中医協総会 高額薬剤議論 医薬品の“最適化”推進に向けて議論スタート

公開日時 2016/05/19 03:51
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中医協総会は5月18日開かれ、高額薬剤議論をめぐり、医薬品の使用の最適化が議論の俎上にあがった。この問題について、診療側、支払側各側から、現行の薬価制度では限界があるとの認識が示された。抜本的な薬価制度の見直しを求める声も上がる中で、中井清人薬剤管理官は、薬価だけでは解決できる問題ではないとの認識を示した上で、「薬価についての問題もひとつあるかと思うが、一方で効果のある薬であるということも事実。無駄にとは言わないが最適に、本当に必要なところに確実に提供していくことを検討していく時期だ」と述べた。抗がん剤・オプジーボの薬剤費の推計が年間1兆7500億円であることに端を発した高額薬剤問題だが、中医協でも本格的な議論をスタートさせることになる。

高額薬剤による薬剤費、医療費への影響が問題視されているが、薬剤費の適正化に向けては、薬価の引き下げと、医薬品の最適化使用の観点がある。この日の中医協では、高額薬剤の議論をめぐり、診療側の中でも薬価制度改革の重要性について意見が割れた。製薬業界側は、日本製薬団体連合会(日薬連)の野木森 雅郁会長(アステラス製薬会長)が製薬企業として情報提供を通じて、最適な患者に投与を行う適正使用の推進を行う姿勢を示した。


◎安部委員「国民が幅広く高額医薬品にアクセスできる状況勘案を」


診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「個別の医薬品で高いか安いか、価格について議論するのは限界がある」と指摘。製薬業界が主張するイノベーションへのインセンティブの重要性に理解を示した上で、「たとえ高額な医薬品であっても国民患者さんが幅広くアクセスできるということは諸外国とは違う。高額医薬品をたくさんの人が使えるという状況も踏まえてバランスの良い議論が必要だ」との見解を示し、投与に最適な患者を絞り込むことの必要性を強調した。支払側の花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も、「高価な薬は本当に適切に使ってほしい。理解した医師が使うことで必要性がある。そこを考えていただきたい」と述べ、適正使用の重要性を強調した。


これに対し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「高額医薬品に対し、個別の品目について薬価が高い、安いということに限界というのは逆だ」と反論。「薬効、効能効果、国民に与える影響をひとつひとつ丁寧に薬価を決めていくことがより重要だと考えている」と述べた。さらに、「市場規模や患者数を含めて抜本的に薬価算定を早急に見直す仕組みが必要だ」との考えを示した。


薬価算定組織の清野精彦委員長は、現行の薬価制度について、▽コストとベネフィットの考え方の変化、▽治癒する病気と永続的に治療する場合の薬価の考え方、▽分子標的薬などで適応拡大が予定されている場合の薬価の考え方――をあげた。診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)も、「中医協で適応拡大されたときに薬価の再算定を一定の金額以上の医薬品についてはすべき。その制度を速やかに作らないと、適応拡大されたときに他財政に対する負担が大きい」と懸念を示した。

そのほか、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「国民医療費の20%を占める薬剤費が国民皆保険の潜在的な危機要素になるのが現実味を帯びている。薬価を総額的に統制する仕組みが今以上のものをやらなければならいのではないか」と述べ、薬剤費全体に上限を設ける考えも示した。


◎日薬連・野木森会長「製薬企業は情報提供通じて適正使用推進」


診療側の中川委員が、オプジーボが適応拡大に向けて、複数の癌腫で臨床試験段階であることを引き合いに、「いまの薬価算定の基準で行くと、公的保険に重大な支障をきたすのは間違いない」と指摘し、高額薬剤に対する製薬企業の姿勢を問う場面もあった。

これに対し、日本製薬団体連合会(日薬連)の野木森 雅郁会長(アステラス製薬会長)は、「イノベーションはきっちり評価していただきたい」と述べた上で、必要な患者に医薬品を届けることの重要性を強調。単なる薬価引き下げの議論ではなく、「適正使用で、使っていい患者さんにきちっと使う。製薬企業としては、いかに情報提供をしていくか。使うべき患者さんをどのように選んだらいいのか、努力をしていく」と述べた。

米国研究製薬工業協会(PhRMA)のパトリック・ジョンソン在日執行委員会委員長(日本イーライリリー代表執行役社長)は、施策によるドラッグ・ラグ拡大に懸念を示した。欧州製薬団体連合会のフィリップ・フォシェ副会長(グラクソ・スミスクライン代表取締役社長)は、「薬価算定にとどまるのではなく、医療費全体の財源に話を移してかないといけない」との見解を示した。


◎増税改定での薬価調査 製薬業界は反対 支払側「増税改定は即毎年薬価改定にはつながらない」



この日の中医協総会では、2017年4月に消費税10%への増税が予定されていることを踏まえ、増税改定での薬価調査などについて製薬、医療機器、医薬品卸の各業界からのヒアリングが行われた。いずれも薬価調査の実施に反対を主張した。薬価調査を実施する際も必要最小限とすることを求めたほか、増税改定と毎年薬価改定は分けて議論することなどを求めた。診療側の中川委員が「1年しか経っていないのに、市場実勢価格の把握を正確にできるのかという技術的な課題がある。我々も冷静に判断しないといけない」と述べるなど、一定の理解を示した。一方、支払側の幸野委員は、「消費税は市場実勢価格にあわせてののせるべき。薬価調査は実施すべきだ」との見解を示した。ただし、製薬業界が懸念していた毎年薬価改定については「即毎年薬価改定につながるものではない。再度この必要性を議論していくべきだ」と述べた。


日薬連の野木森会長は、増税時の薬価調査の実施は、「容認できない」と主張。1984年度から3年連続薬価改定がなされた際に、薬価調査の実施率が低かったことを引き合いに、市場価格の形成には2年程度の時間がかかるとの見方を示した。実施する際も、消費税増税分を適切に転嫁するための「購入価水準の動向を確認する特例的なものと位置付けるのが妥当」とし、「関係者の負担も考慮した必要最小限の調査とすることが不可欠」との見解を示した。

 

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