厚労省・城課長 GE数量シェア80%達成は「推進策だけではできない」 医薬品産業全体の底上げが不可欠
公開日時 2015/06/15 03:52
厚生労働省医政局経済課の城克文課長は6月13日、後発医薬品(GE)数量シェア80%達成に向けて、GE使用推進策に加え、イノベーションの推進、臨床上の有用性の評価が定まっている基礎的医薬品(エッセンシャルドラッグ)の安定供給などの総合戦略により、医薬品産業全体の底上げをすることが不可欠との考えを改めて示した。政府が6月末にもまとめる骨太の方針に向けて、議論を進める。城課長は、数量シェアの急激な引き上げによる医薬品卸や先発メーカーへの影響に懸念を示した上で、「薬価の方向性も含めた医薬品産業全体の底上げをするための施策を考えなければ、もはや(GE数量シェア)80%まで引き上げるのは難しい」と述べた。日本ジェネリック医薬品学会第9回学術大会(静岡県浜松市、6月13~14日)で講演した。
総合戦略は、医薬品の安定供給に加え、産業の競争力強化、医療費の効率化をパッケージ化した施策だ。医療費の効率化では、多剤・重複投与の適正化による量の適正化、GEの価格が高すぎるとの指摘に対する価格適正化などを盛り込んだ。GE数量シェア80%の目標達成時期をめぐっては、厚労省が2020年度末とする一方で、経済財政諮問会議の民間委員や財務省の財政審は2017年度内へと前倒しすることを求めている。こうした中で、総合戦略を実施することで、「前倒しによる無理な製造、新薬メーカーの負担などをなしに医療費適正化を行う」(城課長)ことを目指す。
◎GEメーカー「地に足の着いた投資で安定供給を」
GE数量シェア80%達成時期の前倒しによるジェネリックメーカーの生産体制への影響も懸念されるところだ。城課長は、IMSデータを基にした推計を提示。2017年度末に達成するGEの数量シェア目標値を60%から80%に引上げた場合、240億錠相当の生産能力強化が必要と説明した。2012年度に策定された「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」に基づき、ジェネリックメーカーも5年間で年間285億錠相当の生産体制強化のための設備投資を行っているところ。さらなる設備投資が必要になることに懸念を示した。一方で、目標を2020年度末とした場合には、18年度までの720億錠相当の生産体制の整備に加え、さらに40億錠相当の生産体制の強化が必要になる。日本ジェネリック製薬協会会員各社対象の調査でも、市場規模に生産能力が追い付かないのが現状だ。
こうした中で、城課長は安定供給の重要性を強調する。今後、抗精神病薬・ジプレキサや喘息治療薬・シングレア、ARB・ミカルディスなど大型品の特許切れが相次ぐが、その後、低分子医薬品のGE市場参入は尽きる。今後人口減少社会が到来し、医薬品需要の伸びの鈍化も想定される中で、「企業として生き残っていくことも必要。一時的に踊らされることのないような、地に足のついた投資をして安定供給をさらに進めることも重要」とジェネリックメーカーに呼びかけた。
また、厚労省が経済財政諮問会議に提出したGE推進策として盛り込まれた、GEの価格適正化や、ひとつの医薬品に対し複数の銘柄が開発されている共同開発のあり方を見直すことなどにより、ジェネリックメーカーの業界再編が起きる可能性も示唆。「中小(のジェネリックメーカー)が淘汰されることも視野に入れなければいけない。厳しい状況が待っている」との見方も示した。
◎バイオシミラーの目標設定「特別な項目を作るのは難しい」
そのほか、今後予想されるバイオシミラーについても言及。「特別な項目を作るのは難しい」との認識を示した。大型品の関節リウマチ治療薬・レミケードもGEが市場参入したが、現状では、「先発品1品目に対して、ほぼGE1品目しか上市されていない」のが現状だと指摘。こうした中で、GEの普及を進めるのは、「行政としてはいかがなものかと思っている」と述べた。