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中医協 26年度薬価制度改革骨子を了承 共連れ廃止も四半期再算定で新ルール 市場への影響懸念の声

公開日時 2025/12/26 17:47
中医協総会は12月26日、2026年度薬価制度改革の骨子を了承した。大臣折衝での合意事項を踏まえ、市場拡大再算定の類似品への適用、いわゆる“共連れ”を廃止する。一方で、類似品については、「年間販売額150億円超、予想販売額比2倍以上」で四半期再算定の対象となる新たなルールを導入する。従来の四半期再算定の基準を引下げたが、製薬業界の要望を踏まえ、“自社の販売額”を基準とすることで、「企業の予見性」を高めたい考え。一方で、共連れは市場の公平性を保つ観点から導入された経緯がある。すでに共連れの廃止により、売上数量や医薬品取引に影響を与え、市場構造が変化することに対する懸念の声もあがっており、26年度薬価改定後のマーケットへの影響が注目される。このほか、26年度薬価制度改革の骨子には、後発品を中心とした安定供給の観点から、最低薬価の引上げや不採算品再算定の見直しも盛り込まれた。

◎大臣折衝で共連れ廃止が決定 薬価制度改革骨子(たたき台)を変更

市場拡大再算定の共連れをめぐっては12月24日の上野厚労相・片山財務相の大臣折衝で「廃止」に合意したことを踏まえた記載となった。26年度薬価制度改革の骨子(たたき台)では「対象品と市場における競合性が乏しいと認められるものとし、類似品としては取り扱っていないこれまでの運用を明確化する」とした内容を変更した。

26年度薬価制度改革の骨子(たたき台)が議論された、12月12日の中医協でも診療・支払各側からは異論は出なかったが、製薬業界は「薬価引き下げのタイミングが他社製品の販売額などの外的要因に依存するため、薬価の予見性を著しく低下させている」として、改めて“廃止”を訴えた。こうした業界の主張を踏まえ、最終的に政治決着で異例の変更となった。市場拡大再算定、市場拡大再算定の特例(名称は“持続可能性特例価格調整”に変更)の対象品の類似品への共連れを廃止する。

◎共連れ対象の類似品 四半期再算定は「年間販売額150億円超、予想販売額比2倍以上」

一方で、四半期再算定と持続可能性特例価格調整(市場拡大再算定の特例)の対象品目に、新たに「市場拡大再算定又は持続可能性特例価格調整対象品目の薬理作用類似薬」を追加し、新たなルールで運用する。四半期再算定は、「効能追加等がなされた品目、収載時に2年度目の販売予想額が100億円(原価計算方式)又は150億円以上(原価計算方式以外で算定された品目)」が対象だが、いわゆる共連れの対象品目は、効能追加等の有無に関わらず、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)により使用量を把握。「年間販売額150億円超、予想販売額比2倍以上」を基準とする。

◎特例拡大再算定 異例“3度目”の名称変更を提案「持続可能性特例価格調整(SPA-SSS)」に

なお、市場拡大再算定の特例(特例拡大再算定)について、“3度目”となる名称変更を提案。当初、「国民負担軽減価格調整」と提案。製薬業界の反発を受け、再度名称変更を「持続可能性価格調整(PASSS)」として再提案。しかし、これにも製薬業界から制度の趣旨変更につながると強い反発を受け、最終的に “特例”の言葉を追加した「持続可能性特例価格調整(Special Price Adjustment for Sustainable Health System and Sales Scale(SPA-SSS))」とした。今回の提案については製薬業界からの意見はなく、了承された。

◎診療側・江澤委員 共連れ廃止で「市場での公平性への影響、フォローが必要」

総会に先駆けて行われて実施された薬価専門部会で、診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「“共連れ”のルールができた当時とは異なり、現在のように同じ作用機序であっても様々な効能が追加される薬品が現れてきた状況では、類似品の範囲をあらかじめルール化することは難しいということであれば、今回の対応案のように、一旦、共連れの扱いは廃止して個別に販売額を把握するということもあり得る」と認めた。

共連れは、2008年度薬価改革において、市場で競合している医薬品について公平な薬価改定を行う観点から導入された経緯がある。江澤委員は、「“共連れ”ルールが導入された趣旨は、公平性の観点から市場で競合する品目については同様に扱うということであったはず。廃止した場合に、市場での公平性にどのような影響が生じるのかについては、しっかりとフォローする必要がある」と指摘した。

◎支払側・松本委員 類似品の四半期再算定適用「国民負担の軽減に向けた政府の配慮」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「大臣折衝のご判断を重く受け止め、対応案を了解する。共連れの廃止に伴い、類似品を四半期再算定の対象とすることは、国民負担の軽減に向けた政府の配慮だと受け止めている。この追加等の有無にÑDBで使用量を把握し、企業に該当した場合には、速やかに薬価を引き下げるべきだ」と主張した。

◎最低薬価引上げ 乖離率が12.1%超の品目は対象外

安定供給が重視される中で、最低薬価の引上げも明記した。ただし、「25年度薬価調査結果において、前回の24年度薬価調査における最低薬価品目の平均乖離率を超えた乖離率であった品目は引き上げの対象外とする」こととした。具体的には、乖離率が12.1%超の品目は対象外とした。なお、引上げた最低薬価を下回る価格の基礎的医薬品については、引上げ後の最低薬価と同水準までその薬価を引き上げる。

◎支払側・松本委員 最低薬価品、適正価格の取引徹底を 総価取引の実態「極めて不適切」

支払側の松本委員は、「一律の引き上げではなく、24年度薬価調査における最低薬価品の平均乖離率12.1%を超えた品目を除外することは、市場での価格交渉の関連を考慮した妥当な対応だ」と述べた。25年度薬価改定で最低薬価が引き上げられ、厚労省からも事務連絡が発出される中で、業界ヒアリングで日本医薬品卸売業連合会(卸連)から「総価取引」の実態があるとの発言があったことに触れながら、「その結果、全品目の平均乖離率を超える7.3%の乖離になっていたことは、極めて不適切と言わざるを得ない」とバッサリ切り捨てた。

そのうえで、「今後も繰り返されることのないように、適正な価格での取引の徹底を売り手、買い手の当事者が双方にお願いをしたい」と訴えた。

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「最低薬価の引き上げは物価高騰を踏まえたものであり、価格の調整弁とならないよう、販売価格に適切に反映されることを、今後、確認していきたい」と述べた。

◎不採算品再算定「医療上の必要性が特に高い品目」対象 代替供給困難な品目も

不採算品再算定については、「医療上の必要性が特に高い品目」を対象とすることを明確にした。具体的な対象品目としては、▽基礎的医薬品とされたものと組成及び剤形区分が同一である品目、▽重要供給確保医薬品に位置付けられている品目、▽極めて長い使用経験があり供給不足による医療現場への影響が大きいと考えられるその他品目(1967年以前に収載された医薬品)など、継続的な確保を特に要する薬剤であって、特定の企業からの供給が途絶えたときに代替供給を確保することが困難な品目 -とした。

適用に際しての要件である“全社手上げ”ルールを削除。「該当する類似薬のシェアが5割以上であって他の要件を満たす場合」に対象とするとした。

支払側の鳥潟委員は、「不採算品再算定について、供給改善に寄与するもののみを対象とするべきと繰り返し申し上げてきた。今回示された骨子案はそういった考え方で整理されたものと捉えている」と表明。「今般の薬価制度改革で不採算品再算定の対象となった品目について、供給状況やシェアがどのように変化したのか、今後是非ともお示しいただきたい」と主張した。

このほか、27年度薬価改定について大臣折衝で「着実に実施する」とされたことに支払側の松本委員が賛同する姿勢を表明。「大臣折衝でもあった物価・賃金の適宜適切な報酬措置は、保険料負担の抑制が前提だ。27年度薬価改定に向けた議論が円滑に進むことを期待している」と述べた。
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