【World Topics 短期連載】人工知能と医療・ヘルスケア (第3回 最終回)アメリカの技術・日本のデータ
公開日時 2016/08/19 03:50
人工知能の研究で世界をリードするスタンフォード大学には、医学部と工学部が共同で人工知能の医療分野への適用を研究するために置かれた学際研究プロジェクトがある。Stanford Program in AI-assisted Care (PAC)だ。(ジャーナリスト 西村由美子)
今年7月、東京京橋に本社を置く介護サービス・プロバイダーのセントケアホールディング株式会社が、今後PACと共同研究を進めるとのプレスリリースを出し、注目されている。人工知能を活用することで、ケアの質を担保あるいは向上させつつ、同時に介護費用の抑制を実現できるシステムを実現することで、急速に進行する少子高齢社会でサステナブルな介護システムの実現をめざす。
引く手数多のスタンフォード大学が共同研究に応じたインセンティブの1つは日本のデータ。もう1つは介護に関わるプロフェッショナルたちのノウハウの蓄積。どちらも人工知能の深層学習に不可欠の要素だ。
公的介護保険制度のおかげで、日本には高齢者の医療・介護に関するデータが大量に蓄積されている。民間の介護事業者のデータ規模も小さくはないが、行政が保有するデータは膨大だ。しかも支払償還に関わる書式やデータはかなりの程度まで標準化されているので、扱いやすい。公的介護保険の実現されていない米国では願ってもかなえられない状況である。つまり日本はいわば最高の研究・開発フィールドなのである。(この連載はこれで終わりです)