ファイザーと東京都、VHO-net ヘルスリテラシーで市民向けセミナー 情報見極めて合理的な医療選択を
公開日時 2025/11/18 04:52

ファイザーは、一般市民に向けたヘルスリテラシー強化への取り組みに力を入れている―。患者の声に耳を傾け、患者と医療従事者のコミュニケーションを円滑に行うことで、最適な治療方法の選択や安心して治療を継続できる環境を支援するというものだ。10月14日には東京都や一般社団法人VHO-netと共同で一般市民向けセミナーを開催した。登壇した聖路加国際大学の中山和弘教授は、「ヘルスリテラシーは世界的に誰もが身につけないといけない人権そのもの」と強調し、日本では医師の説明を「難しい」と感じる人が多い現状や、他国と比べて情報の評価力や意思決定力などが弱い点を課題として挙げた。また、信頼できる医療情報の見極め方や合理的な医療選択を行うための具体的な方法を紹介し、患者自身が主体的に判断する力の重要性を説いた。
◎ヘルスリテラシーのスコアの国際比較 欧州諸国等に比べて大幅に低い日本
同社は、これまでも「ヘルスリテラシー」にフォーカスした取り組みとして、患者・家族向けの冊子の作成や、患者団体等の協力を得て患者との交流の機会を重ねている。東京都や一般社団法人VHO-netと共同で、10月に開催した一般市民向けセミナーもこうした活動の一環として企画されたものだ。
セミナーに登壇した聖路加国際大学の中山和弘教授は、国際比較によるヘルスリテラシーのスコアを参加者に示しながら、日本の点数が欧州諸国などと比べて大幅に低いことを説明した。日本では約半数の人が医師の説明を「難しい」と感じており、意思決定に自信が持てず、衝動的・直感的な判断をしやすい傾向があるという。
さらに、「日本人の新聞や雑誌、テレビへの信頼は国際的に見て過剰だ」とする調査結果を紹介。ヨーロッパなどの他国と比べて情報を評価する力や意思決定の点で課題があると指摘した。信頼できる情報を見極める方法として「か・ち・も・な・い」という語呂を紹介し、「書いたのは誰か。違う情報と比べたか。元ネタは何か、何のための情報か。いつの情報か。少なくともこの5つがすぐわかる情報は信頼できるということだ」とポイントを挙げた。
◎「(腑に)お・ち・た・か」という語呂を紹介
中山教授はまた、医療における合理的な意思決定を支える考え方として「(腑に)お・ち・た・か」という語呂を紹介した。「オプション(選択肢)が揃っているか。長所、短所は。価値観を大切に自分にとって何が重要かをはっきりさせる」ことで、ベストな選択につながると説明。シェアードデシジョンメイキング(Shared Decision Making:SDM、共同意思決定)においても、「SDMも“お・ち・た・か”をするだけだ。誰かに任せるとか、直感で選ぶなどでは、選び方も結果も不満で二重の後悔になってしまう。それを“おちたか”は防いでくれる」と述べ、意思決定の方法の重要性を述べた。
そのうえで、「幸福感が高い国や地域ほど、人生の選択の自由度が高いという研究結果もある。合理的な意思決定ができるような日本になれば、実はもっと日本人は幸せになるのではないかとも思う」と強調した。
◎ファイザー・藤井メディカル部門長「これからもヘルスリテラシー向上の取り組み進める」
セミナーを主催したファイザーの藤井幸一メディカル部門長は、「意思決定できる力として、情報の入手、理解、評価、意思決定のプロセス、SDMの重要性などもご教示いただいた。ファイザーはこれからも患者様中心・ペイシャントファーストを最も大切に、ヘルスリテラシーの向上と納得のいく意思決定を支える取り組みを一層進めていく」と締めくくった。