帝人・内川社長CEO 「希少疾患+在宅医療」ヘルスケア事業構造転換へ 26年度スタート次期中計で加速
公開日時 2025/11/06 04:50
帝人の内川哲茂代表取締役社長執行役員CEOは11月5日の2025年度第2四半期(中間期)決算説明会で、国内全体に構築した在宅医療事業基盤を活用し、患者サポートを必要とする希少疾患治療薬を展開する「希少疾患+在宅医療」体制へのヘルスケア事業構造転換の取り組みを加速する考えを強調した。具体的には、26年度からスタートする3カ年の次期中期経営計画の検討状況を説明した中で、「お客様の困り事を当社の持っている素材を販売するだけではなく、解決するといった顧客近接型ビジネスモデルの展開に重点化していく」と述べ、ヘルスケア事業について「在宅医療事業を展開するために必要な事業基盤をより活用して、その上に乗せると価値の出るような医薬品、医療機器、サービスといったものにシフトしていく取り組みをここ数年続けているが、これを加速していく」と述べた。
◎希少疾患・難病治療薬への取り組み強化 治療薬3製剤の国内導入を実現
ヘルスケア事業の構造転換を進めている同社では、国内で作り上げた在宅医療事業の基盤に乗せることで価値が出る希少疾患・難病治療薬への取り組みを強化している。23年11月にはデンマークのアセンディス・ファーマ社から希少内分泌疾患のホルモン治療薬3製剤(ACP-014、ACP-011/-011A、ACP-015)の国内導入を実現。現在進行中の「中期経営計画2024-2025」では、これら3製剤の早期収益化(26年度開始の次期中期から発現)を重点課題に位置付けている。
3製剤のうち、長時間作用型の副甲状腺ホルモン(PTH)製剤・ヨビパス皮下注(パロペグテリパラチド、ACP-014)については、25年8月に副甲状腺機能低下症治療薬として薬事承認を取得。10月22日の薬価収載を経て、同社は11月初旬から販売開始する。中医協資料によると、ピーク時売上予想は10年後に129億円となっている。
また、長時間作用型のC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)製剤「navepegritide」(ACP-015)については、25年6月に厚労省から軟骨無形成症を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品の指定を受け、同社は25年度上期に国内第3相試験を開始した。長時間作用型のヒト成長ホルモン(hGH)製剤「lonapegsomatropin」(ACP-011/-011A)についても、小児および成人の成長ホルモン分泌不全症を対象にそれぞれ国内第3相試験を実施中だ。
◎ヘルスケア事業の売上高 前年同期比1.3%減の684億円
この日発表された同社の25年度中間期決算によると、ヘルスケア事業の売上高は前年同期比1.3%減の684億円となった。主要製品売上を見ると、23年1月発売の骨折の危険性の高い骨粗鬆症治療薬(新規PTH製剤)オスタバロは、前年同期比10億円増の24億円となった。同社コーポレートコミュニケーション部では「計画どおり順調に進捗している。下期については、新規採用のところは一通りめどがついているので、既存採用先の処方拡大を目指していく」と話している。
中間期のヘルスケアの事業利益は、在宅医療分野において睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療に用いるCPAP(持続陽圧呼吸療法)装置のレンタル台数の増加や固定費削減効果の発現等により31.2%増の71億円だった。同事業の通期の売上、事業利益予想に変更はない。
帝人ヘルスケアセグメント
【25年度中間期業績(前年同月比)25年度予想(前期比)】
売上高 684億円(1.3%減)1350億円(1.5%減)
事業利益 71億円(31.2%増)125億円(119.3%増)
【国内主要製品売上(前年同期実績)、億円】
糖尿病治療薬4製品合計 94(105)
ネシーナ 45(51)
イニシンク 31(33)
リオベル 10(13)
ザファテック 9(8)
ベニロン 37(32)
ソマチュリン 33(31)
ボナロン 24(29)
オスタバロ 24(14)
フェブリク 17(25)
ゼオマイン 13(12)
ロコア 8(9)
ムコソルバン 4(6)