フィジカルインターネット実現会議「医薬品WG」がKick-off 5分科会設置 次世代流通システム構築へ
公開日時 2025/06/27 04:52
フィジカルインターネット実現会議「医薬品ワーキング(WG)」(座長:流通経済大学矢野裕児教授)は6月26日、25年度活動Kick-off会議を開催した。フィジカルインターネットとはインターネットの仕組みを物流に応用した次世代物流システムの概念を指す。医薬品WGでは、物流の効率化、医薬品サプライチェーン全体のトレーサビリティの確立、GDPガイドラインの標準的運用確立、有事における医薬品物流体制の整備、自主行動計画の推進などについて検討する。この日の会議では、5つの分科会の設置を決定。今後、分科会での議論を踏まえて全4回程度の全体会議を開き、26年2~3月に最終報告を取りまとめる。
フィジカルインターネット実現会議は経産省と国交省が事務局となり、2024年に政府レベルで世界初となるアクションプランを策定・公表した。これを受け、現在は医薬品、化学品、建材・住宅設備、百貨店、スーパーマーケットなど業種別WGを設置し、それぞれが実現に向けた課題の検討に着手したところ。
◎全サプライチェーンにおける在庫、温度管理、製品情報等のトレーサビリティが不可欠
医薬品物流は高い品質管理基準が求められ、GDPなどガイドラインに準拠した管理が必要となる。また、医薬品の製造から、医薬品卸、医療機関・調剤薬局まで全サプライチェーンにおける在庫、温度管理、製品情報等のトレーサビリティの確立が不可欠だ。さらに、近年はパンデミックや自然災害など「有事」における医薬物流の体制整備も重要視されており、「物流の適正化・生産性向上に関する自主行動計画」の推進も求められているところ。
◎「川上・川中・川下が縦割りで病院や薬局までのトレーサビリティを追えない」など課題も
この日のKick-off会議では、24年度医薬品WGなどを通じて指摘された課題として、「川上・川中・川下が縦割りになっており、病院や薬局までのトレーサビリティを追えない」など業界全体の問題が指摘されたほか、2018年に制定したGDPガイドラインについて、「個社ごとの品質基準によって流通が行われており、厳格さが不足しているとの声が聞こえる」との報告もあった。さらに、標準化/DXについては、「業界統一されていないことが課題」との指摘や、共同物流についても、「特定地域においては地域を代表する業許可を持つ3PLが、その地域の配送を受け持つが、中継輸送時の温度逸脱管理などは殆どできていない」との問題なども紹介された。
◎分科会はスタートできるものから議論を開始
こうした課題を受けて医薬品WGは、5つの分科会の設置を決めた。具体的には、①帳票電子化、ペーパレス分科会、②パレット使用分科会、③医薬品流通データプラットフォーム構築分科会、④品質(温度逸脱、GDPガイドライン標準化)分科会、⑤共同配送拡大分科会(ジェネリック、輸液・新薬)-。分科会はスタートできるものから議論を開始することにしており、その過程で他の分科会とも連携しながら課題解決への方策などで議論を深める方針。説明を行ったロジスティクスナイト・ジャパンの早田雅彦代表・プレジデントは、「この1年を課題の検討に終わらせることなく、実現できるものは1つでも2つでも出していきたい」と強調した。
なお、医薬品WGは、流通経済大の矢野教授を座長に据え、事務局(13人)、幹部会(16~17人)を置く。またオブザーバーに厚労省、経産省、国交省のほか、日薬連(製薬協、GE薬協、輸液製剤協議会)、卸連、ネットワーク・アライアンス、明治大学グローバル・ビジネス研究科の橋本雅隆専任教授、フィジカルインターネットセンターが構成員として参加予定。