生命科学インスティテュート 脊髄損傷の再生医療で国内臨床試験
公開日時 2019/07/10 03:50
三菱ケミカルホールディングス傘下の生命科学インスティテュートは7月9日、多様な細胞に分化する能力を持つとされるMuse細胞を用いた再生医療で、脊髄損傷を対象に国内で臨床試験を行うと発表した。受傷から2週間程度の亜急性期患者に対し単回静脈投与による有効性と安全性を検討する。早ければ2020年度にも承認申請をしたい考え。
治験では、Muse細胞製品を目指し開発している「CL2020」を用いる。16歳以上75歳未満の脊髄損傷患者を対象に、筑波大学附属病院ほか10施設で行うことを予定している。非盲検、非対照で行う。目標症例数は10症例。亜急性期を対象にしたのは、急性期の炎症が収束し、⾎管新⽣・組織修復反応が盛んに起こるためだという。準備が整い次第、患者への投与を始める。
同社によると、脊髄損傷モデルラットにCL2020を急性期から亜急性期に1回または2回静脈内投与した結果、後肢運動機能の改善効果が認められ、歩⾏可能となった。投与時期や投与回数が異なっていても、運動機能の改善効果が認められたことから、臨床において単回投与による有効性と安全性を検討することにした。
Muse 細胞は、もともと生体内の間葉系組織内に存在する自然の幹細胞。そのため腫瘍化の懸念が少なく、目的とする細胞に分化誘導する必要がない。そのまま静脈内に投与するだけで傷害部位に遊走、集積し、生着して組織を修復するという特長を持つとしている。2010 年に東北大学の出澤真理教授らのグループにより発見された。同社はCL2020を用い、18年12月に急性心筋梗塞、同年9月に脳梗塞、同年12月に表皮水疱症を対象に治験を進めている。