製薬協・宮柱会長 米トランプ大統領の薬価引下げ要請 「脅威にも感じられるが、機会にもなり得る」
公開日時 2025/10/17 04:52

日本製薬工業協会(製薬協)の宮柱明日香会長(武田薬品ジャパン ファーマ ビジネス ユニット プレジデント)は10月16日の記者会見で、米トランプ大統領が欧米系メガファーマ等に最恵国待遇価格まで薬価引下げを要請していることについて、「脅威にも感じられるが、機会にもなり得る」との見方を示した。日本市場の安定性など魅力を理解されればチャンスになる可能性を指摘。一方で、「日本市場の魅力を伝えきれなかった場合、日本に革新的新薬を上市しない、上市を遅らせるという意思決定が生まれる可能性もあることを最も懸念している。ドラッグ・ラグ/ロスの懸念がさらに大きくなるリスクもはらんでいる」との見方も示した。
トランプ大統領は最恵国待遇価格(MFN価格)を打ち出し、7月31日付で主要製薬企業17社に書簡を送り、メディケイド向けの薬価引下げや割引価格での直接販売を要求している。これまでにファイザーとアストラゼネカの2社が自社製品の薬価引下げで合意し、これに伴い医薬品関税の3年間猶予に至っている。宮柱会長は、現在のところ日本の製薬企業がこの中に含まれていないことを説明。「日本の薬価への影響を現段階で予断をもってお話することは難しい」と断ったうえで、「日本の薬価制度は新薬創出等加算品を除き、毎年薬価改定があり、予見性が低い。イノベーションを薬価上でさらに評価していただき、日本市場が安定的で魅力的であるかをいかに見せていくかが重要だ」との見解を示した。
一方、木下賢志理事長は、「イノベーションがきちんと評価され、かつ安定的で予見可能性が高い制度であることは極めて重要だ。海外にネガティブに捉えられれば、日本市場の魅力度が下がり、上市を断念する可能性がないわけではない」と指摘。「日本は透明性の高い制度設計をしている国。評価のあり方をしっかり議論していただき、革新性の高い医薬品は薬価が維持されることを世界に発信していくことが必要だ」との見解を示した。米国を筆頭に薬価に対する目線が厳しさを増すなかで、「そのままの状態でいることは日本にとってもリスクが高いということ。世界の情勢を意識した議論を進めていただきたい」と訴えた。
◎費用対効果評価制度改革の議論で「客観的な検証を」

2026年度費用対効果評価制度改革に向けては改めて「客観的な検証を行っていただきたい」と述べ、改めて第三者の専門家を交えた検証の場を求めた。木下理事長は、「新しい会議体を作っていただきたいと申し上げているのではなく、第三者の有識者や我々を含む業界団体と議論する場が必要だ」と述べた。費用対効果評価制度は薬価制度の補完とされるが、「基本的に薬価制度は有効性や安全性、薬理作用をベースに議論する。費用対効果評価はQOLを用いており、評価方法が異なる」として、データによる有効性により薬価引下げとされているわけではないとの見方を示した。そのうえで、「これまで費用対効果評価の対象となった品目を集め、検証をしっかりしてほしい。そのうえで制度としてこのままなのか、少し見直しをするのか、納得感のある制度にしていただきたい」と訴えた。