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PhRMA・ジョンソン委員長が警鐘 薬価改革の影響「政府の意図が逆の結果をもたらす可能性」も

公開日時 2018/01/30 03:53

米国研究製薬工業協会(PhRMA)のパトリック・ジョンソン在日執行委員会委員長は1月29日の定例会見で、薬価制度抜本改革がMR数などに及ぼす影響について、「2018年度の薬価制度改革のインパクトはすぐには出てこない」と見通した。ただ、ジョンソン委員長は、MRが日本の医療現場で有効性・安全性情報を伝達する重要な役割を果たしており、すでに減少に転じているとした上で、「日本政府が意図しないで行ったことが逆の結果をもたらす可能性がある。創薬、開発から営業まで全体に影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らした。

◎日本への投資獲得へ 戦い続けるも「マイナスの影響」 海外市場に優先地域も


2018年度薬価制度改革では、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進の両立が掲げられていたが、ジョンソン委員長は「バランスを取ると言っているが、私たちは難しいと思っている」と指摘した。

特に新薬創出等加算は、抜本的な見直しにより、対象品目が約920品目から約540品目へと絞り込まれることになる。ジョンソン委員長は、グローバル市場でいわゆるブロックバスターに成長した製品も加算品目から外れることに言及。新たな新薬創出等加算の品目要件である、“3年以内”、“3番手以内”を満たさない製品であっても、市場から革新性が評価されている製品が存在するとの考えを示した。

開発を進める製品は数年前に決定されていることから、「薬価制度改革のインパクトはすぐには出てこない」と断った上で、これまで日本の強みであった予見性が著しく損なわれると指摘。「日本が競争力を維持して、世界の中で臨床試験に参加し、早期開発しようとする”ウエブ1”には位置付けられなくなる」と述べ、優先的に投資する市場から外れ、国際共同臨床試験に乗り遅れることへの懸念を示した。さらに、「”日本に投資してください”と戦い続ける。しかし、他に成功裏にすべき市場が複数ある。日本へ誘致できるかというと、マイナスの影響が出てくると思う」と危機感をあらわにした。その上で、「特許期間中の薬価を維持することが重要であり、世界でベストな医薬品を患者に届けることができる制度だ」と述べ、改めて新薬創出等加算の再検討を求めた。


18年度中に本格導入に向けて結論を得ることが求められている費用対効果評価については、「世界各国で導入されたが、すべて失敗に終わっている」とした上で、他国の経験を踏まえた検討を求めた。そのほか、2年に1回の薬価改定の原則維持、すべての関係者の参画が可能となる政策立案の公平化と透明性の確保を日本政府に訴えた。


◎「不利益を被るHTAの導入には断固反対」-患者団体・眞島理事長


同日は、元大蔵官僚の小黒一正・法政大学経済学部教授、すい臓がん患者団体であるNPO法人パンキャンジャパンの眞島喜幸理事長を交えたパネルディスカッションも行われた。小黒教授は、リスクを全国民で分担する考えから、高額薬剤を医療保険給付で賄う一方で、「OTC類似薬などは自己負担を高めたり、保険収載から外したりするなど、保険給付の範囲について根本的な議論が必要だ」との考えを示した。「公的な医療保険の範囲を見直し、民間保険との役割分担をしていくことが必要だと財務省に申し上げたい」と述べた。

眞島理事長は、薬価制度改革について「患者には薬価が安くなるので良いだろうという話もあるが、一日一日を大切に生きて新薬を待っている患者もいる」と述べ、革新的新薬へのアクセスが阻害されることへの懸念を示した。費用対効果評価についてはすでに欧州で革新的新薬へのアクセスが阻害されている現状を指摘し、「薬価が安くなるということだけでなく、新しい薬へのアクセスが遅れることで患者は不利益を被る。患者が不利益を被るようなHTAの導入には断固反対だ」と述べた。

◎「製薬メーカーが挑戦できる場はまだまだたくさんある」予防医療に目を-自民党・渡嘉敷議員


自民党の渡嘉敷奈緒美議員(環境副大臣)は同日の会見で挨拶し、薬価制度抜本改革など年末の議論を踏まえ、「持続可能な社会保障制度を作っていく上で、業界がずっとサポートし続けないといけないのか。このいびつな関係を政治の形からも結論を出していかないといけない」と述べた。渡嘉敷議員は社会保障制度を持続可能なものとする道として、「強みを生かして稼いでいく社会保障制度に転換していく必要がある」との考えを表明。日本が世界の中で最も高齢化が進展している国であることから、健康長寿に向けて「ビジネスチャンスはまだまだ転がっているのではないか」、「薬というものだけにとらわれずに患者の人生から考えると製薬メーカーが挑戦できる場はまだまだたくさんある」との考えを示した。

大阪府北大阪健康医療都市(健都)では、国立循環器病研究センターを中心に、食事や運動など予防医療をビジネスチャンスへと結び付ける試みが進行中であることを紹介。「将来性もあるし、健康でいたいという人類の希望にこたえていくビジネスを育てて世界に発信できる場にしていただきたい。事業展開を日本から育てていただけたらありがたい」と述べた。 

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