非感染性疾患・NCDsの予防・早期介入の評価 アウトカム軸に転換を PHSSR が日本版政策提言を公表
公開日時 2025/07/01 04:51

大阪・関西万博会場で開かれた「PHSSRサミット2025」は6月30日、政策提言「PHSSR Policy Road Map日本版」を公表した。今回の政策提言は、日本における非感染性疾患(NCDs)の予防および早期介入への施策をあらゆる段階で強化し、医療・介護・環境・経済が連携する持続可能なシステムの構築を目指すというもの。主に、公平性(Equity)、統合性(integrated)、価値基盤(Value-based)、参加型(Participation)、持続可能性(Sustainability)の各項目ごとに推奨事項を明記している。このうち価値基盤では、「医療の量から質・アウトカムへの評価軸転換」を明記。持続可能性では、「医療DXによる効率化と質の向上」や「気候変動と健康の統合的な取り組み」などを盛り込んだ。
「PHSSRサミット」は、保健医療システムの持続可能性と強靭性を向上するためのパートナーシップ(PHSSR:Partnership for Health System Sustainability and Resilience)に基づいたプロジェクトで、新型コロナ感染症を契機に各国の保健医療システムを見直す目的で2020年にスタートした。
今回の政策提言で対象としたNCDs領域は、がん、循環器・腎・代謝疾患、慢性呼吸器疾患など。リスク回避を目的とする一次予防、早期発見・早期治療を通じた疾患進展の抑制を目指す二次予防、さらに合併症の予防や生活の質の維持を志向する三次予防といった「予防の三層構造」の概念を枠組みとして、各ドメインにおける現状と課題を精査した。
◎国際医療福祉大・鈴木学長 “アウトカム・ベースド・ペイメント”を提唱
この日のパネルディスカッションに登壇した元厚労省医務技監で現在は国際医療福祉大学学長の鈴木康裕氏は、NCDsへの早期対策について、「きちんとしたメディカルコントロールさえあれば、いろんな職種のチームで対応できる。私は一番必要だと思っているのが“アウトカム・ベースド・ペイメント”だ。特に日本の医療界に関しては、50%が糖尿病や高血圧や高脂血症といった3つの疾患。これを早く見つければより悪い病気にならずにすむ。それがコントロールの状態がきちんと数値として把握できれば治療法のイノベーションにつながる」と述べた。
鈴木氏はまた、「医者や看護師の養成の際に、予防に対する教育を重視するということだと思う。それがどれくらい重要であって、どれくらいコストセービングがあるかどうかということが必要だと思う」と述べた。また、「保険者には全くインセンティブがないのかというとそうでもない」と指摘。「例えば国民健康保険には保険者努力支援制度があるし、協会けんぽにもインセンティブ制度がある。ただ、一定程度の支援制度はあるが、結局はその各保険者の努力を後ろから支援するという。ちょっと一歩引いた対応なので、それについては介護保険の要支援制度のようなものが必要だと思う」との見解を示した。