塩野義の抗インフルエンザ薬 22日に緊急薬価収載へ 中医協了承
公開日時 2010/01/21 04:00
中医協総会は1月20日、塩野義製薬の抗インフルエンザ薬ラピアクタ点滴用の緊急薬価収載を了承した。収載は22日の予定で、塩野義は今月中にも発売する。09年10月に申請、新型インフルエンザが流行したことで今シーズンからの使用が期待され、異例のスピードで1月13日に薬事承認を取得していた。
同剤はA型またはB型インフルエンザ感染症が効能・効果で、点滴静注により投与する。小児適応は取得していない(3月までに申請予定)。薬価はバイアル150mg15mL1瓶が3117円、バッグ300mg60mL1袋が5792円。メーカーによる市場規模予測は初年度に9.9億円(予測投与患者数:10.8万人)、2年後のピーク時は40.6億円(67.4万人)。
既存薬と同じノイラミニダーゼ阻害薬だが、注射剤であり、臨床上の位置づけも既存薬と異なるとして、薬価は原価計算方式で算定された。同方式で加算の対象となる営業利益率では▽単回の点滴静注で十分な効果が示されている▽経口や呼吸が困難な患者にも投与可能▽日本人を含む1000例近い臨床試験を実施し世界に先駆けて開発――などが評価され、20%の加算となった。
厚労省保険局医療課の磯部総一郎薬剤管理官は、インフルエンザ患者が多い小児への投与について、治験実施中であるものの、添付文書に09年12月27日現在の途中経過を記載し情報提供することを明らかにした。「小児は1kgあたり10mgの投与で点滴静注が行われている。そのような小児患者も罹病期間を27時間程度に短縮できるというデータがあり、一定の効果が認められている」ため。「安全性は確立していないが、これらの患者の使用にあたっては本剤の必要性を検討した上で、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが記載されている」と、十分な情報提供をした上で投与すべきとした。
●塩野義 全使用症例の使用実態を把握へ 発売後6か月間か2万症例を収集
小児の使用について塩野義の吉川剛兆・安全管理部長は20日午後、都内で行われた同剤に関するプレスセミナーで、小児にも使われる可能性があるとの認識を示しつつ、医師から小児の情報提供を求められれば▽小児の適応を取得していない▽安全性は確立していない――といった情報提供をしていく考えを示した。
発売予定日については、「(承認取得、薬価収載の手続きが)想定よりもかなり前倒しで進んでおり、薬価収載後の即日販売は難しい。若干の日数がいる」(同社広報部)とコメント。発売日は25日の週になるとみられる。
同剤は約1000例の試験を実施したとはいえ、世界初の抗インフルエンザ薬で、しかも点滴静注製剤であるほか、類薬に因果関係は不明だが異常行動が報告されているという。それらを踏まえ同社は、通常の市販直後調査や特定使用成績調査のほかに、「全症例を対象にした使用実態把握と安全性情報の収集」(=全数使用把握)を行う。
この全数使用把握は、医療機関との間で契約が必要な「全例調査」とは異なり、早期に情報収集できる手法。医療機関に協力を求める厚労省の審査管理課長と安全対策課長による通知が13日付で出されている。同剤の全数使用把握では、販売開始後6か月間か2万症例を把握した時点まで行い、患者背景(年齢、性別、妊娠の有無)、投与日、投与量、副作用の有無などを収集・把握する。収集した内容は規制当局に1週間ごとに報告する。また、塩野義は患者向けの資料も作成、受診して帰宅した後に副作用などが出た場合に、患者がすみやかに医師に知らせる仕組みも整えた。