バイエル薬品のハイケ・プリンツ社長は４月４日、東京都内で、１月の社長就任後初の記者会見にのぞみ、「大変重視しているトピックスはデジタルによるレボリューション」と述べ、創薬、開発、営業・マーケティング、市販後まで全てのバリューチェーンでデジタル技術の活用を検討していく考えを示した。営業・マーケ関係では人工知能（以下、ＡＩ）を活用したＭＲ活動支援の試行を始めたことを明らかにし、「医師や患者さんのニーズに応える価値ある情報を提供していきたい」と話した。

同社によると、ＡＩを活用したＭＲ活動支援の試行は４月から始めた。これはＭＲ向けの社内問い合わせ窓口に、ＡＩによるサポート機能を導入するというもの。想定している最終的な姿は、ＭＲが社内問い合わせ窓口のオペレーターに何らかの情報を要請すると、オペレーターのパソコン（ＰＣ）に自動的に必要とされる最適な情報が提示され、オペレーターからタイムリーに情報を得たＭＲがタイムリーに医療従事者に情報提供できるようにする、ということ。現在はオペレーターのＰＣに最適情報を提示できるようにするためのデータ蓄積を始めた段階という。

プリンツ社長は、ＭＲ活動にデジタルを活用することについて、「デジタルはあくまでＭＲ活動を補完するものであり、ＭＲに置き換えるものではない」「ＭＲ自体は大変重要な情報チャネルと認識しており、ＭＲによる顧客とのやり取りは今後も重視していく所存」と述べ、ＭＲ数の削減につながることはないとの姿勢をみせた。ただ、ＭＲ以外の情報チャネルを求める医師もいるとの認識を示し、この医師にはデジタルチャネルを活用していく考えを示した。

■16年売上2917億円　4.8％増　イグザレルト、アイリーアが成長けん引

バイエル薬品はこの日、2016年の国内業績を発表し、医療用医薬品売上は薬価ベースで2917億円、前年比4.8％増だった。ＭＲ数は17年４月現在で約1410人。

プリンツ社長は、16年の国内市場の成長率が0.3％だったことを引き合いに、「市場成長を大きく上回る成長を達成した」とし、12年と比較して売上は1.5倍、1000億円以上増加したと説明した。

16年は、特許期間中または再審査期間中の製品売上が全売上の80％を占めた。この新薬割合の高さが好調の主因だが、特に経口抗凝固薬イグザレルト（16年売上641億円、前年比24.1％増）と眼科用VEGF阻害薬アイリーア（531億円、18.0％増）の２ケタ成長が、企業の成長に大きく貢献した。

イグザレルトは経口抗凝固薬（NOAC）市場で国内外とも売上、シェアともナンバー１で、16年の日本での金額シェアは36.7％。アイリーアは、眼科用VEGF阻害薬市場における金額シェアは71.0％を占めた。

17年は、２月に薬価収載された「月経困難症」と「子宮内膜症に伴う疼痛の改善」を適応とする治療薬ヤーズフレックスを「近いうちに発売する」（プリンツ社長）。抗がん剤スチバーガは、切除不能な肝細胞がんの二次治療の効能追加を16年10月に申請し、17年１月に優先審査指定されていることから、順調に審査が進めば17年中の承認取得となりそう。また、日本で38件の国内Ｐ２試験及びＰ３試験を実施予定としている。

【主な製品の16年売上（薬価ベース：クインタイルズIMS）】
イグザレルト（選択的直接作用型第Xa因子阻害薬）641億1500万円（24.1％増）
アイリーア（眼科用VEGF阻害薬）531億1000万円（18.0％増）
ゼチーア（高脂血症治療薬）308億2600万円（0.1％減）
ホスレノール（高リン血症治療薬）282億4900万円（7.3％減）
イオパミロン（非イオン性尿路・血管造影剤）179億7000万円（13.0％減）
ネクサバール（抗がん剤／キナーゼ阻害薬）138億2300万円（3.4％減）
アダラート（高血圧・狭心症治療薬）131億1300万円（21.5％減）
コージネイト（遺伝子組換え型血液凝固第VIII因子製剤）114億2000万円（9.6％減）
ヤーズ（経口黄体ホルモン・卵胞ホルモン混合月経困難症治療薬）65億4400万円（17.3％増）
バイアスピリン（抗血小板薬）65億1000万円（3.4％減）