三師会が福岡厚労相に要望書 期中改定もしくは相当の補助を「今年度中の早急な支援を」 経営厳しく
公開日時 2025/09/12 04:51

日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会会長は9月11日、福岡資麿厚労相と面談し、「今年度中の財政支援が必要であることから、補正予算を編成し、期中改定もしくはそれに相当する補助を早急に行うことを求める」とする要望書を手渡した。賃金・物価が上昇する局面で医療機関経営が厳しさを増しており、「期中改定も辞さない状況」と訴えた。日本医師会の松本吉郎会長は手交後に記者団に対し、「我々三師会の本当に切実な想い」として緊急性を強調。病院だけでなく、「診療所も4割が赤字」であるとして、診療所の経営の厳しさにも言及した。
◎補助金・診療報酬両面からの対応を 補助金での機動的対応 診療報酬で安定財源
要望書では、2025年度最低賃金がプラス5.97%、人事院勧告はプラス3.62%、骨太方針2025で示された25年春季労使交渉の平均賃上げ率は5.26%などを引き合いに、「医科歯科医療機関、薬局等は、とてもこれらに対応できるような状態ではない」と指摘した。そのうえで、「著しく逼迫した経営状況を鑑みると、まずは補助金での機動的対応が必要であり、さらに診療報酬で安定的に財源を確保しなければならない」として、「26年度診療報酬改定の前に期中改定も求められている状況であり、補助金と診療報酬両面からの対応が必要」と訴えた。
日本医師会の松本吉郎会長は手交後に記者団に対し、「賃金上昇、物価高騰も非常に厳しくなっており、公共料金等も非常に上がってきている。さらに日進月歩する医療の高度化に対する手当をしっかりしていただかなければいけない。政局が厳しい中だが、我々としては物価高騰や賃金上昇にしっかり対応できるような補正予算を組んでいただき、まずは迅速な補助金による支援をお願いしたい」と述べた。そのうえで、「期中改定も辞さない状況だが、最終的には26年度診療報酬改定においてしっかり安定的な財源を確保していただいたうえで、骨太方針2025に書かれたように物価・賃金対応を足し算する、上に載せる形での対応をしっかりお願いしたい」と強調した。きょうの面談で福岡厚労相は政局が不安定な中だが
、「次につなげていけるよう、弾込めしたい」と応じたという。
◎診療所も4割が赤字、四半期ごとに経営厳しさ増す 倒産件数も25年度は70件超の見通し
松本会長は、「三師会揃って行ったことに非常に意義を感じている」と述べた。そのうえで、病院経営だけでなく、診療所経営の厳しさも強調した。「7割の病院が赤字になっているが、経営が厳しいのは病院だけではない。昨年度のデータでは診療所も4割が赤字になっている。今年度はさらに四半期ごとに経営が厳しくなっており、5割ぐらいが赤字に転落するという予測もしている。歯科医療機関や薬局、介護施設も同じような状況になっていると思う」と訴えた。また、帝国データバンクの発表でも25年度上半期に医療機関が35件倒産をしており、下半期も入れると70件を超えることも考えられると説明。山間地域を中心に、経営不振や後継者不在などの理由で、閉院も出てきていることにも触れた。
そのうえで、社会保障費のあり方について、「もはや(医療費の)どこかを削って手当てをするというやり方では手当てが不可能な状況になっている。病院も診療所も薬局も非常に厳しい経営状況に追い込まれている。皆さんの理解をいただきながら、国の支援を求めていきたい」と強調した。
◎日歯・高橋会長「我々のためでなく、国民のために医療を守る」 材料費高騰響く
日本歯科医師会の高橋英登会長は、「我々は公定価格で医療を担っている。歯科では特に材料費が非常に高騰しているが、勝手に料金を上げることはできない。高額な自己負担をなくして医療を受けられる、今の日本の皆保険制度を守るためには医療が枯渇してしまっては再興できなくなる。どうにか潰されないように、国にお願いするしかない。これは我々のためでなく、国民のための医療を守るという大義がある。それを持って頑張る」と話した。
◎日薬・岩月会長 「補正予算で早急に状況改善を」 供給不安の影響大きく
日本薬剤師会の岩月進会長は、「補正予算で早急に現状を変えていただくことをお願いしてきた。医薬品の供給不安の問題もあり、患者さんに向き合う時間がどんどん減っている。根本から改善しないと、業務の改善、ひいては患者さんへのサービス提供がおぼつかなくなる危険性がある。対応はしていただいているが、現実にはまだ追い付いていないので改めてお願いしてきた」と述べた。
◎オンライン資格確認の更新費で要望書「国の全額補助を強く要望」
オンライン資格確認の機器更新費等について、「医療情報化支援基金等による全額補助が行われるよう強く要望する」とする要望書も福岡厚労相に手渡した。オンライン資格確認に必要不可欠なオンライン資格確認端末と顔認証付きカードリーダーが早期に導入した医療機関、薬局では5年を経過し、保守期限を迎えつつあると説明。「これらの機器の更新費用は医療機関、薬局にとって大変大きな負担となる。これを機に閉院を考える医療機関、薬局も多く出てくることが想定され、そうなれば地域医療の崩壊につながりかねない」と訴えていてる。
手交には、国民医療を守る議員の会顧問を務める自民党の田村憲久議員も同席した。