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NHLBIとNIAID、喘息アウトカムの標準化に関する最終修正案を報告

公開日時 2011/05/29 22:59

5月16日午前中のセッションでは、National Heart, Lung and Blood Institute(NHLBI)とNational Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)が共同で取り組んでいる、臨床研究における喘息アウトカムの標準化に関するシンポジウムが開催された。


これは“2010 NHLBI-NIAID Asthma Outcomes Workshop”と呼ばれる取り組みで、米国立衛生研究所(NIH)が資金提供する臨床研究や観察研究において、基準となるべき喘息アウトカムを推奨するために発足したもの。もともと、臨床研究において喘息アウトカムの標準化が必要との声が多く上がり、2009年に委員会が発足。昨年、第1弾の提案書がNIHに提出されたが、今年夏までに修正案を提出することになっており、同シンポジウムではこの最終修正案の概要が報告された。修正案の提出後は、NIH内の各担当機関が内容を吟味し、ゆくゆくはNIHが資金提供する臨床試験と大規模観察研究で、喘息アウトカムの必須項目として採用される。同委員会では、いずれは全ての臨床研究で採用されるような標準化を目指すとしている。


喘息アウトカムは、喘息症状と喘息増悪、肺生理学、喘息コントロール、QOL、医療利用と費用、喘息バイオマーカーの7つの分野に分けて検討。推奨レベルには、コア(主要基準・尺度)とサプリメンタル(補助基準)、エマージェント(新興基準)の3段階があり、コアは臨床的意義が高く、信用度の高い確かなエビデンスで支持されており、試験をまたいで比較が可能とみなされる基準。NIHが資金提供する臨床試験や大規模観察研究では必須と推奨される。サプリメンタルは、統一定義が既に存在し、測定方法も確立されているものの、現在のところ試験で採用するかどうかは任意とするもので、エマージェントは、疾患モニタリングの現在の見解を拡大または向上させる可能性があり、動物モデルの基礎研究から臨床研究への移行を促進させるものとされている。


またこれらは、前向き臨床試験の患者特性と有効性評価項目、観察研究における評価項目の、3項目に分けて推奨されている。


喘息症状に関する報告では、成人患者、小児患者のどちらにおいても、コアとして推奨すべき手段が存在しないとし、成人患者ではAsthma Symptom Utility IndexとSantanello Daytime Symptom Diary Scale、Nocturnal Diary Scale、小児患者ではPediatric Asthma Caregiver Diaryがサプリメントとして推奨された。コアとして要件を満たす評価手段が確定されるまでは、一連の手段から選択することが可能であるとし、喘息症状の有効な評価手段の研究開発が急務であるとした。


喘息増悪については、12歳以上と12歳未満の患者のどちらにおいても、全身性ステロイドの使用、喘息を原因とする入院、救急治療室の利用の3項目が、患者特性と観察研究の評価項目のコアとして推奨され、これら3項目にICUまたは挿管、死亡(全死と喘息関連)を加えたものを、有効性評価項目のコアとした。


同推奨を発表した米ノースカロライナ大のDavid Peden氏は、これまでの文献では、喘息増悪を表す確かな定義が存在せず、研究間での比較を困難にしていると指摘、また小児患者では、短時間作用性β2刺激薬(SABA)の使用や増量が、増悪の定義として最も一般的に使用されており、喘息コントロールの喪失と増悪との区別がはっきりしていないとした上で、増悪を集合的に定義するコンポーネントベースの定義が必要であると述べた。


特に小児患者では、FEV1を始めとする生理学的尺度は年齢によって異なり、信頼性に乏しいため利用が難しく、またバイオマーカーも、FeNOやEBCなど手技上の問題があり、増悪を定義する上では利用出来ない。これらのことから、小児患者では特に、ウィルス性疾患やアレルギー物質・汚染物質への暴露、薬剤アドヒアランスなどの増悪因子と、全身性ステロイドの利用や救急治療の受診に至った要因による特徴付けが重要となるとした。


これらを踏まえ同氏は総括として、成人、小児患者のどちらにおいても、増悪とは、深刻な転帰を予防するために全身性ステロイドの使用が必要となる、喘息の悪化(安定した維持用量を投与している患者では、全身性ステロイドの増量が必要)であるというのが、同ワークショップの推奨であるとした。


喘息コントロールでは、17の測定指標を妥当性や信頼性、反応性などの視点から検討した結果、12歳以上の患者では、患者特性と有効性評価項目、観察研究の3項目において、ACQまたはACTをコアとし、ATAQを患者特性と観察研究のサプリメントに設定した。また5~11歳までの患者では、cACTを患者特性と観察研究の2項目のコアと設定したが、有効性評価項目では、反応性におけるデータが不足しているとしてサプリメンタルに留めた。有効性評価項目ではコアに推奨された測定指標はなかった。4歳以下の患者では、コアとサプリメンタルのどちらも推奨される指標がなく、TRACKがエマージェントとして3項目で推奨された。


同推奨を報告した米コネチカット大のMichelle Cloutier氏は、現在利用可能な喘息コントロールの測定指標の殆どは、喘息コントロールにおける機能障害の評価に偏っているため、単独で使用するのではなく、喘息増悪の測定指標と併用し、リスクに対する評価も怠らないようにすべきであると述べた。今後は、これらの指標に、喘息コントロールのリスクに関するドメインを組み込んだ方法を明確にする研究や、マイノリティー人種や高齢者などのサブグループに適用できる指標の検討が必要であるとともに、生理学的指標の役割についても解明すべきであろうとまとめた。


バイオマーカーに関するアウトカムの基準では、唯一、マルチアレルゲンスクリーンのIgEがコアとされた。NIHが資金提供する全ての臨床研究と観察研究で、患者特性として検討されるべきであるとし、成人患者では、Phadiotopアセイが推奨され、15未満の患者では、これに加えて食物アレルギーに対してfx5も使用するよう推奨した。


一方、総IgEと特異IgEの測定は、コアではなくサプリメンタルのマーカーとされた。ただ、アレルゲン皮膚テストは、標準化するにはまだ十分なエビデンスがないことと、検査結果の解釈が難しいことから、エマージェントに分類された。IgEは、年齢や性別、人種などによる影響を受けやすく、アトピー性と非アトピー性との間で重複するという欠点があるものの、危機的なアレルギー反応の発見を促進し、そのアセイは定量化が可能であることなどの利点が認められた。


呼気一酸化窒素(FeNO)測定は、簡単で安全、再現性の高いバイオマーカーと認識されているものの、喘息コントロールや表現型、気道リモデリングとの関連性がまだ不明確であり、更なる研究が必要であるとし、サプリメンタルとして設定された。また喘息症状の発現中にFeNOを増進させる炎症因子が不明であることも、欠点とされた。


この他サプリメンタルには、血中好酸球、尿中LTE4が推奨された。
米国外、特に欧州で比較的使用されている痰中好酸球の測定については、喘息の細胞表現型を検討する研究目的では重要であるものの、喀痰誘発には多大な研究資源を必要とすることや、小児患者では難しいこと、標準化された手法がないことなどが指摘され、どのレベルでも推奨はされなかった。

 

 


 

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