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日医・横倉会長 新型コロナに伴う受診抑制が病院経営直撃 2次補正予算で7.5兆円確保を安倍首相に要請

公開日時 2020/05/19 04:52
日本医師会の横倉義武会長は5月18日、厚労省内で記者会見に臨み、新型コロナウイルスの感染拡大による受診抑制で病院経営に甚大な影響が出ているとして、安倍晋三首相に第2次補正予算で、半年間で約7.5兆円の予算確保を要望した。20年度末に各大学病院の損失が約5000億円にのぼると推計されているほか、診療所でも総点数が最大で約3割減少するなど、病院、診療所ともに経営に打撃を受けていると強調した。横倉会長は、「最も注力すべきは、国民の生命と健康を守ること。そのためには医療現場への支援が最優先課題であり、有事のいまこそ、国をあげてあらゆる資源を集中投入し、国民の安心を取り戻すべき時だ」と述べ、予算確保の必要性を訴えた。

横倉会長は同日、全国医学部長病院長会議の山下英俊会長、山形大学医学部の嘉山孝正名誉教授(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関わる課題対応委員会会長)とともに、安倍晋三首相と萩生田光一文部科学相と面談。さらに、横倉会長が加藤厚労相と面談し、医療機関の窮状を伝えた。

◎新型コロナ患者受入れ病院・重症者で400万円、中等症者で200万円の補助必要

全国医学部長病院長会議の調査では大学病院では20年度末に各病院の損失が約5000億円減少すると推計されている。安藤高夫衆議院議員の試算では、新型コロナウイルス感染症の受け入れ病院では、1人当たり重症者は400万円、中等症者は200万円、軽症者は100万円の補助が必要としている。病院だけでなく診療所への影響も大きい。福岡県医師会の調査によると、診療所の総点数として最大3割減少しているという。

こうした状況を踏まえ、診療体制を継続させるために、日医は四病院団体協議会と加藤厚労相に申し入れを行うなど、窮状を訴えてきた関連記事)。横倉会長は、「この状況が続くようであれば、4月の診療報酬が入金される6月以降の医療機関経営に重大で深刻な影響が出る」と改めて訴えた。

◎空床発生など医療機関支援6054億円など要望

日本医師会は、5本柱からなる要望を安倍首相に提出した。このなかで、新型コロナウイルス感染症を受け入れていない医療機関でも、風評被害や、感染予防などの観点でゾーニングなどを行った結果として、稼働率が低下するなどして、医療機関の減収が深刻な課題となっていると指摘。「眼科や耳鼻科などの専門診療科が地域での医療を継続するための支援」として約1兆544億円の確保を要望した。また、日常診療をしていても、新型コロナの患者である可能性があることから、「感染経路が不明な新型コロナウイルス感染患者が発生している状況において、地域の通常の医療の確保の支援」のうち、地域の通常の医療確保として約1兆2964億円の予算配分を求めた。また、医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合の労災保険給付について事業主負担分を補償する民間保険の創設と補助(約1410億円)が必要とした。

新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関では、新型コロナの患者が入院するとほかの患者がベッドを使用することができず空床が発生するなどの影響があることを指摘し、約6054億円の確保をもとめた。

このほか、医療従事者への危険手当(危険手当等:約3860億円、PPE確保:約6000億円)、PCRセンターの拡充(PCRセンターの設置・維持:約4694億円、抗原検査・抗体検査等:約2970億円)―などを要望した。予算額については、安藤衆議院議員を中心とした新型コロナウイルス対策医療系議員団本部での試算に基づいているとしている。横倉会長は、「国民の生命と健康を守るため、診療体制の継続に向けて医療界一丸となって取り組む」と決意を滲ませた。

◎全国医学部長 「2~3か月以内に必要経費の補填をしないと医療崩壊を招く」

全国医学部長病院長会議らは、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、集中治療室確保のための手術件数制限や、院内感染防止のための外来診療制限、侵襲的検査の制限など、医療業務の大幅な変更を余技なされたと指摘した。実際、全国77大学病院の手術件数は19年4月の6万3540件から、20年4月には5万760例となり、1万2780例減少しているという。こうした状況から、大学病院では入院・外来の減収が約5000億円にのぼると試算した。さらに、診療所や一般病院を含めると、約2兆円にのぼると影響の大きさを強調した。国立大学をはじめ、「大学、診療所、一般病院とも内部留保がほとんどない状態」であることも説明。「2~3か月以内に必要経費の補填をしないと医療崩壊を招く」と訴えた。

さらに、「現実に都内の大学医学部では財務的苦境に陥り、職員の減給、賞与減額等が計画されている」と指摘。財務的課題の解決が速やかに施行されることで、「現場でCOVID-19と日夜戦っている医療人(医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、臨床工学技士、医療事務職員等)が安心してCOVID-19に立ち向かえる」と強調。「国民のために命を懸けて戦っている英雄が間もなく職を失う。安倍首相のリーダーシップで、ぜひ彼、彼女、国民を救ってください」と強く訴えた。

このほか、新型コロナウイルス感染症の症状はなくても手術などに際し、無症候の患者に対しても水際対策としてPCR検査を行っている。ただ、PCR検査についてはDPC病院では包括算定がなされ、検査結果が陽性でない場合は現状、各大学の持ち出しとなっているとして、「医師の総合判断で施行すれば、公的料金で賄われる」必要性を指摘した。

◎病院経営状況緊急調査 医業利益率9.0%の赤字に転落 コロナ受け入れ病院で減益大きく 

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会も同日、「病院経営状況緊急調査(速報)」を公表した。医業利益率が1.0%の黒字から9.0%の赤字に転落するなど、厳しい状況にある。特に新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている医療機関では、医業利益率が0.3%からマイナス11.8%にまで落ち込んだ。東京都や大阪府などの特定警戒都道府県でも、減益傾向が強いことがわかった。

病床利用率は全体で75.9%(前年:82.2%)に落ち込み、特に新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関では67.1%(前年:78.2%)まで減少している。一方、外来患者数も昨年の8518人から6841人に減少、初診患者は919人から532人にまで減少。手術件数や救急受け入れ件数も減少していた。調査は、3団体に加盟する4332病院を対象にメールで調査を依頼し、現在までに回答を得た1153病院(有効回答数:1141病院)の結果を解析した。調査期間は5月7~15日まで。

同団体らは、「4月度は外来患者・入院患者共に大幅に減少しており、経営状況は著しく悪化していた」と強調した。特に、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた医療機関では診療報酬上の手当てがなされたものの、「経営状況の悪化は深刻だった」としている。また、こうした状況で病棟閉鎖せざるをえなかった病院の悪化傾向が顕著であったことも指摘。「これらの病院への緊急的な助成がなければ、今後の新型コロナウイルス感染症への適切な対応は不可能となり、地域での医療崩壊が強く危惧される」としている。


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