医薬品の販売・プロモーションのDX市場 35年に1560億円 24年から約1.5倍に 富士経済調べ
公開日時 2025/10/21 04:52
医薬品の販売・プロモーションのDX市場が2035年に1560億円になる――。このような市場予測を富士経済がまとめた。24年実績は1057億円のため、35年は24年比で約1.5倍の規模になる。すでにeプロモーションや営業支援システム(SFA)の活用が「非常に進んでいる」が、今後はリアルワールドデータの活用が進むほか、「連動性を持たせたデータ連携やアナリティクスにより、高付加価値のワンストップサービスのニーズが高まっていく」ことで市場がより拡大するとしている。
富士経済は、販売・プロモーションDXの市場規模は25年1141億円、26年1200億円、27年1259億円――と推移し、30年1411億円、調査最終年の35年に1560億円にまで拡大すると分析した。
◎販売・プロモーションDX市場 サードパーティの医療向けサービスが75~77%占める
販売・プロモーションDX市場のうち、エムスリー、ケアネット、メドピア、HOKUTO、アンターなどサードパーティが提供する「医療向けe-プロモーション/医師SNS サービス/ポータルサイト」の市場規模は、24年実績は796億円で、その後は25年867億円、26年915億円、27年965億円――と推移し、30年1085億円、35年1189億円になると分析した。今もこれからも販売・プロモーションDX市場の75~77%を占めるようだ。
富士経済は、「医療向けe-プロモーション/医師SNS サービス/ポータルサイト」市場について、コロナ禍でeプロモーションサービスは活況となり、コロナ禍の収束により一時的なマイナス影響を受けたとした上で、「ここ数年はWeb講演会における医師の視聴体験が進んでいることや、医療DX化の推進、MR活動とeプロモーションサービスの使い分けなど市場が深化していることから、25年以降の市場規模は拡大傾向に推移する」と分析した。
◎データ解析により製薬企業と希少疾患専門医とのコンタクトを支援する動きも
さらに、医師SNSサービスを展開している企業の中には、「自社サービスに集まった希少疾患に関する投稿などをデータ解析することで患者探索や専門医探索に繋げようと考えている企業もある」とし、「データ解析により製薬企業と希少疾患専門医とのコンタクトを支援していく動きが今後みられるようになると予測される」とも分析した。
◎創薬DXの市場規模 24年40億円が35年2000億円に
富士経済は今年6~8月に製薬企業(創薬、開発、販売・プロモーション)のDX化の動向を調査した。その結果、市場規模は24年実績が1227億円で、その後は25年1340億円、26年1428億円、27年1532億円――と推移し、30年2218億円、35年4081億円になると分析した。24年の製薬企業DX市場(1227億円)の86%を販売・プロモーションDX(1057億円)が占めていることから、「製薬企業のバリューチェーンの上流工程ほどDX化が遅れており、一方で下流工程の販売・プロモーションではDXが一定程度進んでいる」と現状を指摘した。
ただ、今後はバリューチェーン全体のDX化やリアルワールドデータの利活用が進むほか、創薬、開発、販売・プロモーションの各DX間の連動性が進むことで、創薬や開発のDX化が「加速する」と分析した。特に大きく伸長する創薬DXは、24年の40億円が35年に2000億円に57倍になるとした。
創薬DXの大幅な市場拡大の理由として、創薬活動のシステム化やDX化による効率化、スピードアップなどの潜在需要の高さを指摘。さらには、ほかの実験の検証も含めたワンストップサービスの提供や、量子コンピューティングなどさまざまな技術を組み合わせた付加価値の高いサービスの登場を挙げた。
開発DX市場は35年に520億円になるとし、DCT治験やリアルワールドエビデンスの活用など次世代の治験に必要な臨床検査関連のシステムやサービスが今後普及すると見込まれるなどとしている。