IQVIAは11月13日、2025年第3四半期(7~9月)の国内医療用医薬品市場データを発表した。製品売上1位のがん免疫療法薬・キイトルーダの売上は薬価ベースで572億7800万円、前年同期比26.2%増と2ケタ成長した。25年1~9月売上は1605億円となり、現在のペースで推移すると25年売上は2000億円を超える見通しだ。売上トップ10製品をみると、2型糖尿病治療薬・マンジャロが8位にランクインし、初のトップ10入りを果たした。マンジャロの7~9月売上は283億9400万円で、前年同期比251.2%増と大きく伸びた。
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◎キイトルーダ 22年第3四半期(7~9月)から四半期ベースで13期連続2ケタ成長
キイトルーダは、25年4月改定で新薬創出等加算により薬価を維持できた。さらに24年の胃がん、胆道がん、子宮体がん、非小細胞肺がんにおける術前・術後補助療法などの適応追加に加え、「良好なエビデンスにも支えられた」(IQVIA)ことで、引き続き力強く成長した。IQVIA発表の四半期ごとの売上データを見ると、キイトルーダは22年第3四半期(7~9月)から今回の25年第3四半期(7~9月)まで四半期ベースで13期連続2ケタ成長を記録し、25年7~9月は最も高い成長率を示した。
四半期データからキイトルーダの25年1~9月売上を算出すると、前年同期比20.3%増の1605億円となった。現在のペースで推移すると、25年売上は約2100億円となる。26年2月1日付で特例拡大再算定により薬価が7.0%引き下げられることが決まっているため、25年10~12月は若干の買い控えも想定されるが、それでも25年売上は2000億円を超えるとみられる。
◎マンジャロ 糖尿病治療薬内で売上1位に 2位フォシーガは共連れ再算定の影響も
25年7~9月の製品売上ランクで8位に入ったマンジャロは、売上が前年同期から3.5倍になった。この伸び率は売上トップ10製品の中で最も高い。IQVIAは、「2型糖尿病治療薬として心血管イベントの抑制や体重減少効果が評価され、需要が大きく伸長した」と分析している。
薬効別の売上をみると、糖尿病治療薬内の売上1位はこれまでフォシーガだったが、25年7~9月はマンジャロが1位となった。フォシーガは全体9位、糖尿病治療薬内では2位で、売上は8.1%増の270億7000万円だった。フォシーガはCKD適応を中心に成長しているが、8月1日付で市場拡大再算定が適用されたジャディアンスの共連れでフォシーガも8%台の薬価引下げを受けた影響が出たとみられる。マンジャロの急成長もあって、首位逆転を許した格好だ。
◎リクシアナ 出血リスクの高い高齢者の追加適応などで2ケタ成長 25年に1500億円台へ
25年7~9月の売上トップ10製品は、1位キイトルーダ、2位リクシアナ(売上412億4700万円、前年同期比10.2%増)、3位デュピクセント(330億5800万円、2.8%増)、4位オプジーボ(328億4000万円、6.1%減)、5位タケキャブ(307億5200万円、3.8%増)、6位エンレスト(295億600万円、45.5%増)、7位タグリッソ(285億6800万円、4.7%増)、8位マンジャロ、9位フォシーガ、10位イミフィンジ(267億1400万円、横ばい)――だった。
IQVIAによると、リクシアナは、出血リスクの高い高齢者への追加適応による成長に加え、25年2月に慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の適応も取得したことで2ケタ成長につながった。ミクスの集計では、リクシアナの25年1~9月売上は10.5%増の1184億円で、現在のペースで推移すると、25年売上は1500億円台となる見通しだ。
◎デュピクセント 成長にブレーキ 24年11月の特例拡大再算定の影響も
24年7~9月に前年同期比59%の大幅増を記録したデュピクセントは今回、2.8%の成長にとどまった。23年に小児アトピー性皮膚炎、24年に慢性蕁麻疹の適応追加を取得して以降、成長が加速し、25年3月にはCOPDの適応追加もあった。しかし、24年11月に3度目の特例拡大再算定により薬価が約13%引き下げられたことで成長にブレーキがかかった。
売上トップ10製品の中で唯一のマイナス成長となったオプジーボは、24年4月に共連れ市場拡大再算定で薬価が15%引下げられたうえ、同剤にとって売上比率が高い胃がん1次治療での競争激化もあって厳しい業績が続いている。ミクスの集計では、オプジーボの25年1~9月売上は959億円だが、前年同期比12.2%減となった。
◎エンレストは高成長キープ、小児加算など追い風に イミフィンジは再算定影響から回復
このほか、25年に入ってから四半期ベースの製品売上ランクでトップ10の常連となったエンレストは、7~9月も大きく成長した。四半期ごとの売上と成長率は、25年1~3月が252億円(前年同期比56.6%増)、4~6月が278億円(同38.6%増)、7~9月が295億円(同45.5%増)――。25年1~9月売上は825億円となった。24年5月に慢性心不全の小児用剤形を発売し、25年4月改定では新薬創出等加算に小児加算も付いて薬価が10%引き上げられたことも売り上げを押し上げた。
イミフィンジは、胆道がんや肝細胞がんの適応追加で成長が加速していたが、24年2月に市場拡大再算定で25%の薬価引下げ、同年8月に用法用量変化再算定で11%の薬価引下げを受けた影響が大きく出ていた。ただ、四半期ごとの減収率は小さくなっており、25年1~3月は前年同期比19.2%減、4~6月は11.0%減――と推移し、今回7~9月は0.0%と横ばいにまで回復した。
◎国内市場2.3%成長 病院市場は4.5%の高成長に 抗腫瘍剤の回帰大きく
25年7~9月の国内市場は2.7%増の2兆9611億円(1億円未満切捨て)となった。内訳は、100床以上の病院市場は4.5%増の1兆4275億円、100床未満の開業医市場は0.7%減の5493億円、主に調剤薬局で構成する「薬局・その他」市場は2.0%増の9842億円だった。
病院市場は、抗腫瘍剤が前年の横ばい成長から一転して2ケタの高成長に回帰したことが大きく貢献した。抗腫瘍剤は市場全体で10.9%伸びた。
開業医市場は、糖尿病治療薬や、骨粗鬆症薬などで構成する「その他骨格筋用剤」が伸長したが、新型コロナ関連製品(検査薬、治療薬)のマイナス分を相殺できず、若干のマイナス成長となった。
「薬局・その他」市場は、新型コロナ治療薬のマイナス分を糖尿病治療薬の「2ケタ成長」(IQVIA)で相殺でき、プラス成長とした。糖尿病治療薬は市場全体では8.8%伸びた。