする。27年度薬価改定を「着実に実施する」ことも明記した。また、医薬品の安定供給の確保の観点から、「最低薬価について物価動向を踏まえた対応等を行う」とした。
費用対効果評価については「更なる活用」の必要性を指摘。26年12月までに「客観的な検証も踏まえ、既存の比較対照技術と比べて追加的な有用性がなく、単に費用増加となる医薬品に係る価格調整範囲の拡大を図る」とした。また、「対象品目や価格調整の範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及」をあげて具体的な検討を進めることを求め、「27年度の薬価改定の中で一定の結論を出す」とした。
◎OTC類似薬の保険給付見直し 将来的な対象範囲拡大も盛り込む
自民・維新の与党政調会長会談で合意された「薬剤給付の見直し」も盛り込まれた。OTC類似医薬品の薬剤自己負担をめぐっては、77成分約1100品目を対象に、患者に薬剤費の1/4を特別な料金として求めることとなる。こうした新たな仕組みを「26年度中(27年3月)」に実施すると明記。維新の主張していた「将来、OTC医薬品の対応する症状の適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品の相当部分にまで対象範囲を拡大する」ことを目指すことも盛り込み、「厚労省において把握・分析を行った上で、27年度以降にその対象範囲を拡大していく」とした。
あわせて、食品類似薬の保険給付の見直し、長期収載品の選定療養の拡大、長期処方・リフィル処方箋の活用も盛り込まれた。