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ノバルティス・ナラシンハン次期CEOが本誌と会見「データサイエンスで革新的新薬生み出す企業目指す」

公開日時 2017/09/29 03:52

2018年2月1日付でノバルティスのCEOに就任するヴァサント・ナラシンハン・グローバル医薬品開発部門責任者兼チーフメディカルオフィサーは本誌との単独インタビューに応じ、「データサイエンスによって支えられる革新的な新薬を創出する企業に変化させたい」と語った。医療ICTやアプリなど最新テクノロジーを製薬ビジネスの各段階に組み込み、研究開発の流れを加速させる。8月30日には、世界初のCAR-T細胞医療であるCTL019(海外製品名:Kymriah)が米国で承認され、ノバルティスが目指す次世代型イノベーション創薬の幕が開けた。ナラシンハン次期CEOは、日本での上市にも強い意欲を見せ、革新的新薬の市場投入を通じ、患者や医療従事者から信頼を勝ち得る活動に注力すべき、と日本のノバルティス社員にメッセージを送った。CEO就任発表以降、同氏がメディアからインタビューを受けるのは日本では初めて。

ナラシンハン次期CEOは、ノバルティスの目指す創薬の方向性として、「今の治療を大きく変え、医療を改善することができるような、ベストインクラス、ファーストインクラスの薬剤を創出する」と熱く語った。その具体例として、CAR-T細胞医療と、IL-1β阻害薬・カナキヌマブ(日本製品名:イラリス)のオンコロジー領域などへの適応拡大の可能性をあげる。

◎CAR-T細胞医療 医療制度に価値提供、患者のメリットとのバランス重視

CAR-T細胞医療は米国で、難治性または2回以上の再発を認めるB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児・若年成人を対象に承認された。予後不良だった患者に対して高い寛解率を示すが、一方で1回の治療に際して47万5000ドル(約5300万円)かかる。ナラシンハン次期CEOは、「社会にもたらす価値をベースに薬価は決められなければならないと思っている」と述べ、CAR-T細胞医療の費用対効果は十分との調査結果もあると説明した。

一度の治療費が高額になるため、米国ではメディケア・メディケイドサービスセンターとノバルティスは、臨床アウトカムに基づいた新たなスキームも構築し、患者の治療へのアクセスにも配慮した。患者が費用を支払うのは、治療後1か月終了までに効果を認めた場合のみだ。こうした取り組みを通じ、「医療制度に価値を提供できる、患者もメリットを享受できる。そして我々も利益を得られる。この正しいバランスを提供していきたいと考えている」と述べた。同剤をめぐっては現在、びまん性大細胞リンパ腫(DLBCL)成人患者への適応拡大を見込む。ナラシンハン次期CEOは、「CAR-T細胞医療は、将来存在する治療の中で最も良い選択肢を血液腫瘍の分野で提供していくことができるのではないか。2つの適応でプラットフォームを作ることでCAR-T細胞医療のリーダーになっていけるのではないかと考えている」と自信をみせた。

固形腫瘍への適応拡大についてナラシンハン次期CEOは、「血液腫瘍に比べると、固形腫瘍への適応は難しい。良い治療成績を出すためには、CAR-T細胞医療だけでなく、免疫療法の併用などが必要かもしれない。ただ、今後CAR-T細胞医療が固形腫瘍に対して、どのようなベストな方法で使われるか、コメントするのは時期尚早だと考えている」と述べた。
 

◎カナキヌマブ 肺がんなど適応で臨床第3相試験 2018年のスタートを検討

一方、クリオピリン関連周期性症候群などの適応をもつカナキヌマブについては、心筋梗塞の既往がある炎症性アテローム性動脈硬化症患者を対象としたCANTOS試験で、心血管イベントの発症抑制効果に加え、肺がんの発症率と死亡率を低下させることが示された。日本国内でも、肺がんなどの適応取得を目指した臨床第3相試験を2018年にスタートさせることを検討していることを明らかにした。


◎デジタルテクノロジーとデータ活用で変わる創薬 「エキサイティング!」

アンメット・メディカルニーズの高い創薬に注力する中で、研究開発の新たなスキームの構築が重要になる。ナラシンハン次期CEOは、「デジタルテクノロジーとデータの使い方で創薬が変わることは、エキサイティングだ」と強調。米国では、アプリやセンサーなどをすでに臨床試験に活用し始めていることを紹介した。また、世界中で実施される臨床試験を一元的にモニタリングする試みも進めている。「臨床試験のスピードアップや、臨床試験にかかわる患者や医師の経験を向上」させることが期待できると述べた。


◎日本市場 患者・医療従事者からの信頼獲得こそ「我々の仕事」


日本市場への期待については、「ナンバーワンの製薬企業の1社になりたいと思っている」と表明した。今後5年間で多くの革新的新薬の上市を通じ、日本の医療保険制度や患者、医療従事者への貢献をさらに加速させる考え。ナラシンハン次期CEOは、「医薬品やサービスを提供している日本の患者や医療従事者から信頼を勝ち取っていくというのが我々の仕事だ」と熱く語った。ARB・ディオバンの臨床研究不正にも触れ、「ノバルティスのエクゼクティブ・コミッティーのメンバーとして真摯に受け止めている。高いイノベーションとインテグリティー(誠実さ)を持った企業であると日本のすべての方に思っていただけることこそが我々のゴールだ」と述べた。

一問一答は、Monthlyミクス11月号(11月1日発行予定)に掲載を予定しています。

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