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【FOCUS 医師の働き方改革】MRは担当病院ごとに準備状況を把握せよ いまこそPull型活動を磨くとき

公開日時 2023/04/03 04:52
2023年度がスタートした。新型コロナの対応も医療現場は引き続き警戒感を持って取り組んでいるものの、5月にはコロナの感染症法上の取り扱いが季節性インフルエンザ並みの「5類」となることで、社会経済活動はコロナ以前に戻りつつある。MR活動も本誌既報の通り、医師とのリアル面談が回帰傾向にある。オンライン面談では成し得なかった医療従事者のコミュニケーションをいまこそ強め、医師の期待に大いに応えるチャンスでもある。ただ、忘れてならないのは、コロナ禍の3年を通じ、医師の情報へのアクセス手段がネットやWeb講演会などのデジタル情報に大きくシフトしたことだ。よってMR活動そのものも、コロナ以前のような「Push型」の活動よりも、医師のリアクションを意識した「Pull型」活動に軸足を置くべきだ。それを求める医療従事者は確実に増えたと言える。(編集長 沼田佳之)

◎24年4月施行 勤務医の時間上限 年960時間/月100時間未満を適応

4月からのMR活動において注目して欲しいことがある。1年後の2024年4月に医師の働き方改革が施行される。厚労省は、医師の労働時間の短縮および健康確保のための改正医療法を2021年5月に公布しており、来年4月の完全実施に向けて医療機関に対し段階的な体制整備を求めている。医師の時間外労働規制によると、勤務医の場合、年960時間/月100時間未満(例外あり)が適応される。もちろん、2次救急、3次救急、在宅医療、知事が地域医療の確保のために必要と認めた医療機関(B水準対象医療機関)、さらに大学病院や地域医療支援病院等(連携B水準対象医療機関)は、年1860時間/月100時間未満(例外あり・いずれも休日労働含む)という時間上限が設けられる。このほかに、臨床研修・専門研修プログラムなどを扱う「集中的技能向上水準」(C-1、C-2)というカテゴリーも設定された。

◎時間外労働規制は勤務体制の変更、医師への教育 タスクシェアやタスクシフトを伴う

こうした時間外労働規制は、病院内の勤務体制の変更や、医師への教育、さらには医師同士を含む医療従事者間のタスクシェアやタスクシフトが求められる訳だ。加えて、地域における連携医療機関(開業医・中規模病院、在宅専門クリニック等)や薬局との調整も必要となる。厚労省は自治体を通じて各医療機関に対し、来年4月以降の「医師労働時間短縮計画(案)」の作成を求めており、各病院も時短計画を含む特例水準指定申請などを現在行っている。病院内の勤怠管理や時短管理システムの導入なども進めているところだ。

すでに一部の製薬企業は、MRを通じて担当病院の取り組み状況についての市場調査を進めている。医師の働き方についての変化が目に見えるのは、実質的に4月以降となる見通しだ。ここからキャッチアップしても決して遅れることはない。むしろMRが率先して対応すべき課題と言える。

◎MR活動にとって気になるポイント

実は、この医師の働き方改革で今後のMR活動にとって気になるポイントがある。一つ目は、医師の勤務時間に上限が設定されることで、MRとのリアル面談の時間も制約を受ける可能性が高いということ。多くの医療機関はコロナ禍を通じてMRに訪問自粛要請を行い、MR活動も事前の医師とのアポイント取得が一般化された。よって、今後も医師との面談はコロナ禍と何ら変わらないと見ることができる。また、これまで培ったオンライン面談の回数や頻度は、むしろコロナ禍よりも増やす努力とスキルが個々MRに求められるということだ。

冒頭に、リアル面談回帰と記述したが、実は、医師の働き方改革は、多くのMRがコロナ禍で経験したオムニチャネル型の情報提供活動をさらにブラッシュアップすることを強いる可能性が高いと感じる。さらに言えば、医療者同士のタスクシェアやタスクシフトによって、医薬品情報の提供先は、医師に止まらず、病棟や手術室に常駐する薬剤師や看護師に広がる。ここにどうアクセスするか。もちろんデジタルの活用が求められる訳だが、これまで医師に情報提供するだけ四苦八苦していたデジタルツールの活用を、どう医師以外の医療従事者に拡大するか。製薬各社のマーケティング部門にとって思案と工夫が求められることは間違いない。

◎医師の働き方改革で医療DXは急速に浸透する

もう一つの課題は、医師の働き方改革を支援するDXが、これを契機に急速に浸透するということだ。すでにITベンチャーなどは、医師の働き方改革を支援するアプリやデバイスの開発・提供を進めている。これまでも治療アプリの開発に製薬企業が関わるケースは多々あった。患者の治療継続を支援するアプリや、患者と医療従事者とのコミュニケーションをサポートするデジタルツールの利活用は、この医師の働き方改革を契機に進むと見るべきではないか。政府の医療DX推進本部も、医療現場のデジタル化を推進する方針を打ち出しているのは、こうした医療従事者の医療現場での業務支援を視野に入れていることは間違いない。加えて、患者の利便性を意識したDXも当然のごとく政府は予算化する見通しで、製薬企業としても、MRによる医師へのコンタクトはもちろんだが、処方された医薬品を安心して継続的に患者に服用して頂くためのデジタルの活用や需要は今後高まるものと推測される。

コロナが終息して、リアル面談が回帰していると喜んでばかりはいられない。いくらデジタル情報を医師が迅速に入手しても、それは「情報」でしかない。MRの役割は、その医師とのコミュニケーションを通じて、実臨床を想定した医師の疑問や疑念に的確に応えることにある。デジタルだけで医薬品の適正使用が完結することはない。“ヒト対ヒト”のコミュニケ―ションがあってこその医薬品適正使用だと考える。4月からの新年度に際し、コロナ禍を経験したMRだからこそ語れるMRの役割と目的を噛みしめて時代の変革に果敢にトライして欲しい。
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