市販後調査などビッグデータの信頼性 透明性がカギに
公開日時 2013/12/10 03:50
医薬品・医療機器、医療サービスについて、電子カルテや市販後調査などのビッグデータを用いたエビデンスが増加するほど、そのソースも含めた信頼性が重要になりそうだ。
独・ベーリンガーインゲルハイムのDavid Memel常務取締役(ヘルスエコノミクスおよびアウトカムリサーチ担当)は、最近のヘルスケア関係の会議で、「保険支払者には自身のエビデンスを生み出す役割があり、医薬品産業にも自身のエビデンスを生み出す役割がある。協力してエビデンスを生み出す役割があると信じている」と述べた。その上で、「保険支払者および医療供給者は、医薬品産業が提供するエビデンスに依存すべきかどうかを議論する段階にある」との考えを示した。
同氏は、さらに信頼することの必要性について言及し、「医薬品産業が提供するものは公平であると信じられるか」と疑問を投げかけた。その上で、「この信頼の問題についてのただひとつの克服策は、(保険支払者および医療供給者、製薬企業が)共同作業をすることと透明性にある」と説明した。
しかし、信頼そのものは、データの提供元などの複数の要素がある。アストラゼネカのSteven Labkoff氏(R&D情報、戦略プログラム担当)は、信頼について複雑な要素が存在することを指摘。なかでもデータ分析に用いたデータソースへの信頼性について言及した。
同氏は、彼が参画した2つの大学での研究プロジェクトを紹介した。同プロジェクトは、スタチンを服用時の肝障害の発生率を検討したものだったが、特定できた患者の数は2400例と24例と大きな開きを生じた。Labkoff氏は、この結果から、どのようなデータセットだったか、どのようにデータセットが作られたか、が問題となると指摘した。
その上で、これは、データセットにおける信頼性とは何か、またデータがどのように収集・管理・保存されているかについての信頼と同様であると指摘。この問題解決のカギは、データ供給者の手中にあり、電子カルテや他のデータベースからいかに正確に情報を報告するか、また、そのデータをいかに保持しているかになるという。
Labkoff氏は、「私はこの特定の問題をどう解決するのか分からない。率直に言って、これはすぐには消えてなくならない複雑な要素である」と問題の難しさを浮き彫りにした。信頼の問題は、まだまだ、多くが検討されなければならない問題と言える。
(The Pink Sheet 11月4日号)