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2030年予測 GLP-1製剤・チルゼパチド、世界売上600億ドル超に エバリュエート調べ

公開日時 2025/09/10 04:52
米イーライリリーの糖尿病や肥満症に対するGLP-1製剤・チルゼパチドの世界売上が2030年に600億ドルを超える――。このような市場予測を、全世界で製薬インテリジェンスサービスを提供する米Norstella(ノーステラ)傘下のEvaluate(エバリュエート)がまとめた。チルゼパチドを有効成分とする糖尿病治療薬・マンジャロは30年に世界売上1位の362億ドルに、同じ成分の肥満症薬・ゼップバウンドは3位の255億ドルになり、経口GLP-1受容体作動薬などの開発も進んでいることから、「イーライリリーの優位性は既に明らか」だとしている。

文末の「関連ファイル」に、30年の▽世界売上トップ5製品、▽世界医療用医薬品売上トップ10社――の資料を掲載しました(ミクスOnlineの有料会員のみダウンロードできます。無料トライアルはこちら)。

◎GLP-1製剤 「処方薬売上全体の約9%占める、別格の存在」に 売上トップ10の半数占める

エバリュエートがまとめた「World Preview 2025」によると、「GLP-1ベースの薬剤は、今や他の追随を許さないカテゴリーへと進化している」とし、「30年には処方薬売上全体の約9%を占める見込みで、まさに“別格”の存在」になると分析した。GLP-1ベースの薬剤(以下、GLP-1製剤)は、GIP/GLP-1受容体作動薬やGLP-1受容体作動薬を指す。

30年の製品売上トップ10のうち、GLP-1製剤が5製品ランクインすると分析。1位のマンジャロ(一般名:チルゼパチド、イーライリリー)、3位のゼップバウンド(チルゼパチド、イーライリリー)、5位の糖尿病治療薬・オゼンピック(一般名:セマグルチド、ノボ ノルディスク)、6位の肥満症薬・ウゴービ(セマグルチド、ノボ ノルディスク)――に加え、ノボ ノルディスクが過体重又は肥満を対象に開発中のセマグルチドとアミリンアナログ・cagrilintideの配合剤であるCagriSemaが10位にランクインするとした。

製品売上を24年実績と30年予測の両面から見てみると、マンジャロは24年の115億ドルが30年に362億ドルへと3倍強に拡大、ゼップバウンドは24年の49億ドルが30年には5倍増の255億ドルになるとした。GLP-1ベースの薬剤は全世界でダイエット目的での使用が指摘されているなか、リリー製品の売上はますます伸び、医薬品市場を席巻するようだ。

なお、マンジャロやゼップバウンドの有効成分であるチルゼパチドの30年売上(約620億ドル)は、長年にわたり世界売上1位だった自己免疫疾患治療薬・ヒュミラ(アダリムマブ、アッヴィ)の年間ピーク時売上の3倍に相当する規模となる。エバリュエートは「これまでにない売上のピークがGLP-1製剤を待ち受けている」としている。

オゼンピックの売上は24年の175億ドルが30年に244億ドルに、ウゴービは同84億ドルが181億ドルに、CagriSemaは30年に152億ドルが見込まれるとした。

◎エンハーツは「GLP-1以外で最も成長が期待される薬剤」 30年に152億ドルと予想

GLP-1製剤以外の30年の売上上位製品をみると、2位に乾癬・炎症性腸疾患等治療薬スキリージ(リサンキズマブ、アッヴィ、30年売上予想266億ドル)、4位に喘息やアトピー性皮膚炎など10以上の適応を持つデュピクセント(デュピルマブ、サノフィ/リジェネロン、251億ドル)がランクインすると予想した。

第一三共が創製した抗体薬物複合体・エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン、第一三共/アストラゼネカ)は、「GLP-1以外で最も成長が期待される薬剤」と評価され、24年の売上42億ドルが30年に152億ドルに拡大し、売上ランクで11位になるとした。

◎30年の企業別処方薬売上ランク 1位はイーライリリーに 6年CAGRは18.5%

30年の企業別の処方薬売上ランキングは、1位はイーライリリー(24年11位)、2位はノボ ノルディスク(24年10位)、3位はアッヴィ(24年2位)になると予測した。

リリーの売上は24年の407億ドルが30年に1126億ドルにまで拡大し、24年から30年の6年間の年平均成長率(CAGR)は18.5%を記録すると分析した。成長ドライバーはマンジャロとゼップバウンドで、これらに加えて▽中外製薬が創製しリリーが開発している経口GLP-1受容体作動薬・orforglipron、▽肥満症を対象疾患に開発中のトリプルホルモン受容体(トリプルG)作動薬・retatrutide――の「価値も高い」と評価した。

◎ノボ ノルディスク 6年CAGRは12.2%と予想

ノボの売上は、24年の421億ドルが30年に839億ドルにほぼ倍増すると分析した。30年までの6年CAGRは12.2%で、企業売上ランク上位10社の中でリリーに次ぐ高い成長率となる見通しだ。主な成長ドライバーはオゼンピック、ウゴービ、CagriSemaとなる。

なお、ノボの売上や6年CAGRがリリーを超えることが困難な根拠としてエバリュエートは、リリーのチルゼパチドとノボのセマグルチドとの直接比較試験(SURMOUNT-5試験)で、チルゼパチドの減量効果が高いとのデータが出たことに加え、「ノボにとってさらなる打撃となるのは、セマグルチドがインフレ抑制法の対象となる15薬剤の1つに選定され、27年からメディケア価格交渉の対象となる予定」であることなどを挙げた。

◎ファイザー 6年CAGRでマイナス0.6%と予想 唯一のマイナス成長企業になる可能性

このほか、24年の売上1位のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、同2位のアッヴィは、GLP-1ベースの薬剤の急拡大などにより、30年にJ&Jは4位に、アッヴィは3位に後退すると予測した。

新型コロナ関連製品で業績が好調だったファイザーは「パンデミック後の業績悪化幅が最も大きく」、24年の5位から30年に10位へと大きく後退。ファイザーの6年CAGRはマイナス0.6%と分析し、売上トップ10社のうち唯一のマイナス成長企業になる可能性があると指摘した。ノバルティスは「目立ったブロックバスターに恵まれず」、同7位から9位にランクダウンすると予測した。

エバリュエートはグローバルライフサイエンス分野におけるマーケット情報および分析を提供しており、独自のコンセンサス予測を用いたプラットフォームやコンサルティングを提供している。
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