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2030年予測 キイトルーダは24年比120億ドル以上消失、28年特許切れで 皮下注製剤でカバーできず

公開日時 2025/09/16 04:52
がん免疫療法薬・キイトルーダが2028年に特許切れし、30年の売上が24年比で120億ドル以上消失する――。全世界で製薬インテリジェンスサービスを提供する米Norstella(ノーステラ)傘下のEvaluate(エバリュエート)が市場予測をまとめた。米メルクのキイトルーダの24年売上は295億ドルで世界製品売上1位だが、30年売上は7位の169億ドルになると予測した。静注製剤の28年の特許切れによる減収を見込んだもので、開発中の皮下注製剤の売上は反映されていない。ただ、エバリュエートは、皮下注製剤の30年売上は76億ドルと予測しており、静注製剤の特許切れ影響の全てを皮下注製剤だけでカバーすることは困難な状況となりそうだ。

◎30年までに特許切れ影響を大きく受ける企業 メルク、アッヴィ、J&J、ロシュ、BMS

エバリュエートがまとめたレポート「World Preview 2025」では、特許切れ影響に関して、「30年までの今後5年間で、特許切れによる売上損失は3000億ドル超に達する可能性がある」と警告した。特許切れによる年次別の売上損失額は、26年460億ドル、27年440億ドル、28年1040億ドル、29年670億ドル、30年530億ドル――。28年の損失額が大きい理由のひとつがキイトルーダの特許切れとなる。

30年までに特許切れ影響を大きく受ける企業名も挙げられている。「短期的にはメルクが最も大きな影響を受けるとみられるが、アッヴィ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、ロシュ、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)も、それぞれ累計300億ドル超の売上リスクを30年までに抱えている」とした。

◎キイトルーダ ピーク時売上325億~326億ドル 28年以降は毎年40~65億ドル消失

エバリュエートが本誌に明らかにした30年までに米国で特許切れを迎える各社の主要製品を見てみると、メルクのキイトルーダ点滴静注は、26~27年に325億~326億ドルと売上のピークを迎えたのち、予測の最終年の30年に向けて毎年40~65億ドルの売上が消失していくと分析した。ガーダシル9も28年に特許切れすると予測した。

◎アッヴィはカリプラジン J&Jはダラザレックスがそれぞれ29年特許切れ

ヒュミラの特許切れ影響(22年売上212億ドル→24年89億ドル)を大きく受けるアッヴィは、24年に32億ドルを売上げた非定型抗精神病薬・Vraylar(一般名:カリプラジン、国内未承認)がピーク時に40億ドル近くの売上げになったのち、29年に特許切れし、30年売上は10億ドルを下回ると予測した。慢性リンパ性白血病などを対象疾患とするイムブルビカは26年に特許切れすると予測した。

J&Jは、24年に116億ドルを売り上げ、同社グループ内で売上1位の多発性骨髄腫治療薬・ダラザレックスが29年に特許切れすると予測した。ただ、ダラザレックスは25年以降も拡大し続け、ピーク時に190億ドル近くまで拡大した後、30年に170億ドルを下回ると予測した。アッヴィと共同開発・販売するイムブルビカの特許切れも影響するとした。

◎ロシュ 最主力品Ocrevusが29年特許切れ

ロシュは、24年売上が約76億ドル(67億スイスフラン)と同社で売上1位の多発性硬化症治療薬・Ocrevus(一般名:オクレリズマブ、国内未承認)は29年に特許切れすると予測。28年に100億ドル近くまで売り上げを伸ばしたのち、30年に80億ドル強に売上げが落ちるとした。売上が急拡大中の乳がん/大腸がん治療薬・フェスゴ(一般名:ペルツズマブ・トラスツズマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ)は27年に特許切れすると予測した。

◎BMS オプジーボが28年特許切れ、24年93億ドル→30年50億ドル強

BMSは、24年売上が93億ドルと同社内で売上2位のがん免疫療法薬・オプジーボ(一般名:ニボルマブ)が28年に特許切れし、30年売上が50億ドル強になると予測した。この特許切れ・減収影響は静注製剤によるもので、現在、皮下注製剤が開発されている。関節リウマチ等治療薬・オレンシア(アバタセプト)は26年に特許切れを迎えるとした。24年売上が133億ドルと同社内で売上1位の抗凝固薬・エリキュースの特許切れ時期には言及していない。

◎24-30年の6年CAGR メルク1.7% アッヴィ5.5% J&J 3.3% ロシュ4.0%

なお、30年時点の企業別の医療用医薬品売上ランキングトップ10社をみると、メルクの30年売上予測は600億ドル(24年543億ドル)で24-30年の6年間の年平均成長率(6年CAGR)は1.7%と予測した。キイトルーダの静注製剤が最大の減収要因となるが、最も売上貢献するのはキイトルーダの皮下注製剤となる。

アッヴィの30年売上予測は753億ドル(24年545億ドル)で、6年CAGRは5.5%と予測。ヒュミラやVraylarなどの減収影響を自己免疫疾患治療薬・スキリージの急拡大などでカバーできるとしている。

このほか、J&Jの30年売上予測は678億ドル(24年557億ドル)で、6年CAGRは3.3%と予測。ロシュの30年売上予測は663億ドル(24年525億ドル)で、6年CAGRは4.0%と予測した。BMSの売上は30年にトップ10圏外のため、エバリュエートは6年CAGR予測を含め開示していない。

エバリュエートはグローバルライフサイエンス分野におけるマーケット情報および分析を提供しており、独自のコンセンサス予測を用いたプラットフォームやコンサルティングを提供している。
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