政府の規制改革推進会議（小林喜光議長・三菱ケミカルホールディングス取締役会長）は４月２日、オンライン診療について新型コロナウイルス感染拡大が続くなかでの緊急措置として、初診対面原則の見直しを求めた。これに対し、厚生労働省は専門家の意見を聞きながら検討する姿勢を示したが、”初診対面”原則の緩和に難色を示した。小林議長は、「オンライン・電話による遠隔診療に対する厚労省の答えは、非常に距離のあるものだった。考えている見直しでは、遠隔診療を求める国民の声に答えることができないのではないか」と述べ、同省に再検討を要請した。規制改革推進会議は来週にも意見書を取りまとめる方針で、きょう３日も会議を開き、議論を詰める。

◎新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォースが初会合

規制改革推進会議は同日、「新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォース」を設置し、初会合を開いた。「患者の方々のみならず、コロナウイルスとの闘いの最前線で活躍されている医師・看護師の皆様を、院内感染リスクから守るためにも、オンライン診療を活用していくことが重要だ。現状の危機感を踏まえた緊急の対応措置を、規制改革推進会議で至急取りまとめていただきたい」―。３月31日に開かれた政府の経済財政諮問会議で、安倍晋三首相がこう指示したことを受け、オンライン診療・服薬指導の緊急的な規制緩和の議論に着手した。

この日、タスクフォースでは、初診対面原則の見直しのほか、診療報酬上の取り扱いを見直すことも求めた。オンライン診療や電話診療を実施する際に、診療報酬上の評価を対面と同等まで引き上げることや、「一月あたりの再診料等（電話等による再診は除く）及びオンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が１割以下であること」とする施設基準の見直しなどを求めた。オンライン服薬指導についてはオンライン診療、もしくは在宅患者を想定した点数設計となっているが、対象拡大を求めた。

◎厚労省は難色　一方で「海外で出来て日本で出来ない」論理矛盾も

これに対し、厚労省は難色を示した。委員からは、“慢性疾患”に限ることで若年者の医療アクセスが阻害されることへの懸念などが示された。大石佳能子医療・介護WG座長は会見で、「平時であればオンライン診療電話診療は非常に得られる情報が限られているので対面と同等に扱えないのはわかるが、大きな危険性が迫っているということを考えていくべきだ」と指摘した。中国や英国などではすでに取り組みを進んでいるとして、「海外で出来て、なぜ日本では出来ないのかということに論理矛盾を感じる」とも指摘した。

◎医療現場からオンライン診療・服薬指導の活用を望む声　どう対応する？

東京都を中心に、全国で新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで、患者や医療従事者の感染者との接触を防ぎ、継続して適切な治療を提供するためにも、オンライン診療・服薬指導の活用を望む声が医療現場からもあがっている。厚労省も、“特例的な扱い”として、すでに診断されている慢性疾患については、症状の変化があった場合には処方薬の変更を可能にするなど、臨時・特例的な対応を進めてきた。また、感染疑いの人に対しては、かかりつけ医が新型コロナウイルスについての相談やオンライン受診勧奨を行うことを可能にしている。また、診療報酬上も、従来は再診料と処方箋料しか算定できなかったが、生活習慣病管理料などの管理料が算定できることも３月27日の事務連絡で発出するなど、対応してきた。

一方で、初診でのオンライン診療については、「指針や問診だけでは正確な診断や重症度の評価は困難」として、「重症化の恐れや他の疾患を見逃す恐れもある」と指摘。「初診対面」の原則を守ることを求めた。軽度の発熱や上気道症状、腹痛、頭痛などへの解熱剤の処方など対処療法についても、新型コロナウイルスへの感染を否定できず、「感染の拡大や重症化により、致死率が高くなるリスクがあり困難」としていた。日本医師会の松本吉郎常任理事も３月30日の会見で、今後患者が増加した際の対応には含みを持たせたが、「現時点では、オンライン診療は原則初診で行うべきではない」と日本医師会としてのスタンスを示していた。