中医協 26年度診療報酬改定「栄養保持目的の医薬品の適正化」俎上に 診療側は保険給付除外に反対
公開日時 2025/12/15 04:54
厚労省保険局医療課は12月12日の中医協総会に、2026年度診療報酬改定に向けて、エンシュア・リキッドなどの栄養保持を目的とする医薬品の薬剤給付の適正化を俎上にあげた。特定の疾患以外でも使用できる医薬品が収載されており、使用目的を明確化するなどの適正化が行われる可能性がある。通常の食事による栄養補給が可能な患者への追加的栄養補給は食品で代替が可能であることから、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「保険給付の適正化は十分現実的だ」と表明した。一方、診療側は江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が、「医師が必要と認めた場合は、確実に保険給付の対象とすることが重要だ」と述べるなど、保険給付除外に反対する姿勢を強調した。
厚労省はこれまでも、ビタミン剤やうがい薬、湿布薬などについて、使用目的の明確化や一回処方当たりの枚数制限など薬剤給付の適正化を行ってきた。骨太方針2025でも社会保障改革の検討が求められている中で、栄養保持を目的とする医薬品に焦点が当たっている。
◎効能・効果に特定の疾患の定めのない医薬品が収載 追加的栄養補給は代替可能な食品も
栄養保持を目的とする医薬品としては、エンシュア・リキッド、ツインラインNF配合経腸用液、ラコールNF配合経腸用液、エネーボ配合経腸用液、イノラス配合経腸用液、エンシュア・Hと列挙。効能・効果は「手術後患者の栄養保持」、「経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給」とされている。エンシュア・Hには特定の疾患名が明記されているが、その他の医薬品は、特定の疾患の定めがなく、特定の疾患以外でも使用が可能な医薬品が薬価収載されている。
これらの医薬品については、同程度の栄養を有する食品が市販されているとのデータも示し、通常の食事での追加的な栄養補給としては代替可能であることも指摘されている。
◎医師が栄養保持目的の医薬品が特に必要と認める患者も 終末期やクローン病など
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「現在疾病の治療のために必要であり、他の食事では代替できないことから、医師が栄養保持を目的とした医薬品を使用することが特に必要と認めて使用されている患者も存在している」と指摘。「経管栄養をはじめとして、低栄養や終末期の場合、さらにはクローン病やベーチェット病などで腸管の負担を減らして炎症を抑える必要がある場合など、多種多様に生きていくために用いられている」と続けた。一方で、「実際には少し食欲がない場合や、食事と併用してこうした医薬品を使用することは、すでに審査支払い機関における審査の場においても厳しくチェックされている実態もある」と説明。「医師が栄養保持を目的とした医薬品を使用することが特に必要と認めた場合については、治療の一環として行われるもの。必要性を判断できるのは医師のみだ。医師が必要と認めた場合は、確実に保険給付の対象とすることが重要だ」と強調した。
診療側の小阪真二委員(全国自治体病院協議会副会長)は、「特に在宅の患者さんは値段が高くなれば、どうしても市販で買って使うことはできなくなる」と指摘した。在宅復帰の流れが強まる中で、「国が治す医療から治し支える医療へ転換するのであれば、高齢者を支える栄養保持を目的とした医薬品を保険適用から外すというのは、現在の流れと逆行しているのではないか」と指摘した。保険給付からの除外は「医療現場から見ると非常にマイナスの方向にいくと思う」、「本来であれば食品になっているものでさえ保険給付にしてほしい」と訴えた。
◎支払側・松本委員 医師が治療上の必要性認める場合「運用ルール上の明確化を」
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「効能効果に明記されている通り、手術後または経口での食事摂取が困難な場合に限定することが原則であり、例外的に医師が治療上の必要性を特に認める場合でも単なる低栄養ということだけで、保険使用の中で使用することのないように、運用ルール上の工夫をあわせてお願いしたい」と要望した。
支払側の永井幸子委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、「現在、治療のために必要ということで、医師からの指示で使用している患者の方もいる。患者への影響も踏まえ、検討が必要だ」と述べた。