サノフィ 障がい者インクルージョンを世界へ発信 ダンサーDAIKI氏がワークショップ 多様性の価値を共有
公開日時 2025/12/10 04:52

「インクルージョンについて我々一人ひとりが考え、デザインして、リードしていく」―。サノフィのグローバルエグゼクティブ・バイスプレジデントでコーポレートアフェアーズ担当ヘッドであるオードリー・デュバル氏は12月2日、障がい者インクルージョンをテーマに開催した同社のイベントでこう強調した。イベントには難病・軟骨無形成症の当事者でプロダンサー・俳優などで活躍するDAIKI氏を招き、ダンスワークショップやパネルディスカッションを通じて、互いを理解しようとする姿勢の重要性などを共有した。同社の岩屋孝彦代表取締役社長は、「我々はダイバーシティとインクルージョンを推進していかなければならないと考えており、社員の取り組みにより我々は大きく進歩できている」と手ごたえを語った。
イベントは国際障がい者デー(12月3日)に合わせて開催された。東京・新宿の本社から世界60か国へ配信され、グローバルを含め1650人が参加した。
イベントに登壇したデュバル氏は、「我々の目的は科学を追求して人々の人生を良くしていくことだ」としたうえで、「我々のベストなアイディアは違った経験を持った人、多様性のある方々から生まれる。我々一人ひとりがインクルージョンを考え、デザインし、リードしていき、みんなが安全安心を感じながら前進できるようにする」と呼び掛けた。
また、フランスからオンラインで参加したグローバル・エグゼクティブ・バイスプレジデントで製造・サプライ担当ヘッドのブレンダン・オキャラハン氏は、「インクルージョンはチェックリストではなく、日々見ること・聞くこと・実践することの積み重ねだ。違いをつながりに変え、つながりを可能性へと昇華させていきたい」と語った。
◎原動力は「反骨精神」 パネルディスカッションで思いを共有

パネルディスカッションでDAIKI氏は、高校時代にアルバイト面接すら受けられなかった経験が35件あったことを紹介。「僕の体を見て“無理だと思うよ”と言われた」と振り返った。ダンサーや俳優など多方面で挑戦し続ける原動力は「反骨精神」だと語り、低身長症当事者として日本人で初めて保健体育の教員免許を取得したことなどを紹介。「大河ドラマに出た障がいのある人も僕しかおらず、何やっても“初”がつく。0を1にするのは難しいが、できたときに1から10までどうやって壁を塗り替えていくかが重要だ」と今後の活動へも意欲を示した。
岩屋社長は、「日本はきっちりとした組織的な対応ができる一方、同質性が特徴で、少し封建的なところが社会の問題だ」と指摘。さらに、「同質の仲間だけではサノフィの成し遂げようとしている変革は難しく、ましてや社会への影響は与えられない。我々はダイバーシティとインクルージョンを推し進めないといけない」と強調した。
◎ダンスワークショップで自己表現 DAIKI氏「きっかけの種まきを」

続いてDAIKI氏が主導するダンスワークショップを開催。ストリートダンス「クランプ」に込められた怒りの表現や振り付けの意味が説明され、社員は手足を大きく動かしながら自由に感情を表現することを体験した。DAIKI氏は医師から今年でダンスを引退するよう言われていることを明かし、「ラスト一年はこうやって大事にしてきたものをシェアし、きっかけの種まきをしていきたい」と思いを述べた。
ワークショップに参加した岩屋社長は、「DAIKIさんのひと言ひと言が我々に勇気を与えてくれ、Sanofi Japanとして進むべき道しるべを教えていただいたと思う」と感謝。さらに、「障がいがあるかないか関係なく、違いがあっても自分らしさを持って生きられる世界を実現するために頑張っていきたい。一人ひとりが社会を変え、可能にするためには何ができるのかを考えていただき、アクションに移していってもらいたい」と締めくくった。
◎誰もが力を発揮できる職場を 障がい者雇用など継続して推進
同社は2009年から障がい者の雇用促進に取り組んでおり、従業員リソースグループの「Ability+」を中心に誰もが力を発揮できる職場を目指している。また、障がい者の排除をなくすために協力する国際組織「Valuable 500」のアイコニック・パートナーとして活動していることに加え、25年11月に開催された東京2025デフリンピックでは、陸上競技のゲームズサポートメンバーとして協賛するなど、インクルージョン推進に継続して取り組む。