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日本リリー18年業績 前年比1.1%増収 “広角打法”で業績支える チャネル活用に期待

公開日時 2019/04/04 03:52

日本イーライリリーのパトリック・ジョンソン代表取締役社長は4月3日の記者会見に臨み、2018年の国内売上高が対前年度比1.1%増の2630億円だったと発表した。国内売上高は第6位にランクされ、2年連続トップ10入りを果たした。とくに糖尿病治療薬のトルリシティ、ジャディアンスが伸長したことに加えて、抗がん剤、自己免疫疾患治療薬など“広角打法”で注力領域が業績を牽引した。ジョンソン社長は会見で、世界同時承認を目指し、すべてのポートフォリオを迅速に上市する研究開発力が成長の源泉との見方を示した。そのうえで、「日本は米国以外で最大の拠点。いかに日本市場が重要か。日本での新薬開発が重要かを強調していく」と強いコミットメントを発した。

同社の18年度業績は、糖尿病領域が大きく伸長。GLP-1受容体作動薬のトルリシティが52.2%増(売上高213億3500万円・薬価ベース)、SGLT2阻害薬のジャディアンスが55.2%増(同170億7700万円)と業績に寄与し、それぞれマーケットリーダーに成長した。さらに、自己免疫疾患治療薬・トルツが対前年比174.78%増の35億6300万円を確保するなど業績の底上げに貢献した。

トップ製品であるサインバルタについては対前年比3.71%増の560億5300万円と成長基盤を支えた。ジョンソン社長は、「日本でも素晴らしい業績を収めたことを誇りに思っている」と評価した。「バランスのとれた成長があった」、「様々な疾患領域における成長が見込めている。単に1つのアセットに依存していない」と述べ、同社の有するバラエティに富んだポートフォリオに自信をみせた。

◎“20in10計画”で研究開発に力 ポートフォリオ国内で100%カバーを


同社では2014年以降の10年間に20製品を上市させる“20in10計画”を策定し、現在進行中。国内でも7製品を上市させた。さらなる日本市場での成長に向けて研究開発投資の確保も重要になる。ジョンソン社長は、「我々は日本政府と協力して引き続きを推進するような政策の重要性を訴えていく」との姿勢を強調した。2018年度薬価制度抜本改革で新薬創出等加算が見直されたことに触れ、「日本は岐路に立っているが、必ずイノベーションを推進していく政策を選ぶと考えている。それが、患者だけでなく、日本経済にとってベネフィットがあるからだ」と述べた。

会見では、同社の開発方針として、ポートフォリオを国内で100%カバーし、世界同時開発、同時承認・上市を目指すことも発表された。国内でも世界同時開発は80%以上で継続しているという。ジョンソン社長は、「成功裏に日本で競争し、“ファーストウェーブ”として開発をしていけると考えている。これまでも実績を達成してきた。世界同時の開発をやってきた。状況としては日本でファーストウェーブの開発のポジションを続けていこうと考えている」と述べ、日本での開発の優先順位を維持することに自信をみせた。

◎MSL活用の自信、他社とも一線を画す MR体制はパイプラインで柔軟に


MRを含む医療関係者への情報提供については、「医師の好むチャネルで情報提供を行う」アプローチの重要性を強調した。MRだけでなく、デジタルチャネルを活用し、自社サイトの充実やe-MRにも注力する。e-MRについては、「我々貴重な時間を効率化し、顧客に対するサービスを向上させるために、バーチャルチャネル利用する」として今後さらに重要性が増すとの考えを示した。ジョンソン社長は、「MRが中心となり、デジタルチャネルでより頻回に価値ある情報を届けるべく接続の役目を果たしている」と述べた。

そのほか、「重要な医学的な問題でより良く患者さんの治療を行う」ためのチャネルとしてメディカルサイエンスリエゾン(MSL)の活用を実践していることを紹介。医療従事者からの利用率が大幅に伸びているとした。同社のMSLの要件については、「Ph.D.を取得後2~3年の研究経験を有する者、もしくは5年以上の研究開発経験を有する者」に限定しているという。同社の吉川彰一取締役執行役員研究開発本部長は、「他社と一線を画す形で、非常に大切なカスタマーの先生と同等のレベルで科学的な議論ができる方に限定して採用している」と述べた。

一方でジョンソン社長は、マルチチャネル型の情報提供が普及するなかで、「MRは重要なポイントパーソンで、インターフェイスになる。カスタマーとの間のつなぎ役になる」と説明した。MR体制については、「MRの数は適切だと考えている」と表明。ただ、パイプラインの変化によるリソース配分を変える可能性にも言及し、「新しいサイエンスを活用し、アンメット・メディカルニーズを満たす形で、モデルを柔軟に変えていくことが鍵だ」と述べた。同社のMRは1700人体制。ミクス編集部の調べでは、16、17年度は1900人、18年度は1800人となっている。

◎多様な働き方のロールモデルに 女性管理職は25%


国内で活動する製薬企業“トップ10”たる企業のビジョンについてジョンソン社長は、ダイバーシティー&インクルージョンに注力する姿勢も表明した。女性管理職が25%(18年12月時点)で、「さらにレベルアップを図る。ダイバーシティー&インクルージョンが企業として強力な体制を作る上で重要だ」、「多様な働き方のロールモデルになる」とも述べた。

【2018年 主な製品の売上高(薬価ベース:IQVIA)】

サインバルタ(中枢神経系)560.53 億円 (3.71%増、塩野義製薬との売上含む)
フォルテオ(骨粗鬆症) 492.53 億円 (増減なし)
サイラムザ(がん) 443.30 億円 (0.99%増)
トラゼンタ(糖尿病) 387.66 億円 (4.50%減)
アリムタ(がん) 332.45 億円 (2.90%減)
ストラテラ(中枢神経系) 291.57 億円 (8.15%増)
トルリシティ(糖尿病) 213.35 億円 (52.20%増)
ジプレキサ(中枢神経系) 178.06 億円 (36.91%減)
ジャディアンス(糖尿病) 170.77 億円(55.23%増)
ザルティア(泌尿器系) 133.86 億円 (16.01%増)
ヒューマログ ヒューマリン(糖尿病) 130.33 億円 (18.08%減)
ヒューマトロープ(内分泌系) 80.43 億円 (11.81%減)
エビスタ(骨粗鬆症) 69.32 億円 (28.87%減)
インスリングラルギンBS注「リリー」 (糖尿病) 41.39 億円 (4.76%増)
トルツ(乾癬)35.63 億円 (174.78%増)
オルミエント(関節リウマチ) 23.07 億円 (1726.38%増)
ジェムザール(がん) 20.78 億円 (28.28%減)
トラディアンス(糖尿病) 11.22 億円
ベージニオ(がん) 2.84 億円

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