中医協 20年度改定キックオフ 検討項目に「フォーミュラリ」 医療ICTやデータヘルス利活用も
公開日時 2019/03/28 03:51
中医協総会は3月27日、2020年度診療報酬改定に向けた検討項目と進め方を議論し、事実上の改定論議がスタートした。厚労省保険局医療課が提示した検討項目には、医療ICTやデータヘルスの利活用、フォーミュラリ等への対応など、2025年の高齢化のピークを睨み構築を急ぐ地域包括ケアシステムを実現するための項目が並んでいる。一方で、医師の働き方改革や、タスクシフト、タスクシェアリングといったチーム医療や多職種連携を意識したメニューも盛り込まれている。夏までを1ラウンドと位置づけ、テーマ横断的な議論を行うほか、秋からの2ラウンドでは、外来、入院、在宅、歯科、調剤といった個別テーマに分けて議論する。
中医協での診療報酬改定をめぐる議論は、2014年、16年、18年と一貫した流れが構築されている。人口減少社会の到来と高齢化のピークを迎える2025年を睨み、医療機関の機能分化や連携、在宅医療の充実などにフォーカスした議論がこれまで行われてきた。次期2020年度改定は、これまでの過去の点数改定で積み上げられた方向性を維持しつつ、地域内で連携する医療者同士の働き方や情報共有のあり方、各職種の職能に応じた評価、さらには医療ICTを活用したネットワーク型医療の実現などに挑戦することになる。さらに、政府方針に掲げた後発品80%時代が到来することから、プライマリ市場を中心に、データを活用したマーケットの構築として、フォーミュラリ等への対応についても本格的に議論が始まる。
◎新たなエビデンスやICT技術を踏まえた医療のあり方も
厚労省が示した検討項目をみると、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みに加えて、新たなエビデンスやICT技術を踏まえた医療のあり方についてのメニューが盛り込まれている。厚労省は2次医療圏を単位に地域医療構想の実現に向けた政策を動かしており、これを裏付ける診療報酬の点数化も中医協で議論することになる。注目されるのはデータヘルスの利活用だ。2025年に向け、各地域で人口減少が進むなかで、医療機能を分化し、施設間連携を活発化させることで、地域医療の安定化を目指す。その際、最も重要視されるのがデータであり、そのデータを統合化した「データヘルス計画」の実現が求められるという訳だ。
すでに生活習慣病の予備群や糖尿病の重症化予防プログラムなどに自治体が乗り出しており、必要な施策を地域単位で構築する流れが出来つつある。次の課題としては、2次医療圏単位の疾病管理を多職種が連携して行う体制の構築が求められることになり、そのための診療報酬点数の裏付けが求められるという訳だ。
今回の改定項目の中には、「新たなエビデンスやICT技術を踏まえた医療のあり方」として、新規医療技術への対応や、新たなエビデンスを踏まえた医療の質の確保などが盛り込まれ、診療ガイドラインや既収載の技術等の見直しなども議論の俎上にのぼる。一方、医薬品・医療機器等の適正な利用のあり方では、後発医薬品の使用促進と並んで、「フォーミュラリ等への対応」も明記された。フォーミュラリについては、すでに山形県酒田市や東京都品川区、静岡県などで議論がスタートしている。その際の議論に欠かせないものがデータだ。データの活用こそが、フォーミュラリの成否を決めるカギになると言われる。データヘルス計画に基づくフォーミュラリの構築は、医師会、薬剤師会、自治体、保険者とのオープンな議論が求められるだけに、今回の検討項目にフォーミュラリが位置づけられたことの意味は大きい。