卸連・宮田会長 「流通コストを適正に価格転嫁できる仕組み」を インフレ基調でも安定供給可能に
公開日時 2025/05/23 04:50
日本医薬品卸売業連合会の宮田浩美会長は5月22日の通常総会で、物価高騰や人件費上昇など社会がインフレ基調にある中でも医薬品を安定供給できるようにするため、「医薬品卸の流通コストを適正に価格転嫁できる仕組み」を国に求めていくと表明した。毎年6月頃に閣議決定する政府の「骨太の方針」に、医薬品の安定供給問題の改善に関連したテーマのひとつとして、“流通コストの価格転嫁”が盛り込まれるよう関係各所に働きかけていく考えを示した。また、8年連続の薬価改定となったことを陳謝した上で、「中間年改定は安定供給の根幹に関わる問題。引き続き廃止を要望、意見していく」と強調した。
宮田会長は、社会のインフレ基調や、終息の兆しが見えない限定出荷・出荷調整に係る業務とそのコスト、低薬価品の不採算取引、インフレ基調の中で薬価下落を前提とした薬価改定・中間年改定を挙げて、「(流通コストを)負担していただかなければ、医薬品の安定供給は難しくなる」と訴えた。薬価が決まっているため上昇する流通コストを価格転嫁できる仕組みが現在なく、自助努力や医薬品卸社員の使命感だけではいずれ医薬品を供給できなくなるとの危機感が背景にある。
◎価格転嫁の仕組みは「医療上の必要性の高い医薬品の安定供給のため」
そして宮田会長は、「卸連合会としては、医療上の必要性の高い医薬品の安定供給のため、流通を担う医薬品卸の流通コストを適正に価格転嫁できる仕組み、すなわち物価上昇や賃上げ分を価格転嫁できる仕組みを導入してもらいたいと考えている」と述べ、現在、政府の「骨太の方針」に盛り込まれるよう国会議員などに説明していることを紹介した。
◎流通改善の取組み「私たちは絶対に後戻りできない」と呼びかけ
この価格転嫁の仕組みの導入には、医薬品卸各社が流通改善ガイドラインを継続的に遵守し、流通改善の取組みを確実に前に進めて、過去からの古い商慣習の抜本的見直しにつなげることが重要とも呼びかけた。「これらのこと(=価格転嫁の仕組み)を精力的に進めるにあたって、何としても私たちの頑張りを維持、継続する必要がある」と強調し、仮に流通改善の取組みが後退することがあれば「医薬品卸の衰退にもつながりかねない」との認識を示した。そして、「私たちはもう絶対に後戻りできない。この1年間は間違いなく踏ん張っていただく大変重要な1年になる」と呼びかけた。
さらに国民の理解と共感を得ることも重要だとし、「医薬品卸の適正な価格転嫁の必要性について、国、国会議員、そして国民に訴えていきたい」、「医薬品卸の存在意義や姿をもっと世の中の皆さんに知っていただく必要がある」と述べ、広報活動に注力していく構えもみせた。
◎卸連会長に宮田氏選任、2期目
この日の総会では、2年の任期満了に伴う役員改選があり、会長には引き続き宮田氏(スズケン取締役会長)が選任された。2期目となる。副会長5人も再任。職務分担は、▽渡辺秀一氏(メディパルホールディングス代表取締役社長):コンプライアンス担当、流通改善担当、▽吉村恭彰氏(アステム代表取締役会長):薬価問題担当、▽一條武氏(バイタルネット代表取締役社長):渉外担当、医薬流通産業形成・DX推進担当、▽荒川隆治氏(アルフレッサホールディングス代表取締役社長):卸問題担当、▽枝廣弘巳氏(東邦ホールディングス代表取締役CEO兼CFO):広報・研修担当――となる。